お神酒入りまーす!~酔っ払い霊媒師!? キャバ嬢カウンセラー~

神楽 萌愛-かぐら もあ-

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7話 地味女子~あこがれる世界~

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 1階のフロアはだいたい見終わったのではないかと思う。
 2階に行くために、まだ開かないであろう玄関の方まで戻る。玄関前の階段を照らすと、赤いレッドカーペットのようなものが敷かれていて、これだけで豪華に見えた。
 住んでいた人がいるはずなのに全てが置きっぱなしで、目に視えるものを疑う。
 普通、引っ越すにしても全てをそのまま置いていくのだろうか。
 ここには時間のせいか、外に生えている手入れのされていない木々のせいかうっすらとしか光が入らないようだ。
 そんなことを考えつつ、階段を転ばないように少し錆びた金色の手摺を持って一段一段上がっていくとはっと気づく。霊の気配に。
 上をスマホのライトで照らすと、あからさまに構ってほしそうなショートカットの女…の子?
寝ぐせでぴよんぴよんと跳ねた髪の子が、階段の一番上の左側に座っているのが視えた。
 心なしか私達を待っていたかのようにも思える。
 私はいつも通り、気づかなかったですよーと心の中で呟きながら思いっきり右に逸れてコツコツと階段を上っていく。
「あっ……あっ……明菜さん!!」
 どもった声でやっと絞り出したかのように震えた声が後ろから聞こえる。
 バレた、という思考より先に、何故名前まで知られているのだ……と疑問が浮かび上がった。なんだかんだ結構騒いだりしていたから、聞こえていてもおかしくはないのだが。
「呼ばれてるぞ明菜」
「呼ばれてるわね」
「うん、呼ばれてる」
 後ろにいた竜介とさやかと王子が口々に言う。こいつらは私がなるべく厄介ごとは避けたいというのを分かっているのか面白がっているのか。
 先頭を歩いていた私はばっと振り返り、
「全員で言わなくてもわーかっとるわい!」
と半ば八つ当たりで叫んだ。屋敷内に声が響いた気がする。
 そして溜息をついてがくり、と肩を落とし……
「……なんでしょう?」
と胸の前でぎゅっと両手を握りしめ、期待の眼差しを送ってくる幽霊に仕方なく応答した。
 首を横に傾けて、右の眉をぴくぴくさせながらも笑顔を作っている。
「ほっ……ほっ……本物やあ! 握手してもろてもいいですか?」
「へっ?」
 一瞬、自分はアイドルだったっけ、と思うくらい相手の瞳はきらきらと輝いている。
 ぽかんとする私の手を勝手に取って興奮気味にぶんぶん振っている。
「うっ……うち、キャバのホームページで明菜さんを見てから憧れっ……憧れてたんです!!」
 どうやら女の子のようだった。言ってはいけないのだろうが、幸の薄そうな顔をしているな、という印象を受ける。それに加え、相手の気迫に圧倒されたが、わざわざうちのキャバクラのホームページをチェックしてくれたのか、と納得した。
「そうなの。ありがとう」
 無難にお礼を言う。
「うちもっ……キャバ嬢になりたくてっ……体入に……行ったんですけど、10件以上断られてしもうて……」
 基本的にキャバはこんな化粧っけがなくて、寝ぐせのすごい子は雇わないだろう。
「……その、どんな格好でどんな化粧、していったの?」
 私は遠慮がちに聞いてみる。
「うちっ……周りから地味だ、地味だって馬鹿にされてて、必死に化粧の勉強を雑誌とか動画で研究して、うちなりには頑張ったんですっ……でもどこも面接さえしてくれんところもあって……」
 俯いてへこんでいる彼女には少しきついことかもしれないが、ツッコミをいれずには居られなかった。
「……その髪は? 寝ぐせだよね? 化粧も大事だけど、髪型も大事だよ?」
 彼女は自分の髪の毛を触り、あっ……と呟いた。
「うち、髪のことなんて何も考えてなかった……化粧に気を取られてしもうて」
「それじゃどこも受からないかもよ?」
「そっそうですよね……」
 彼女は悲しそうに笑う。悪い子では、ないのだろうけど。
「あと、夢を壊すようで申し訳ないんだけど、キャバは他にも大変なことたくさんあるよ? あなたが思うような、キラキラしてるだけの世界じゃない。ナンバー争いもあるし、26を超えたら賞味期限切れ、なんて言われるし。営業もがんがんしなきゃお客さんついてくれないしね」
「ほぁー……そんな大変なんですね……」
 間の抜けた声を上げ、またしてもがっかりした様子を見せる。そして「うちには絶対向いてないです」と付け加え苦笑した。
 さやかはうんうん、と頷いて聞いている。王子は何の話だ?という顔をしていた。
 彼女は心残りなこともあったけど、それを聞いて結局自分に向いてなかったからしょうがなかったんだと独り勝手に納得し、邪魔にならんとこ行っときます、と言って下に降りて行った。
「明菜はそんなことまでしていたのか、ただ破廉恥なだけじゃなかったんだな」
 竜介は感心したように声をあげた。
「あたしを何だと思ってんのさ」
「ねーちゃんはすげーんだぞ!!」
 わけの分かってない王子は私を勝手に上げてくれる。
「営業はあたしも骨が折れたわ……」
 さやかは独りごとのように呟いた。
 また、絡まれてしまったけど、平和に解決?出来てよかったわ、と私は思うのだった。

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