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第七章「姉川の戦い」
第三十二話「髑髏の盃」
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慶長二十年五月 大坂
「この後、朝倉勢に続き浅井勢も総崩れとなり、我ら徳川織田連合軍の勝利となりもうした。しかし、この戦で浅井朝倉に決定的な痛手を与える事は出来ず、以後三年間、織田信長は両家と衝突を繰り返す事と相成り申した」
老将の話を聞いた若武者が口を開く。
「つまり、三年後に・・・」
「ええ、浅井・朝倉両家は滅亡。そして・・・」
そこで突如、老将が言葉を詰まらせる。
「何じゃ?」
不思議そうに老将を見詰める若武者。老将は、ゆっくりと口を開く。
「・・・有名な髑髏(どくろ)の盃(さかずき)でございまする」
若武者もその話を知っていたのか、急に血相を変えて生唾を飲み込む。
「織田信長は、よほど彼らの事を赦せなかったのか、浅井久政・長政親子、そして朝倉義景三名の頭蓋骨(ずがいこつ)を漆塗りにし、金粉をかけ盃にしたものを肴(さかな)に酒宴を開いたとの事・・・」
「むごいの」
若武者は一瞬顔を俯けるも、すぐに老将の方に向き直る。
「しかし、そんな人間に父を始め多くの者たちもよう付き従っていたものじゃ」
老将は切ない表情で若武者の言葉に応じる。
「織田信長も若かりし頃は、それほどでもございませんでしたが、ちょうどこの頃より残虐性が徐々に表に現れていきました。そして、次第に敵も増えていき・・・」
若武者は老将の話に聞き入る。
「元亀二年、織田信長の傀儡(かいらい)であったはずの室町幕府十五代将軍・足利義昭が暗躍し各地の反信長勢力を団結。拡大する織田勢の周囲を包囲する事と相成りました。石山本願寺に比叡山の延暦寺、三好三人衆や松永久秀、そして織田信長が最も恐れた男・・・甲斐の武田信玄」
武将の名前を聞いて、若武者は嬉々とした表情を浮かべる。
「またしてもここで最強の軍団が登場か」
若武者の表情に老将は苦笑いで応じる。
「左様。そして元亀三年、ついに武田信玄は織田信長を討つべく遠州へと進軍。それを迎え撃つは、当時織田と同盟を結んでいた我ら徳川軍・・・」
「それが、かの」
若武者の言葉に老将は頷く。
「三方ヶ原の戦いでございまする・・・」
「この後、朝倉勢に続き浅井勢も総崩れとなり、我ら徳川織田連合軍の勝利となりもうした。しかし、この戦で浅井朝倉に決定的な痛手を与える事は出来ず、以後三年間、織田信長は両家と衝突を繰り返す事と相成り申した」
老将の話を聞いた若武者が口を開く。
「つまり、三年後に・・・」
「ええ、浅井・朝倉両家は滅亡。そして・・・」
そこで突如、老将が言葉を詰まらせる。
「何じゃ?」
不思議そうに老将を見詰める若武者。老将は、ゆっくりと口を開く。
「・・・有名な髑髏(どくろ)の盃(さかずき)でございまする」
若武者もその話を知っていたのか、急に血相を変えて生唾を飲み込む。
「織田信長は、よほど彼らの事を赦せなかったのか、浅井久政・長政親子、そして朝倉義景三名の頭蓋骨(ずがいこつ)を漆塗りにし、金粉をかけ盃にしたものを肴(さかな)に酒宴を開いたとの事・・・」
「むごいの」
若武者は一瞬顔を俯けるも、すぐに老将の方に向き直る。
「しかし、そんな人間に父を始め多くの者たちもよう付き従っていたものじゃ」
老将は切ない表情で若武者の言葉に応じる。
「織田信長も若かりし頃は、それほどでもございませんでしたが、ちょうどこの頃より残虐性が徐々に表に現れていきました。そして、次第に敵も増えていき・・・」
若武者は老将の話に聞き入る。
「元亀二年、織田信長の傀儡(かいらい)であったはずの室町幕府十五代将軍・足利義昭が暗躍し各地の反信長勢力を団結。拡大する織田勢の周囲を包囲する事と相成りました。石山本願寺に比叡山の延暦寺、三好三人衆や松永久秀、そして織田信長が最も恐れた男・・・甲斐の武田信玄」
武将の名前を聞いて、若武者は嬉々とした表情を浮かべる。
「またしてもここで最強の軍団が登場か」
若武者の表情に老将は苦笑いで応じる。
「左様。そして元亀三年、ついに武田信玄は織田信長を討つべく遠州へと進軍。それを迎え撃つは、当時織田と同盟を結んでいた我ら徳川軍・・・」
「それが、かの」
若武者の言葉に老将は頷く。
「三方ヶ原の戦いでございまする・・・」
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