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私は
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妻が死んで2ヶ月。いや、3ヶ月だったか。時間が過ぎるのが速く感じた。
「幸せになってください」
それが最期に聞いた言葉だった。
プロポーズをされた日。
「結婚してください」
と震えた声で告白した貴方は、傍から見ると笑える位に緊張していたと思う。だけどその時は嬉しくて、そんな事どうでも良かった。貴方にそう思ってもらえて、とても嬉しかった。
両親に挨拶をしに行った日。
ここまで緊張したのは久しぶりの事だった。ごめんね、道中寝ちゃって。緊張し過ぎて夜眠れなかったんだ。
昔から
「早くいい人を見つけて、結婚しなさい」
って言っていただけあってか、歓迎していた。正直、拒否でもされようものなら両親と縁を切るつもりだった、と後で両親に話したら
「お前が見つけた人だ。それに、俺から見てもいい男だ。大丈夫」
って言ってくれた。誰から見ても、きっと自慢できる夫だ。
結婚式を挙げた日。
その日は雨が降る中の式だった。蒸し暑い中で行われたが、参列していた皆が笑顔で祝ってくれた。照れ臭そうに終始顔を赤らめていた貴方がとても愛しく思えた。今でも思い出すと、そう思える。
「これで安心して死ねる」
って口を揃えて両親が言って周りもその冗談に笑っている中、真面目な顔で
「幸せになります。してみせます」
と貴方が言い、両親が泣いたのを覚えている。両親の泣いた姿を見た事が無かったから、より鮮明に覚えている。
子どもが生まれた日。
貴方は待合室でずっと動かず座っていたって看護師から聞いた時、少し驚いた。あまりにずっといるから食事とかしなくていいのかって言葉に
「あいつも同じ状況です」
って言ってたらしいね。わざわざそこまで追い込まなくてもって思ったけど、やっぱり嬉しかった。
産まれたって報告を聞いた貴方は一目散に駆け寄ってきた。私と赤ちゃんを一瞥した後、私達を優しく抱きしめてくれた貴方が暖かかった。
小学校の入学式の日。
生まれてからもうこんなに経ったのか、と実感させられる。でもやっぱり可愛らしくて、式中に思わず手を振ってしまった。式中だぞって貴方は止めたけど、貴方だって嬉しくてカメラに収めるのを忘れていた。けど、一生忘れない。
3人で手を繋いで帰っていたけど疲れて寝ちゃって、貴方がおぶって帰った。その姿をこっそりケータイに収めた。
高校の卒業式の日。
私とあまり変わらない身長になり、あの子も大人になった。もうあの子の弁当を作る必要なんて無くなったんだ、と実感すると、何だか寂しく思えた。貴方も心無しか泣いているようにも見えた。
あの子は家から旅立った。けど、後悔は無い。
最後にキスをした日。
いきなり私からキスをしたら、貴方はとても驚いた。けど、すぐに返してくれた。これで前に進む勇気ができた。愛しています。
「出来ました」
そう言うとすっと視界が暗くなった。幾らか歩かされ、止まるように命令された。
辺りが静まり返り、私は目を閉じた―
「幸せになってください」
それが最期に聞いた言葉だった。
プロポーズをされた日。
「結婚してください」
と震えた声で告白した貴方は、傍から見ると笑える位に緊張していたと思う。だけどその時は嬉しくて、そんな事どうでも良かった。貴方にそう思ってもらえて、とても嬉しかった。
両親に挨拶をしに行った日。
ここまで緊張したのは久しぶりの事だった。ごめんね、道中寝ちゃって。緊張し過ぎて夜眠れなかったんだ。
昔から
「早くいい人を見つけて、結婚しなさい」
って言っていただけあってか、歓迎していた。正直、拒否でもされようものなら両親と縁を切るつもりだった、と後で両親に話したら
「お前が見つけた人だ。それに、俺から見てもいい男だ。大丈夫」
って言ってくれた。誰から見ても、きっと自慢できる夫だ。
結婚式を挙げた日。
その日は雨が降る中の式だった。蒸し暑い中で行われたが、参列していた皆が笑顔で祝ってくれた。照れ臭そうに終始顔を赤らめていた貴方がとても愛しく思えた。今でも思い出すと、そう思える。
「これで安心して死ねる」
って口を揃えて両親が言って周りもその冗談に笑っている中、真面目な顔で
「幸せになります。してみせます」
と貴方が言い、両親が泣いたのを覚えている。両親の泣いた姿を見た事が無かったから、より鮮明に覚えている。
子どもが生まれた日。
貴方は待合室でずっと動かず座っていたって看護師から聞いた時、少し驚いた。あまりにずっといるから食事とかしなくていいのかって言葉に
「あいつも同じ状況です」
って言ってたらしいね。わざわざそこまで追い込まなくてもって思ったけど、やっぱり嬉しかった。
産まれたって報告を聞いた貴方は一目散に駆け寄ってきた。私と赤ちゃんを一瞥した後、私達を優しく抱きしめてくれた貴方が暖かかった。
小学校の入学式の日。
生まれてからもうこんなに経ったのか、と実感させられる。でもやっぱり可愛らしくて、式中に思わず手を振ってしまった。式中だぞって貴方は止めたけど、貴方だって嬉しくてカメラに収めるのを忘れていた。けど、一生忘れない。
3人で手を繋いで帰っていたけど疲れて寝ちゃって、貴方がおぶって帰った。その姿をこっそりケータイに収めた。
高校の卒業式の日。
私とあまり変わらない身長になり、あの子も大人になった。もうあの子の弁当を作る必要なんて無くなったんだ、と実感すると、何だか寂しく思えた。貴方も心無しか泣いているようにも見えた。
あの子は家から旅立った。けど、後悔は無い。
最後にキスをした日。
いきなり私からキスをしたら、貴方はとても驚いた。けど、すぐに返してくれた。これで前に進む勇気ができた。愛しています。
「出来ました」
そう言うとすっと視界が暗くなった。幾らか歩かされ、止まるように命令された。
辺りが静まり返り、私は目を閉じた―
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