魔詞オールロッヒ

神琴坂祝麗

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1.醒めない悪夢

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誰だって構いやしない
男だろうが女だろうが気にしない
戦える者が戦う
それがこの世界の常識
だから戦う
終わらない悪夢せんじょう
貴方を待ち、私を誘ういざなう

...

『聞こえていますでしょうか?
こちら、総帥より緋月大尉様へ
繰り返させて頂きます。
こちら、総帥より緋月大尉様へ
応答、お願い致します。』

無線機より聞き慣れた声が聴こえてくる
今まで
ずっとくり返されていたのだろうか
戦争なのに
いつの間にか呆けていたようだ

「此方、緋月京華。
総帥、なんでしょうか?」
『あぁ、良かった。
もう返答来ないと思っておりました
今から作戦の最終段階なのに。』
「総帥、すみませんね。」
『いいえ、善いのです。
誰だって現実から目を背けたい時も
返答したくない時もあります』

そういうわけじゃないんだけど
というか両方変わらない気がする。
と心の中で思いつつ
作戦及び帰還の準備をしていた

『今からその辺りに核兵器打つので
大尉は頑張って逃げてください。』
「了解。他の兵は?」
『あぁ、放っといていいです。
それらは非国民ゴミクズ
あまり変わりのない使えない者なので』
「...」

その扱いはどうかと思うけど
こんな世の中だし仕方ないと思う
正直、私としては夢見が悪いんだけど
まぁ、仕方ない

「これより帰還する。」
『御意。お待ちしておりますね』

転移装置、起動

私にだけ総帥から手渡された
それは光を放ち私を包み込む

「大尉お待ちください!!」「見捨てる気ですか!?」「助けてください!!」「待ってくれ、待ってくれ!!」「あんたなんて人でなしだ!!」「俺らはどうすりゃいいんだ!!」

消えゆく意識の中
他の兵士達の
煩い声ざつおんが聴こえる
本当に心苦しいけど助けられない
助けたら自分の立場が危うい
...所詮自分が可愛いのが人だから
仕方がない...と思う

「緋月大尉、お待ちしておりました」

移動は完了した
目の前には
にこやかに敬礼をした
紫色の長髪彼女が一応総帥の
少女坂幸祝おとめざかさいわい
なのだが、
謙るのが好きという変わった子だ
私のことを作戦時以外は
下の名前で呼んでもらってるけど
結構慣れないみたいだったりする
本当におかしな子

「大尉さ...」
「...」
「...あぁ、失礼致しました。
京華様、お疲れ様であります!
活躍、ずっと見ておりました
流石大尉であります!なんと言っても...」
「幸祝。」
「…なんでありましょうか?」
「早く楽にさせてあげて」
「あぁ...了解致しました!
京華様は優しいですね。
あのゴミクズが早く成仏して
安らかな眠りにつけるようにするとは
この少女坂幸祝、感激です
すぐに核を落としましょう!!」

何故彼女は楽しそうなんだろう
人がこれから沢山死ぬというのに
何故彼女は優しいと言うのだろう
...私なんて優しくないのに

「目標はあの腹立つ忌々しい
ロシア=ソビエト社会主義帝国連邦
の領地であります!!
そうそう、戦争です、戦争!!
あぁ、いや、楽しいなぁ!!
撃ちますよ?宣戦布告ですよ?
もうすでにしてるようなものですけどね
あぁ、楽しみだなぁ!!!!
楽しみは取っておきたいですが
撃ちましょう、核を!!
それでは
さようなら!ダスヴィダーニャ

彼女は楽しそうに多弁し
そして核兵器発射のスイッチを押す
彼女の笑顔は狂気そのものだった
遠くからでも見えるキノコ雲
一応威嚇用だから威力は小さいが
それでもキノコ雲はあがる

「たまやー!かぎやー!少女坂ー♪
やりました、やりましたよ!!
人がゴミのようです!見えませんけど!
彼奴等、何が社会主義ですか!!
帝国の時点で社会主義じゃないのに!
やっと本格的な戦争、始まりますよ!
自分、戦うのは苦手ですが
とっても、とーっても!!
人が戦っている所は大好きですので
あぁ、嬉しいなぁ!楽しいなぁ!
核兵器様様です!!
旧人類核兵器作ってくれて有難う!
核兵器万歳!!万歳!!!!」

正直、見ていたくなかった
その光景を見ていて気分が悪くなった
さっきまで生きていたであろう人が
一瞬で消えてなくなったのだから
見えてなくても気分が悪い
見ていていいものでは無いものを
こうして喜んでいる幸祝が
凄く、気楽で羨ましい
自分が戦うわけじゃないから
そうやって言えるわけであって
まぁ喜ぶなんて私には似合わないけど

「京華様、宜しくお願いしますよ!」
「勿論、わかってるよ。」

ただそうやって返事するしか出来ない
今死のうが後から死のうが
誰が死のうがどう死のうが
私には関係ないはずなのに
どうしても気になってしまうから

「幸祝は幸せそうだね。」
「えぇ、勿論!!自分、幸せです!
幸い、幸祝ですよ!!!!」

心の底から笑っている
本当に幸せそうだ
...私は今日も悪い夢を見るだろうけど
不幸だとは感じないだろう
彼女が幸せそうに笑ってる限りはだけど
まぁ悪夢から抜けられないのは
変わらない事実だけど
これも仕方ないことなんだろうね

...

一応この国の紹介だけど
名前は大日帝国、旧国名・日本
これが私の属する国
大日本帝国軍大尉・緋月京華ひづききょうか
生物学上、
そして名前を見れば分かる通り女である
大日帝国の帝王であり
実の兄の緋月雪人ひづきゆきひとがこの国を治めている
私が大尉なのは能力を買われただけ
誰も大尉になりたいなんて言ってない
なのに、大尉にされた
軍の方では偉い方らしいがどうでもいい
私は戦えと言われてるから戦っている
言うなれば傀儡と同じようなものだから
拒否権も人権も無い
が、この世界では当たり前
まぁ、仕方が無いんだろうと思う
別にこの仕方が無いは妥協している訳では無い
ただ、諦めているだけ
それだけのこと

...

コツコツと音をたたせて歩いている男が居た
その男...いや、緋月雪人はやってきた
楽しそうにする幸祝を見て
私の方には目もくれず愉しそうにしながら
雪人が来ているのに
幸祝はまだ気付いていないみたいだけど

「楽しそうだねぇ、幸祝。」
「はい!とっても...って帝王様!?
「ねぇ、幸祝。
この前さぁ雪人って呼んでって
言ったばかりじゃないかぁ」

雪人も下の名前で呼んでって言ってたんだ
そんなこと知らなかったけど
兄と同じなのは心外だし
この変態変人と一緒にされたくはない

「申し訳ありません、雪人様!!
あの、えっと、あの!!」
「報告は要らないよぉ?
そんなのは見ればわかるからねぇ。
それより俺が言ったこと覚えてないとか
どういうことかなぁ?」
「ひっ!?申し訳ありませんっ!!」
「俺を恐れる顔を可愛いねぇ、幸祝。
そんな所もいいねぇ...フフッ」

兄は私以外の女子に
セクハラ同然のことを平気でしでかす
権力と世の中の常識ルールを乱用してる
相手の反応を見て楽しんだり
気持ち悪いと言われて喜んだりと
色々とあるが、大体こんな人なんだ
小さい頃からずっと

「幸祝。」
「な、なんでしょうか」
「頑張ってねぇ」
「は、はい。有り難きお言葉!
この少女坂幸祝、心に刻みます!」
「...心じゃなくてさぁ
俺は幸祝の身体に刻みたいなぁ」

身内でも気持ち悪いと思う
というか身内なのを恥じたいぐらい

「...そ、そうでありますか」
「だからぁ、今度刻ませてねぇ?」
「...機会があれば、ですね...」

幸祝は必死に目を逸らしている
そして目が泳ぎまくっている
こっち見られても助けれないよ?
幸祝は自分以上の地位とその狂気もの
見てしまうと流石に引くんだろう
というかこれを見て聞いた人で
引かない人は尊敬に値する
けど、それより
引くのは仕方ない=褒め言葉
と解釈する兄はどうかと思う

「じゃあ、またねぇ」
「は、はい。」

またコツコツと音をたて帰っていく
敬礼して見送ってる幸祝の顔が
さっきとは真反対で引きつっている
若干震えてもいた

「幸祝、大丈夫?」
「だ、大丈夫で、あ、あります...
しゅこ...少し驚いただけですよ...」

途切れ途切れで噛みながら
涙目で言われても説得力なんて無いが
まぁあの人を目にするだけでも
倒れてしまったりする人もいるから
そうなるのも仕方ないと思う
個人的には態度を直して欲しいけど
無理なんだろうな

「そ、それより、こ、これからの
さ、作戦を、作戦を...!!」
「落ち着いて、作戦は後からでいいから。」
「り、了解っいたし...ましたっ...!!
あああ、後、後から...お伝えします...」
「了解、幸祝はゆっくり休んで」
「あ、有り難き気遣い...か、感謝しましゅ...」

すぐに幸祝は自室へ帰っていった
昔から兄は不思議な気を纏っているようで
私以外の女の人はすぐに
さっきの幸祝のようになっていた
畏怖とか言葉じゃ伝えきれないほどに
なってしまうらしい
多分兄の魔詞の能力のせいだと思うけど
今は関係ない話
私もさっさと戻って
支度とかしないといけないから
軍の寮の自室へ戻ることにしよう

...

この後、支度をして眠った後に
本当に悪夢を見たのは内緒のはなし
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