召喚+転生で絶対終末をぶっ壊す!

百都うりり

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中の人と外の人

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 ちょっとの心の休憩を入れ、疲れた気持ちを持ち直す。
 これから事の中核を聞くにあたって、先に他称・勇者の球の人のことも知りたい。てか、話してくれるかな?

 「えーと、いろいろ聞く前に、お互いの自己紹介なんてどうだろう?」
 《…円滑な 会話の 為に 行う 行動と 判断 学習 重大機密に 抵触する 事項以外は 報告可能》
 おお、乗ってくれた。まんま映画とかゲームに出てくるAIだ。球の人ってロボット的なもので間違いないだろう。あと、創造主みたく思考を読めないし、受け身っぽい会話をするから、ダメもとでこっちから話していかないと。

 「俺は大原 恭平。地球って星がある世界から来た。人間って自称する生命体だ」
 うーむ、こんな感じでわかるだろうか?逆にフランクすぎても理解してもらえないかな。
 
 《既に 取得した 情報 当機は 実験機と 呼称されていました 生体型ボディをベースとした 武装ユニット およびガジェットの 複合運用実験機として 製造されました》
 もう知ってた…。気をまわしたつもりが恥ずかしい…。で、でも武器とか満載なら中身がおっさんの俺でも戦えそうだな。しかし、名前が実験機って直球だな。コードネームみたいなものとか無いんだろうか?他の機体との比較試験とかライバル会社とトライアルがあれば番号くらいはありそうだけど聞かないと答えてくれないのでどんどん聞こう。

 《名称について:試作・実験機には名称はつけられません 量産段階に移った際に製品として名称が付けられます》
 《比較試験について:当機の実験コンセプトは 単一機体で装備の最大搭載数と運用効率を調査するもので 多数比較はされず番号も付きませんでした》
 《他の企業の存在:当機を開発した企業しか存在しないため 競合はありません 当企業は 常に最高の製品を開発・生産・供給します》

 …なんか閉じられた世界っぽいな。あと、だんだん会話が滑らかになってるのがわかる。合成音声も自然な声に近くなってきた。学習能力の高さから、実験機さんが高性能ってのは間違いないかな。

 そろそろと見切りをつけて本題を聞く。俺たちがやるべきこと。それは…。

 《絶対終末 と呼称される高難度ランダムイベントを クリアすることだと 創造主は話していました》
 は?イベント?クリア?硬めの話し方の実験機さんがゲームじみたことを突然話したり例えたりはしないだろう。
 となると、創造主からの話をそのまま答えていることになる。あいつ、俺の認識の尺度に合わせてるなんて言いながら大差ない状態で、実験機さんに説明してたのか。行き場のないもやもやがさらに膨らむ話が続けられる。

 《当機は あなたより先に創造主より召喚され 72年の年月を費やしましたが 最終的に任務遂行が不可能なレベルの損壊を受け 状況終了しました その後 当機召喚前までの時間逆行が即時決定され 次回の確実な成功のため あなたの意識を当機本体に転生させて主制御を担当 当機OSがサポート役になる計画が実行中です》
 
 先に召喚されてた?失敗してる?世界の巻き戻しが難しいと言いながらあっさりとそれを実行していて、今度は俺も転生させて世界を救おうとしてるのか?もやもやが爆発しそうになるくらい膨れ上がったころ、当の本人がスマホもどきを消して会話に入ってきた。

 『やーおまたせー。どこまで話…した……?』
 俺の怒りの思考を読んだのだろう。棒人間のような人型でもはっきりわかるくらい焦っている。

 『あの…ね?すっごく怒ってるのわかるけど、もう出発のお時間なんだ…。これ逃すと、送れなくなるの…』
 うわ、可愛く言ってるけど、話すらさせない気だろこれ。ちくしょう。我慢するけど今後の勤労意欲に関わるぞ。

 集中するから、とこちらに背を向け作業を始める創造主。スマホもどきをいじりながらも、時折こっちの顔色をちらちらとうかがっている。やがて、手元のウィンドウが浮き上がり、青く輝く大きな球状になる。これが今から飛ばされる世界だろうか。とても綺麗で見ていると気持ちが少しずつ落ち着いてくる

 『情報を伏せてたのは、本当にごめんね。説明は後で必ずするから。あと、着いてすぐには絶対終末は来ないから、じっくりと世界と新しい身体に慣れてね。すっごい良い世界だから楽しいことがきっとあるよ!頑張って!』
 やたら早口で説明したのち、青い球体が輝きを増し大きくなり始める。それが近づいた白い部屋が音なく崩れていき、俺の意識と実験機さんの身体も飲み込まれる。

 青い光の中、実験機さんの身体が人型になっていく。顔は出来ていないが、他の部位は創造主のような雑な形ではなく、手足の指がきちんとあり、しっかりとした体つきが確認できる。あれ?どう見ても男性型だけど、実験機さんの人格設定ってどうなってんの?声は女性だったし。

 《あなたと創造主の 会話が円滑だったので 女性音声が会話に有効だと 判断・学習・実践しました》
 なんかもう人と変わりない強かさがあるな。しかし、この学習能力と武装山盛りなのに、長年かかって失敗までしてるんだ?
 疑問を問う前に変化が終わり、俺の意識が新しい身体に入っていく。周りの様子も変化が見られた。青い輝きがだんだん暗くなり、進む先に奇妙な記号や知らない文字の列がまるく陣を組んでいる。あれをくぐれば冒険が始まる―――
 おっと、異世界に出る前に話しておかなきゃいけないことがあった。

 「なあ、着く前にお互いの呼び方を決めておこう。実験機さんじゃ呼びにくいし。俺はキョーヘーでいいよ。」
 《了承しました 当機の呼称ですが 自身では実行できない仕様です キョーヘーが決定してください》

 ぐわぁ!最初の難関が襲い掛かってきたぞ。ゲームのキャラクターに名付けするときは、愛着持ちたくてとにかく悩むほうなのに。もう時間も無いし早く決めなきゃ。プロト…ありきたりすぎるか。タマ・マル・コロ…ペット感覚なんて失礼だろう。ボール…そのまま過ぎ!最初に見た形状がアイデアを阻害してくる!ああっ!もうすぐ出口だ!締まらない始まりは嫌だ!…そうだ!今までの文字を組み替えていい感じに…。

 「………ロール!でどうかな?語感もいいし役割ロールって意味もある!俺たちで役割を果たそう!」
 《ロール… ロール… 了承しました 今作戦内での当機呼称は ロールです よろしく キョーヘー》
 よかった…。当人に受け入れてもらったし、意味も持たせられた。
 ホッとしていると出口は目の前。絶対終末はまぁなんとかするとして、異世界と冒険を楽しんでやるぞ!
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