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由貴くんをデートに誘いたい。
映画に行ったりランチしたり特に目的もなく街をぶらぶら歩き回ったりしたい。
冬の入口。少しずつ肌寒くなってきた。
だから人恋しくなったというわけではないけれど、僕は由貴くんと(修学旅行を除けば)デートというものを一度もしたことがないのである。
しかしそれには訳があった。
由貴くんはめちゃくちゃ忙しいのだ。
バスケ部では副キャプテン兼マネージャー。大学進学後の生活費を稼ぐため、アルバイトには今まで以上に力を入れている。もちろん勉強も人並み以上にやっているし、それからお母さんが遅くなる日は自分と穂乃果ちゃんのぶんの夕食まで用意しているみたい。
いやいやいや、冗談ではない。
もうデート云々の問題じゃない。
僕だったら過労死しているかもしれない。
「由貴くん、次ヒマなのいつ!?」
ある日の学校からの帰り道、僕は由貴くんに詰め寄った。
「うーん……」
彼はスマホのスケジュールアプリを立ち上げる。
「再来週の日曜が空いてる」
そこで彼はハッとして僕に笑顔を向けた。
「秋人、デート行く?」
「行きません!」
「えっ?」
まさか断られるとは思っていなかったのだろう、彼は驚いて目を見開いている。
「デートには行かない! その日は一日中しっかり休んで。労働も勉強もしちゃダメだからね!」
「もしかして俺のこと心配してくれてんの? 俺身体丈夫だから大丈夫だよ。それより秋人とデートしたい」
「ダメです! 成瀬由貴・労働勉強基準法に抵触しなくなるまでデートには行かないから!」
「どういう基準だよ」
「僕が定めた基準。いい? 若いからって無茶しすぎはダメだよ。あとで取り返しのつかないことになるよ」
「お前はいくつだよ」
由貴くんはハァと息をついた。
「ホントに大丈夫なのに。……でもまぁ、秋人の言うことも一理あるから休むことにする」
「うんうん」
「……あっ、じゃあ『お家デート』にしない?」
「『お家デート』?」
思わず顔が赤くなったのは、僕がその響きに少なからず下心を持っているせいだろう。
由貴くんにそんなつもりはないのかもしれないけれど、万が一そういう流れになれば僕は由貴くんを休ませてあげられない。
……僕は由貴くんを休ませてあげられない、って変な表現だな。
「お、お家デートって何するの?」
「一緒に映画見たり、料理作って食べたり、ゲームしたり……」
……なるほど、それならいいかもしれない。
ゆっくりのんびり過ごせそうだ。
後は僕の采配でそういう雰囲気にならないよう気をつければいい。
流されるなよ、僕。
「いいね。お家デートにしよう」
「よしっ」
由貴くん、めちゃくちゃ喜んでる。可愛すぎないだろうか。
「……ぼ、僕の家来てみる? 前は由貴くんの家にお邪魔させてもらったし」
「あぁ。行きたい」
「親いるけどいい?」
「いいよ、もちろん。秋人は俺と付き合ってること伝えてあんの?」
「恋人ができたとは伝えてる……」
「じゃあ挨拶も兼ねて行こうかな」
イケメンに弱い僕の母さん、由貴くんを見て卒倒しないだろうか。しかも息子の恋人だなんて。
それだけが心配だけど、親がいるならまさかまさかそういう雰囲気になることはないだろう。
……って僕、逆に意識しすぎだ。
映画に行ったりランチしたり特に目的もなく街をぶらぶら歩き回ったりしたい。
冬の入口。少しずつ肌寒くなってきた。
だから人恋しくなったというわけではないけれど、僕は由貴くんと(修学旅行を除けば)デートというものを一度もしたことがないのである。
しかしそれには訳があった。
由貴くんはめちゃくちゃ忙しいのだ。
バスケ部では副キャプテン兼マネージャー。大学進学後の生活費を稼ぐため、アルバイトには今まで以上に力を入れている。もちろん勉強も人並み以上にやっているし、それからお母さんが遅くなる日は自分と穂乃果ちゃんのぶんの夕食まで用意しているみたい。
いやいやいや、冗談ではない。
もうデート云々の問題じゃない。
僕だったら過労死しているかもしれない。
「由貴くん、次ヒマなのいつ!?」
ある日の学校からの帰り道、僕は由貴くんに詰め寄った。
「うーん……」
彼はスマホのスケジュールアプリを立ち上げる。
「再来週の日曜が空いてる」
そこで彼はハッとして僕に笑顔を向けた。
「秋人、デート行く?」
「行きません!」
「えっ?」
まさか断られるとは思っていなかったのだろう、彼は驚いて目を見開いている。
「デートには行かない! その日は一日中しっかり休んで。労働も勉強もしちゃダメだからね!」
「もしかして俺のこと心配してくれてんの? 俺身体丈夫だから大丈夫だよ。それより秋人とデートしたい」
「ダメです! 成瀬由貴・労働勉強基準法に抵触しなくなるまでデートには行かないから!」
「どういう基準だよ」
「僕が定めた基準。いい? 若いからって無茶しすぎはダメだよ。あとで取り返しのつかないことになるよ」
「お前はいくつだよ」
由貴くんはハァと息をついた。
「ホントに大丈夫なのに。……でもまぁ、秋人の言うことも一理あるから休むことにする」
「うんうん」
「……あっ、じゃあ『お家デート』にしない?」
「『お家デート』?」
思わず顔が赤くなったのは、僕がその響きに少なからず下心を持っているせいだろう。
由貴くんにそんなつもりはないのかもしれないけれど、万が一そういう流れになれば僕は由貴くんを休ませてあげられない。
……僕は由貴くんを休ませてあげられない、って変な表現だな。
「お、お家デートって何するの?」
「一緒に映画見たり、料理作って食べたり、ゲームしたり……」
……なるほど、それならいいかもしれない。
ゆっくりのんびり過ごせそうだ。
後は僕の采配でそういう雰囲気にならないよう気をつければいい。
流されるなよ、僕。
「いいね。お家デートにしよう」
「よしっ」
由貴くん、めちゃくちゃ喜んでる。可愛すぎないだろうか。
「……ぼ、僕の家来てみる? 前は由貴くんの家にお邪魔させてもらったし」
「あぁ。行きたい」
「親いるけどいい?」
「いいよ、もちろん。秋人は俺と付き合ってること伝えてあんの?」
「恋人ができたとは伝えてる……」
「じゃあ挨拶も兼ねて行こうかな」
イケメンに弱い僕の母さん、由貴くんを見て卒倒しないだろうか。しかも息子の恋人だなんて。
それだけが心配だけど、親がいるならまさかまさかそういう雰囲気になることはないだろう。
……って僕、逆に意識しすぎだ。
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