16 / 39
11.
しおりを挟む
いままでの一瞬の出来事にニコラウスは頭がついて行かなかったようで、急に可笑しくなり、ニコラウスは盛大に笑いだした。
「も、もう!笑わないでよぉ………」
レティシアも力が抜けたのか、走るのをやめてへにゃへにゃと笑いだした。
一心不乱に走っていたようで、気がつくとそこは少し街の中心部を離れた小道であった。
『へくちっ!!』
思いがけずに出たくしゃみに、くしゃみをした張本人は顔を赤くそめている。
そんな彼女の様子を見たニコラウスはまた腹を抱え、吹き出したいのを必死に抑え「くくっ……!」と笑っている。
「っ………ごめんね、っふ……、」
「笑うか謝るかどっちかにしてよ!もう!」
「いや、ごめんごめん。こんなに笑ったのは久しぶりだよ。っと、そんなことより服。」
そう、ニコラウスが指さした先にはぐっしょりと濡れた靴とワンピース。先程噴水に思い切り突っ込んだことで現在この状態なのである。
さっきから寒いとは思ってたけどそりゃそうよね。ここから屋敷までしばらくあるし………
レティシアがしばらく悩んでいるとニコラウスが口を開いた。
「そんな服ではろくに屋敷まで帰れないだろ?この近くに俺の行きつけの服飾屋があるんだけどそこで買っていかないか?」
「まぁ!そうね、お願いしようかしら?」
ニコラウスは「では、こちらに。」と言い、右手を差し出した。
レティシアもそれに乗り、笑って左手を差し出した。
♢♢♢
レティシアは真新しいワンピースに身を包み、くるりと一回転した。
本来は自分で払うつもりであったが、お会計をと、お店の人に声をかけると「既に彼氏さんが払ってくれてますよ。」と耳打ちされた。
その言葉にかぁっと赤くなり、レティシアはニコラウスの元に駆け寄ると、彼の服の裾を掴み「……ありがとう。だけど次からは自分で払うからね!」と言うと、どこに向かっているのか、ずんずんとニコラウスの先を歩いていってしまった。
その頃には既に空は朱に染まりかけていた。
2人は馬車を呼び付け、帰路につこうとしていた。
「今日は本当にありがとう。それでね実はこれを持ってきたの………はい、どうぞ!」
そう言うと、小さな鞄からハンカチを取り出した。
「あ、あのね。実は濡れちゃっててね………」
レティシアは申し訳なさそうにその手に握ったハンカチを差し出した。
「あれはしょうがないよ。ありがとう。大切にさせてもらうよ。」
ニコラウスそのハンカチを手に取ろうとすると、エルナが口を開いた。
「そうだ。これからはもうお礼は無し。お礼のお礼って、ずっと終わらないでしょ?」
ニコラウスは少し苦い顔をした。
「だったらこれからは友人として色々な所に出かけよう。今度はもっと素敵な場所に……」
レティシアは一瞬驚いたという表情を見せた思うとすぐに、笑顔になり「もちろんよろしくお願いします。」と告げた。
その言葉に安堵したのか、ニコラウスも口の端を綻ばせた。
「も、もう!笑わないでよぉ………」
レティシアも力が抜けたのか、走るのをやめてへにゃへにゃと笑いだした。
一心不乱に走っていたようで、気がつくとそこは少し街の中心部を離れた小道であった。
『へくちっ!!』
思いがけずに出たくしゃみに、くしゃみをした張本人は顔を赤くそめている。
そんな彼女の様子を見たニコラウスはまた腹を抱え、吹き出したいのを必死に抑え「くくっ……!」と笑っている。
「っ………ごめんね、っふ……、」
「笑うか謝るかどっちかにしてよ!もう!」
「いや、ごめんごめん。こんなに笑ったのは久しぶりだよ。っと、そんなことより服。」
そう、ニコラウスが指さした先にはぐっしょりと濡れた靴とワンピース。先程噴水に思い切り突っ込んだことで現在この状態なのである。
さっきから寒いとは思ってたけどそりゃそうよね。ここから屋敷までしばらくあるし………
レティシアがしばらく悩んでいるとニコラウスが口を開いた。
「そんな服ではろくに屋敷まで帰れないだろ?この近くに俺の行きつけの服飾屋があるんだけどそこで買っていかないか?」
「まぁ!そうね、お願いしようかしら?」
ニコラウスは「では、こちらに。」と言い、右手を差し出した。
レティシアもそれに乗り、笑って左手を差し出した。
♢♢♢
レティシアは真新しいワンピースに身を包み、くるりと一回転した。
本来は自分で払うつもりであったが、お会計をと、お店の人に声をかけると「既に彼氏さんが払ってくれてますよ。」と耳打ちされた。
その言葉にかぁっと赤くなり、レティシアはニコラウスの元に駆け寄ると、彼の服の裾を掴み「……ありがとう。だけど次からは自分で払うからね!」と言うと、どこに向かっているのか、ずんずんとニコラウスの先を歩いていってしまった。
その頃には既に空は朱に染まりかけていた。
2人は馬車を呼び付け、帰路につこうとしていた。
「今日は本当にありがとう。それでね実はこれを持ってきたの………はい、どうぞ!」
そう言うと、小さな鞄からハンカチを取り出した。
「あ、あのね。実は濡れちゃっててね………」
レティシアは申し訳なさそうにその手に握ったハンカチを差し出した。
「あれはしょうがないよ。ありがとう。大切にさせてもらうよ。」
ニコラウスそのハンカチを手に取ろうとすると、エルナが口を開いた。
「そうだ。これからはもうお礼は無し。お礼のお礼って、ずっと終わらないでしょ?」
ニコラウスは少し苦い顔をした。
「だったらこれからは友人として色々な所に出かけよう。今度はもっと素敵な場所に……」
レティシアは一瞬驚いたという表情を見せた思うとすぐに、笑顔になり「もちろんよろしくお願いします。」と告げた。
その言葉に安堵したのか、ニコラウスも口の端を綻ばせた。
0
あなたにおすすめの小説
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる