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晃と翔
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「帰るぞ」
翔がそう言うのを聞いて、軽く返事をしたあと俺は鞄を肩にかける。
いつもの帰り道。いつもの距離感。
翔は少し前を歩いていて俺はその背中をなんとなく追いかける。
こんなふうに並んで帰るのは俺らの間ではもう何年も続いていることだった
一一一一一一一一
一年生の春、翔はふざけたように言った。
「俺らってなんで一緒にいるんだっけ?」
理由なんてなかった。ただ気付けば隣にいた。
気付けば、俺はお前に恋をしていた。
でも、俺はまだこの関係を名前で呼べないままでいる。
翔「お前さ、もうちょい愛想よくした方がいいんじゃね?」
帰りのバスではそこそこ人が乗っていて少し荒い運転に自然と肩がぶつかる。
晃「は?」
翔「この前、隼が言ってたぞ。『晃がもっとニコニコしてたら、女子の告白率2割増し』って」
晃「俺別にモテたいわけじゃないし」
翔「いやモテるモテないじゃなくてさー、せっかくイケメンなのに愛想悪いのもったいねぇってこと」
晃「お前に言われたくねぇよ」
翔「俺はちゃんと笑顔振りまいてるし?」
晃「いや、それ全部営業スマイルじゃん」
翔「は? そんなことねーよ、これのどこが営業スマイルなんだよ」
にこっと笑ってみせる顔を向けられ少し赤くなっているであろう頬をわざと夕日が差す方へ逸らす
晃「うわ胡散臭…」
翔「せっかくとびきりの笑顔を作ってんだから見ろよ」
晃「つまり営業スマイルじゃねぇか」
いつもの他愛もない会話。俺はこの時間が好きだ。
けど、楽しい時間はあっという間になくなる。
「じゃ明日なー」
「おー」
ひらひらと手を振りバスを降りると眠い目でスマホを触り歩く翔。バスが進みその姿が小さくなりやがて見えなくなる。
直線が続く道で車内は穏やかな揺れに包まれていた。その心地良さにひと眠りすることにした。
卒業まであと一年。
翔がそう言うのを聞いて、軽く返事をしたあと俺は鞄を肩にかける。
いつもの帰り道。いつもの距離感。
翔は少し前を歩いていて俺はその背中をなんとなく追いかける。
こんなふうに並んで帰るのは俺らの間ではもう何年も続いていることだった
一一一一一一一一
一年生の春、翔はふざけたように言った。
「俺らってなんで一緒にいるんだっけ?」
理由なんてなかった。ただ気付けば隣にいた。
気付けば、俺はお前に恋をしていた。
でも、俺はまだこの関係を名前で呼べないままでいる。
翔「お前さ、もうちょい愛想よくした方がいいんじゃね?」
帰りのバスではそこそこ人が乗っていて少し荒い運転に自然と肩がぶつかる。
晃「は?」
翔「この前、隼が言ってたぞ。『晃がもっとニコニコしてたら、女子の告白率2割増し』って」
晃「俺別にモテたいわけじゃないし」
翔「いやモテるモテないじゃなくてさー、せっかくイケメンなのに愛想悪いのもったいねぇってこと」
晃「お前に言われたくねぇよ」
翔「俺はちゃんと笑顔振りまいてるし?」
晃「いや、それ全部営業スマイルじゃん」
翔「は? そんなことねーよ、これのどこが営業スマイルなんだよ」
にこっと笑ってみせる顔を向けられ少し赤くなっているであろう頬をわざと夕日が差す方へ逸らす
晃「うわ胡散臭…」
翔「せっかくとびきりの笑顔を作ってんだから見ろよ」
晃「つまり営業スマイルじゃねぇか」
いつもの他愛もない会話。俺はこの時間が好きだ。
けど、楽しい時間はあっという間になくなる。
「じゃ明日なー」
「おー」
ひらひらと手を振りバスを降りると眠い目でスマホを触り歩く翔。バスが進みその姿が小さくなりやがて見えなくなる。
直線が続く道で車内は穏やかな揺れに包まれていた。その心地良さにひと眠りすることにした。
卒業まであと一年。
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