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第39話 突撃七海家

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  七海家の領地はそのほとんどが海である。

  元々彼女の能力、潜水サブマリンの能力があるので、彼女にとっては陸も海も関係ないのだろう。

  来栖によると彼女の能力、潜水は水の中でも呼吸することができる優れた能力らしい。

  今回ここに来たのは他でもなく、仕事の依頼があるという事だった。

  金欠のおれにとっては願ってもない話なのだが、ついこの間の一件があった所で来栖に会うのは少々気まずい様な気がする。

  そう思いながらもあの時の感触を思い出している自分が腹立たしい。

「そう言えば来栖、責任取ってやとか言ってたな……何をされるのだろうか……」

  あの来栖の事だ、きっと恨みつらみを一気にぶちまけて来ることだろう。

  そんな見知らぬ危険に身を震わせていると、後ろから声が聞こえてきた。

「姉様の貞操を奪ったのはお前かです」

  振り返るとそこには誰もいなかった。

「したを見るです!!」

  言われた通り首を下に向けるとそこには茜と同じ身長位の幼女がおれを見上げ、睨んでいた。

「貞操?なんの事言ってんだよ?」

「ふざけんなです!姉様が言ってました!春臣という野獣にあんなことやこんなことをされたと!」

  色々ツッコミどころはあるが……

  それよりも幼女のような見た目で口が悪いとか桃とキャラかぶってるじゃねえか……とはどう見ても言える状況ではなかった。

「何見てやがるです!は!もしかしてみーの事も同じような目に遭わせるつもりですか?」

「しねーよ、てか誰なんだよお前」

「人に名を聞く時は自分から名乗れです。お母様に教わらなかったのですか?」

  いちいちめんどくさいなこいつ。

「おれは神田春臣、ここの領主さんに呼ばれて話をしに来た」

「名前は知ってるです、あと姉様にお出迎えするように言われたので何しに来たかも知ってます……うぅ、痛いのです。可憐な少女に手を出すなんてやっぱり野獣です!」

  いかんいかん、つい手が出てしまった。

  だが、おれはダメなことはダメとしかれる大人。

  これはいたしかたのない犠牲なのだ。

「おれを呼びに来たなら早く案内しろよ」

「ふん、ちゃんといいつけを守らないと姉様に怒られるから仕方なく連れていってやるです。感謝するです」

  もう一度手が出そうになるのを堪える。

  出会った幼女は結局名を名乗らぬままおれから数メートル距離を置いて歩き始めた。

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  そこは普通の家だった。

  見るからに普通の民家、ここが七海家の本家なのか?

「ほら連れてきてやったです、中で成実様が待ってるです」

  そう言われて民家の玄関を開けると中に二人の女性が座っていた。

  一人は顔なじみのある、来栖だ。

「よう、来栖」

「は、春臣、、、」

  顔を背けられた……あの件以来どうも気まずい……

  まぁそれは置いておいて、消去法的にこっちが七海成実か。

  そこには豊満な胸を持った可憐な女の子が座っていた。

  このサイズは今まで見たことがないぞ……

「成実様をいやらしい目で見るなです」

  見てない……とは素直に言えなかった。

「美波、お客様に失礼でしょ」

  ホンワカとした声で、いかにもな声で、身内の非礼を詫びる成実。

  いや……なんか心痛いわ……

「コホン」

  わざとらしい咳払いで悪い間を取り除いてくれたのは来栖だった。

  こういう時の来栖はなかなか頼りになるなぁ。

「春臣くん、どうぞ中に入っておかけください」

  言われた通りに中に入ろうとした瞬間、何かにつまずいた。

  多分古い民家の玄関にある段差だろう。

  最近、普通の家に段差なんてないじゃん?

  そんなの油断するに決まってんじゃん?

  わざとじゃないんだなぁこれが。

「あらあら、ふふふ」

  気がつくとおれは七海バストに頬を埋めていた。

  というかめり込んでいた。

  それくらいの魅惑ゾーンだった。

「てめえ……あった途端に誰でも見境なく手を出しやがるですね……」

  幼女がキレていた。

「プパっ、誤解だよ!たまたまつまづいたんだって」

「こんな段差につまづく奴なんていねーです」

  スグにどいたのだがこれはまた空気が不味いぞ……

「来栖も何とか言ってくれよ」

  困った時の来栖先生お願いします!

「…………」

  そそくさと黙ってどこかへ去っていってしまった。

「春臣様ったら、大胆なんですね」

  頬を紅潮させている七海家の当主はこの際謝ったら許してくれそうか?

「すいません、七海さんいきなり失礼なことを!」

「大丈夫ですよー、もうお嫁に行く準備は出来てますからー。いつでも抱いてくださいませ」

  粗相をしたおれが言うのもなんだが、ここの当主は少し、いやかなり頭がぶっ飛んでいたようだ。
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