学院最弱底辺の僕にだけ従う最強生徒会長

塞翁が馬

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主さまと、お世話係と、白銀の魔女

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 照りつける日差しはまだ強いが、山間の風が木陰に涼をもたらしていた。

 芝生に敷かれたレジャーシートの上。
 昼食を終えた僕は、何となく空を見上げていた。入道雲の輪郭が、ぼやけた目に映る。

「天城君、おかわりいりますか?」

「……いや、もう十分食べた。というか、村崎、それ俺の分も多めに盛ってただろ」

「ふふ、よく気づきましたね。育ち盛りってやつです」

 そう言って微笑む天音は、今日もいつものクリーム色のゆるセーター。
 夏合宿だというのに、まるで温室にいるかのような落ち着きを保っている。

「……ちなみに天城くんの食後血糖値は今、おそらく120を超えております。ちょっと眠気が来る頃ですね?」

「怖いからやめて、その生活リズムの監視やめて」

「健康管理も“お世話係”の重要な仕事ですよ?」

 天音がスプーンを拭きながらにこにこしていると──

「……お二人とも、休憩中くらいもう少し静かにできませんか?」

 現れたのは、涼しげな銀髪を揺らしながら歩いてきたセラフィーナ。
 その手には、冷えたペットボトルが3本。

「お疲れ様です、会長」

「差し入れですか?」

「はい。……天音さん、あなたが悠真くんに“食後三分後には血糖が~”などと言っていたので、ちょうど冷たいものがいいかと思いまして」

「細かく聞かれてた……!」

 セラフィーナはそっとペットボトルを差し出し、天城の隣に座った。
 彼女の制服は相変わらず乱れがなく、立ち居振る舞いもどこか涼しい。

「さっきまで玲花さんと、予算の確認してたんです。明日の予備費が500円ずれていたようで」

「その500円、たぶん俺の水代じゃ……」

「わたくしが払っておきましたので問題ありません。……ただし、後で“主さま清算書類”にサインをお願いしますね?」

「なんか余計なの増えてないか!?」

 天音が笑いをこらえながら囁く。

「セラフィーナさんって、ああ見えて抜かりないんですよね……まるで、魔王に仕える忠実な宰相のような」

「主さまを魔王呼びするな。あとそれ宰相っていうか、むしろ黒幕ポジじゃないか」

「ふふっ。でも……いいですね、こうして三人でいるの。なんだか、不思議と落ち着く気がします」

 天音が小さく呟いた。

 すると、セラフィーナがふと視線を逸らし、芝の上を見つめる。

「……確かに。こういう穏やかな時間も、案外悪くないですね」

「そんな真面目な顔で言われると、こっちが恥ずかしくなるんだが……」

「主さまは、素直に“楽しい”と言えばよろしいのです」

「うぐ……」

 木漏れ日の下。
 三人の静かな時間は、昼休みのわずかなひとときの中、確かに“距離”を縮めていった。

 そしてそれは、これから巻き起こる夏合宿イベントの数々へと──ゆっくりと、静かに繋がっていくのだった。
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