【完結】王宮騎士と元引きこもりな鈍感令嬢の文通記録

しののめ

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15.

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先日とは打って変わって、今日は一人で街に来ている。

やっぱり私には煌びやかな社交界より賑やかな街の方が性似合っているなと、改めて実感した。

そして今日の目的はと言うと、おいしい紅茶の茶葉とクッキーの材料を買うためだ。

家の者に買いに行かせればいい話だ、と止められたがレティシアは、1から自分で買いに行きたいと言って聞かなかったようだ。


と言っても街に来たらまずは露店で食べ歩きよね!

レティシアはそう思い立ち、食べ歩きのための露天が並ぶ通りへ、くるりと方向転換した。


「んー、やっぱりこの通りと言ったらコレよね。」

そう言って先程店先で購入した、拳程の大きさの串焼きを口いっぱいに頬張り、頬をおさえた。


先程からこんな調子でレティシアは、片手で収まりきらない程の量の露店の数々を回っている。

この街のお料理は最高に美味しいわね……いくらでも食べれそうだわ。

そう言いながらもついさっきそこの露店で買ってきたくるくるとねじられたパンを頬張っている。


そんな余計ことを考えながら、最後の一口を食べ終えると、ふと、ここに来た本来の目的を思い出した。


そうよ!紅茶とクッキーの材料よ!危なかった、完全に忘れてたわ………

レティシアはようやく本来の目的を思い出したようで、お目当ての材料が立ち並ぶ店へと向かった。




♢♢♢





うん、良さそうなのが揃ったわ!

最近できた、この辺りで噂になっているの茶葉を専門に取り扱っていると言うお店に足を運び、色々なものを試飲した結果、今レティシアが腕に抱えているものに決まったようだ。

クッキーの材料は行きつけの店で一通りそろえたし、これで本日の目的は達成ね!


紙袋越しにも茶葉のいい香りがする……!やっぱり自ら足を運んで正解だったわね。

腕の中の香気に胸を躍らせつつ、レティシアは帰路に着こうと、道の角を曲がった。


するとその時、前方から来た男性と肩がぶつかり、抱えていた紙袋の中身が地面へと落ちてしまった。

レティシアは落ちてしまったものを拾おうと、その場にしゃがみこんだ。


「す、すみません!大丈夫でしたか……!?!?」

先程ぶつかった男性はその背を屈めると、落ちてしまった袋の中身を拾い上げ、レティシアの顔を見ると何故か驚いたよう声を掛けた。


「大丈夫ですよ。わざわざ拾っていただいてありがとうございます。」

レティシアは特に気にすることなく、微笑みながら首を傾けた。


その男性はレティシアが抱えていた袋に拾い上げた物を仕舞うと、右手を差し出した。

「結構汚してしまいましたね……。良ければ弁償させて頂きたいのですが、どうでしょう?」

「いえ、そんなとんでもないです!お気持ちだけで十分ですよ。」

「それでは………そうだ、一応名前だけでも教えて頂けませんか?」

そう言うと、その男性は、先程差し出された手に重ねたレティシアの左手に唇を落とした。

はっ!?!?最近の男の人ってこんなに気軽に恥ずかしいことをするのね!ニコラウスしかり、この方しかり!!!心臓に悪いのよっ!!!!

内心ではそんなことを考えながらも、外面だけは繕い、「レティシアと申します。」と一言告げた。

「ちなみに貴方の名前を伺っても……?」

一応変な人ではないと思うが、一応私に名前を尋ねてきた方にも名前を聞いておいた。

「あぁ、まぁそうか……。私はルーク。ルーク・ビルヴォートです。」

ビルヴォート……何だか聞いたことあるような無いような……まぁきっと何らかの爵位を持っている方だとは思うけれど……。

レティシアが貴族の交流の場に出ていたのは5歳まで。それまでに何人かの友人と交流はあったが、疎遠になって10数年、もうその頃の記憶は朧げであっても仕方がないであろう。


レティシアは裾に付いた誇りを払うように、スカートを叩くと、紙袋を抱え直した。

「ありがとうございました、それでは。」

「あっ、えっと、家まで送って行くのはどうかな?」

レティシアがその場を去ろうとすると、ルークはその後ろからレティシアを呼び止めた。

急な提案に驚き、思わず反射的に首を縦に振ってしまった。


なんだか、あの日を思い出すわね。

あの日の彼は意地でも私を家まで送ろうとして……

そう思うと、自然と口元が綻んだ。


「では、お願い致します。」

そうレティシアは笑顔で応えるのであった。
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