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9   カヤバセ村とその後

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出産直後ということで、ベアトリーチェは母親の側から離れた。

「ねえねえ、鷲と馬と人?の子供ってペガサスなの?」

変わらずベアトリーチェから離れない精霊に聞いてみた。その問いに精霊達はぷるぷると横に首を振った。

「ペガサスは、神からしか生まれないよ。」

「あの女性ひとはねー。元々馬なのー。力が強かったから人の姿になってたけどー、余裕なかったから下だけ馬に戻っただけー。」

「で、鷲はどっかの神」

説明した精霊はどこかどや顔で言ってきた。

「あの鷲神様なんだぁ。」

そうこうしているうちに、鷲がベアトリーチェの近くに来た。

「あ、無事産まれたし…帰りはどうすればいい?」

「送ろう。」

鷲の背中に乗って森に帰るときに、耳に言葉が入ってきた。

【ありがとう】

「どういたしまして。また会おうね!」

ベアトリーチェは胸がポカポカ温かくなるのを感じながら森へと帰った。





森から徒歩でカヤバセ村に帰ると、三日経っていた。

「おかえりなさい、リーチェ。ありがとう。」

「お母様、何があったか聞かなくてもいいのですか?」

エレナはベアトリーチェの頭と頬を撫でながら笑った。

「ええ、分かっていたから。よかったわね、無事に産まれて。こちらは皆落ち着いているわ。」

「そっか。」

そして、直ぐにカヤバセ村を出た二人。行きと同じく歩きで森の中を進んでいく。

エレナの格好は三日経っているにも関わらず、綺麗なままだった。

「お母様は村に泊まったのでは?ご挨拶はよろしいのてしょうか。」

「私はずっと森の中で過ごしていたわ。動物達と森の精霊にとても良い場所に案内していただいたの。」

エレナの三日間もとても気になったが、ベアトリーチェは出産の事を報告しながら森を出た。

初めに馬車に乗る所まで戻ると、ポツンと馬車があった。二人が近づくと、馬車の中からガタガタッと音を立てながら、ルミエルが出てきた。

「良かった、二人とも無事で。」

「あれ?お家にいるのでは?」

「家にいるとは言ってないからね。ちゃんと食事と睡眠も取ったよ。」

あまりにも嬉しそうに両手を広げて二人を包みこんだため、エレナとベアトリーチェはまあ、いいかと何も言わずに甘んじて腕の中におさまった。





エレナの要望で、エマと別れた街に向かい、近くの騎士に名前を言うと、ある屋敷に案内された。

そこには、エマが座ってお茶を飲んでいた。三人に気がつくと、飲んでいたお茶を急いで置いて、エレナとベアトリーチェに抱きついた。

「良かった。」

「リーチェがいたんですもの。」

「リーチェ、本当にありがとう。お礼は多めに言ってね、国王から取ってくるから!」

あまりにも大きく胸を張ってエマが宣言するので、リーチェは笑ってしまった。

そしてその後、エレナに話したようにエマとルミエルにも、出産の話を伝えた。


ちなみにお礼は、国王に貸し一つという事にした。
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