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「ニコラウス様、ノイラート公爵家からです。」
「ありがとう。」
何故か二通ある手紙を不思議に思いつつも、ニコラウスは差し出された手紙を手に取り、引き出したからペーパーナイフで封を切った__
婚、約………?ちょっと待て、
そんな話今まで一切聞かなかった筈だ。少し前まで貴族との関わりなんて、それこそ俺以外になんて。
それに”愛していた”と………
その手紙の内容に、正直に喜ばしい気持ちと、婚約したと言う事実に深い嫉妬心が渦巻き、その混同した気持ちに何とも言えない痛みが走る。
焦る気持ちを抑え、2通目の手紙の封を切った__
その手紙はユリアからの物であった。
そこには、ビルヴォート家及び、ルーク・ビルヴォートについて事細かに調べ上げられた、まさに報告書そのもののような物であった。
一応レティシアの側近の者だとは記してはあるが一体誰がこの手紙を……
その手紙の差出人がレティシアの侍女からだ、と言うことには気づいていないようであった。
現在のニコラウスの混乱した頭では、冷静に判断をする事が困難なようで、誰かと言うのを推測することは、一旦放棄した。
それより、だ。
ビルヴォート、ってまさか……
そう思い立ち、ニコラウスは棚に保管されていた記録書に手を伸ばした。
「やっぱり、だよな。」
ニコラウスは大きなため息を零した。
勿論今すぐにでも事情を伺いにレティシアの元に飛んで行きたいが、先ずは伯爵の方と話をつけないとだな……
ビルヴォート家とシュテーデル家とは先代からの付き合いで、今も友好なの関係を築いている。無闇にニコラウスがその関係を壊すことは出来ない。
「いや、でも…………いける、な。」
何かを思いついたようで、ニコラウスはその報告書じみた手紙を机に置き、近くに掛けてあった上着を羽織ると、侍女に一言告げ、部屋を飛び出した。
今まで何も言わなかったレティシアに対し、少しの苛立ちと後悔の念をその胸に、ニコラウスは頭をわしゃわしゃと搔き回した。
「どうして……………、」
その呟きは、自らの足音に掻き消された。
♢♢♢
「突然尋ねてすまなかった。俺はニコラウス・シュテーデルだ。」
「私はルーク・ビルヴォートです。」
そう言うと2人は握手を交わした。
「で、何故今日は家を尋ねてこられたのですか?」
「あぁ、レティシア公爵令嬢についてなんだが…」
「もしかして、あぁ、あなたが………」
「…………どうしたんだ?」
「いや、なんでもありませんよ。それより、レティシアについて、でしたよね。」
「あぁ、そうだが……」
他人の口からその言葉が漏れるのさえ、あまりいい気はしない。
「では少し、私の話を聞いてくださいね。」
その言葉を皮切りに、ルークは今までにあった事を全て話した。
あの日、レティシアと街で出会ったこと。それからは、彼女の居る薬屋に足繁く通っている事。彼女とは幼少期からの知り合いで、その頃から一方的に好意を寄せていること。
そして何故婚約という運びになったのかについて。
「結局私は父の手の上で転がされていたんです。」
「………つまりはどういうことだ?」
ルークは、薬屋に通うようになってからしばらくがした時、父に、レティシアへ好意を寄せていることを打ち明けたのだ。
それが間違いであった。
その話が父の耳に入った後に、レティシアに他に想い人が居るという事を知った。そこでルークは父に異言を提したのだ。だが、体のいい言葉で、その話は避けられ続け、結局婚約を結ぶ事になった。
そこでルークは酷く後悔した。と同時に、婚約が白紙にならなくて済むという事実に、心の何処かで安堵している自分に嫌気が差した。
そしてルークは気がついた。父はただ、公爵家との強固な繋がりが欲しかっただけだったと言う事に。
結局のところ、ビルヴォート家の利益のために自分とレティシアは利用されていただけであった。
「………………という訳です。」
「ちょっと待て、つまり…………」
レティシアは彼の事が好きな訳では無い、ということで良いのか……?そしてこの婚約はビルヴォート伯爵によって取り決められた物で…
「ルーク、ビルヴォート伯爵は何方に?」
「2階の執務室に居ます。父を尋ねるのですか?」
「あぁ、少し話したいことが。」
「そうですか、では侍女を付けさせますので。」
そう言ってルークは立ち上がり、ニコラウスを部屋から送り出した。
「やはり、貴女を幸せに出来るのは僕ではないらしいですね。」
♢♢♢
コンコンコン_____。
「ビルヴォート伯爵、本日訪問させていただいているニコラウス・シュテーデルです。」
そう声をかけると、扉が開かれると同時に内からビルヴォート伯爵が現れた。
「いやぁ、わざわざここまで御足労ありがとうございます。さぁさぁ、どうぞこちらに腰掛けてくださいな。」
促されるままに、ニコラウスは指示された場所へと腰掛けた。
「本日はどのような要件で?」
「本題に入らせて頂きます。レティシア……ノイラート侯爵令嬢についてなのですが。」
すると、ニコラウスの傍付きの1人が紙をビルヴォート伯爵の目の前へと提示した。
「これでどうでしょうか?父上……シュテーデル公爵の確認と了承は既に頂いております。」
「こっ、こ、これはっ!も、もちろんですよ!ではノイラート侯爵家との婚約の話は白紙にするという事で!!」
ビルヴォート伯爵は机から紙とペンを取り出すと、その旨を伝える手紙を書き始めた。
こちらからこの程度の条件を提示すれば簡単に折れるのか。やはりルークの言っていた通り、金と権力にしか興味が無いのか。
この紙きれひとつで動いてくれるのは、こちらにとっては好都合だが。
「感謝します、ビルヴォート伯爵。では、今日の所はこれで。」
「書面の内容は後々よろしくお願い致しますね。」
「もちろんですよ。」
ニコラウスは立ち上がると、ビルヴォート伯爵と握手を交わし、部屋を後にした。
これで全て準備は整った。あとは……
「ありがとう。」
何故か二通ある手紙を不思議に思いつつも、ニコラウスは差し出された手紙を手に取り、引き出したからペーパーナイフで封を切った__
婚、約………?ちょっと待て、
そんな話今まで一切聞かなかった筈だ。少し前まで貴族との関わりなんて、それこそ俺以外になんて。
それに”愛していた”と………
その手紙の内容に、正直に喜ばしい気持ちと、婚約したと言う事実に深い嫉妬心が渦巻き、その混同した気持ちに何とも言えない痛みが走る。
焦る気持ちを抑え、2通目の手紙の封を切った__
その手紙はユリアからの物であった。
そこには、ビルヴォート家及び、ルーク・ビルヴォートについて事細かに調べ上げられた、まさに報告書そのもののような物であった。
一応レティシアの側近の者だとは記してはあるが一体誰がこの手紙を……
その手紙の差出人がレティシアの侍女からだ、と言うことには気づいていないようであった。
現在のニコラウスの混乱した頭では、冷静に判断をする事が困難なようで、誰かと言うのを推測することは、一旦放棄した。
それより、だ。
ビルヴォート、ってまさか……
そう思い立ち、ニコラウスは棚に保管されていた記録書に手を伸ばした。
「やっぱり、だよな。」
ニコラウスは大きなため息を零した。
勿論今すぐにでも事情を伺いにレティシアの元に飛んで行きたいが、先ずは伯爵の方と話をつけないとだな……
ビルヴォート家とシュテーデル家とは先代からの付き合いで、今も友好なの関係を築いている。無闇にニコラウスがその関係を壊すことは出来ない。
「いや、でも…………いける、な。」
何かを思いついたようで、ニコラウスはその報告書じみた手紙を机に置き、近くに掛けてあった上着を羽織ると、侍女に一言告げ、部屋を飛び出した。
今まで何も言わなかったレティシアに対し、少しの苛立ちと後悔の念をその胸に、ニコラウスは頭をわしゃわしゃと搔き回した。
「どうして……………、」
その呟きは、自らの足音に掻き消された。
♢♢♢
「突然尋ねてすまなかった。俺はニコラウス・シュテーデルだ。」
「私はルーク・ビルヴォートです。」
そう言うと2人は握手を交わした。
「で、何故今日は家を尋ねてこられたのですか?」
「あぁ、レティシア公爵令嬢についてなんだが…」
「もしかして、あぁ、あなたが………」
「…………どうしたんだ?」
「いや、なんでもありませんよ。それより、レティシアについて、でしたよね。」
「あぁ、そうだが……」
他人の口からその言葉が漏れるのさえ、あまりいい気はしない。
「では少し、私の話を聞いてくださいね。」
その言葉を皮切りに、ルークは今までにあった事を全て話した。
あの日、レティシアと街で出会ったこと。それからは、彼女の居る薬屋に足繁く通っている事。彼女とは幼少期からの知り合いで、その頃から一方的に好意を寄せていること。
そして何故婚約という運びになったのかについて。
「結局私は父の手の上で転がされていたんです。」
「………つまりはどういうことだ?」
ルークは、薬屋に通うようになってからしばらくがした時、父に、レティシアへ好意を寄せていることを打ち明けたのだ。
それが間違いであった。
その話が父の耳に入った後に、レティシアに他に想い人が居るという事を知った。そこでルークは父に異言を提したのだ。だが、体のいい言葉で、その話は避けられ続け、結局婚約を結ぶ事になった。
そこでルークは酷く後悔した。と同時に、婚約が白紙にならなくて済むという事実に、心の何処かで安堵している自分に嫌気が差した。
そしてルークは気がついた。父はただ、公爵家との強固な繋がりが欲しかっただけだったと言う事に。
結局のところ、ビルヴォート家の利益のために自分とレティシアは利用されていただけであった。
「………………という訳です。」
「ちょっと待て、つまり…………」
レティシアは彼の事が好きな訳では無い、ということで良いのか……?そしてこの婚約はビルヴォート伯爵によって取り決められた物で…
「ルーク、ビルヴォート伯爵は何方に?」
「2階の執務室に居ます。父を尋ねるのですか?」
「あぁ、少し話したいことが。」
「そうですか、では侍女を付けさせますので。」
そう言ってルークは立ち上がり、ニコラウスを部屋から送り出した。
「やはり、貴女を幸せに出来るのは僕ではないらしいですね。」
♢♢♢
コンコンコン_____。
「ビルヴォート伯爵、本日訪問させていただいているニコラウス・シュテーデルです。」
そう声をかけると、扉が開かれると同時に内からビルヴォート伯爵が現れた。
「いやぁ、わざわざここまで御足労ありがとうございます。さぁさぁ、どうぞこちらに腰掛けてくださいな。」
促されるままに、ニコラウスは指示された場所へと腰掛けた。
「本日はどのような要件で?」
「本題に入らせて頂きます。レティシア……ノイラート侯爵令嬢についてなのですが。」
すると、ニコラウスの傍付きの1人が紙をビルヴォート伯爵の目の前へと提示した。
「これでどうでしょうか?父上……シュテーデル公爵の確認と了承は既に頂いております。」
「こっ、こ、これはっ!も、もちろんですよ!ではノイラート侯爵家との婚約の話は白紙にするという事で!!」
ビルヴォート伯爵は机から紙とペンを取り出すと、その旨を伝える手紙を書き始めた。
こちらからこの程度の条件を提示すれば簡単に折れるのか。やはりルークの言っていた通り、金と権力にしか興味が無いのか。
この紙きれひとつで動いてくれるのは、こちらにとっては好都合だが。
「感謝します、ビルヴォート伯爵。では、今日の所はこれで。」
「書面の内容は後々よろしくお願い致しますね。」
「もちろんですよ。」
ニコラウスは立ち上がると、ビルヴォート伯爵と握手を交わし、部屋を後にした。
これで全て準備は整った。あとは……
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