働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

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第二十三話 現代チート

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 日本の知識を生かして、素人が異世界で簡単に大儲けが出来るのか? 答えは否である。リバーシという遊具を、異世界で広めることを例で考えてみよう。まずは白黒の駒を六十四枚用意する。簡単に作れそうだが、板から丸い駒を一つ切り抜くことさえ難しい。青いロボットのドワーフ右衛門、略してドワえもんに丸投げで解決するしかない。ドワえもんがいなければ、紙で作ったリバーシーを商人に見せて、これは素晴らしい遊具だと感心させてアイデアを売る。

 しかし、リバーシを作ったところで、資金力がなければ模倣した商品に駆逐されてしまう。商人にアイデアを見せたらもっとたちが悪い。これは元々私が考えた物ですと言い切られれば、後ろ盾のない元日本人などだれも相手にしないだろう。

 現代知識チートを使い、勝ち組ルートなんてまやかしだと、今日もせっせと薬草狩りにいそしむ。しかし、これなら一人でも使えそうだという現代知識チートを暖めてはいた。そのチートアイテムをようやく手に入れた。

 それは魚を捕らえるための魚網である。そのままでは使えないので、高さを一メートル半ほど長さを十メートルと、バレーボールのネットのような一枚の網に仕上げる。

 地面に杭を打ちつけ、網を支柱に結びつけ拡げて作った罠――鳥を捕まえる『かすみ網・・・・』。この罠の仕組みは簡単である。足で網をつかんだ鳥は、足の構造状上手く飛び立つことが出来ず網に絡まるという仕掛け。現代日本では禁止されているチート仕掛けである。

 かすみ網を仕掛けた翌日、ワクワクしながら山には入る。罠をのぞくと獲物は一羽も掛かっていない。大量に掛かっている鳥を想像していた自分に苦笑する。仕掛けた場所の上空で山鳥が飛んでおり、網を設置した場所は決して悪くはないと感じた。数日間、鳥が捕れていると期待しながら、罠をのぞくがさっぱりな結果。やはり素人が作った、なんちゃってかすみ網での、狩猟は無理かと心が折れかかる。そこでダメ元で罠の周りにパン粉を撒いて帰路につく。

 今日も駄目かと思いつつ、罠をのぞくと網の様子が少し違う。俺が罠に近づくとバタバタと網が揺れる。鳥が網に絡まっている! 鳩を少し小さくした野鳥が網の中で藻掻いていた。ここから無双が始まるのを夢見て、捕まえた鳥を家に持ち帰る。

 翌日、捕まえた鳥を籠に入れかすみ網の前に置く。籠の中で鳴く鳥をおとりにする。心もそぞろに薬草狩りを一日続けた。帰り道、かすみ網をのぞくと心臓が止まりかけた――網に十匹近い鳥が引っ掛かっていた。無双を狙って仕掛けた罠だが、実際網に掛かった鳥を見るとドン引きした。

 この数日、鳥の羽をむしるのに飽きるぐらい大猟が続く。人に任せるとこの罠が知られるのが怖いので一人で作業をこなす。本格的に網を大きくして商いできる可能性は見えてきた。そこで一度、網をたたむことを鳥の羽をむしりながら決めた。

 いつものようにかすみ網を覗くと様子が違う! いや、かすみ網が杭に掛かっていない。そこにあったのは地面の下で、網にからまって藻掻いている茶色い動物だった。そのからまった網から『グエーグエー』と鳴き声がした。恐る恐る近づくと網には、一メートルほどの鴨の化け物が苦しそうに網で藻掻いていた。一瞬、某ゲームのダチョウに似た鳥のように乗れる気がしたが、俺が近づくと威嚇してくる。どう見ても慣れそうもない野獣であった。とりあえず薙刀で絞めてギルドに持ち帰ることにした。

「またすげーもん拾ってきたもんだ」

 ソリに乗せた鳥を見て、オットウが俺の肩を叩く。

「そらー捨てられていたら拾うっしょ!」

 野次馬たちがそれを聞いて笑う。この鳥はズバダという怪鳥で、よほど弓が上手くないと狩ることは出来ないらしい。肉が美味しく高値で買い取られると聞き、査定を楽しみにする。

 ギルドに持ち込むと金貨二枚に代わった。網は使い物にならなくなったが大きな黒字で助かる。もしこれが小鬼であったら目も当てられなかっただろう。

 家に帰る途中、ソリの上に乗せた籠の中からピヨヨヨヨーと小鳥が鳴いた。この数日かすみ網で捕まえた鳥を思い出す。このまま罠を大きくして金を稼ぐ自分を想像した。いつの間にか世間に広がるかすみ網猟。沢山の渡り鳥が冒険者の手で捕まえられる。そして数万匹いた渡り鳥が消えてしまう。そんな未来を頭から消そうとするが中々消えない。当たり前の話だ……かすみ網がどうして日本で禁止になったのか? ということを考えれば子供でも答えが分かる。

 はっきりいって選り好みしてお金を稼げる身分ではない。汚いことをしても金は欲しい。しかし、この仕事を大きくして自分が納得できるか考えてしまう。ソリに乗った籠を持ち上げじっと鳥を見つめた。

 小鳥は自分の未来を知ってか知らずか『ピヨヨヨヨー』と鳴いた

 俺は籠を開け、小鳥を空に解き放った――
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