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第九十七話 来訪者
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王都から帰って数日後、玄関の呼び鈴が鳴った。
「テトラの仕事だろ」
誰もいないリビングに向かって声を掛け苦笑する。ベッドから重い腰を上げて、玄関の扉を開けにいった。扉を開くと若い金髪のエルフが立っていた。
エルフ皇国で、お腹一杯のエルフを見て来たので珍しくはなかったが、我が家に訪れるエルフは二人しかいない。玄関先に立つエルフの、成長しきった胸をガン見しながら少し残念に思った。
こんなとこに突っ立てないで、早く中に入れよチェルシー婆さん
そう言って、彼女を家に招き入れた。
「つまんない男じゃの……何故、直ぐに分かったのじゃ?」
俺は彼女をテーブルに座らせ、お茶と焼き菓子を差し出した。
「俺の家を知ってるエルフは三人しかいない。消去法で婆さんが残る。ここから質問の答えだが、たまにキャハハと高い声で笑うのに気付いていたか?」
「それだけで、わしと決めつけるのは早計じゃの」
「飯をあれだけ食う婆は、この世にそうそういないよな。そしてここが決め手なんだが、婆さんを若いと仮定すると、クレハンがここに永住した答えが簡単に出るのよ。男は皆スケベだし。しかも、俺は爺さんからチェルシーを一度も紹介されたことはないからな。これだけ美人さんだと、俺に寝取られるって考えてもおかしくはないと思っただけさ」
「キャハハハハハ、それうける!!」
のじゃ言葉のない彼女は、二十歳を過ぎても制服を着るギャルに思えた。
「で、なぜ今まで歩けない振りを続けていたかは、トンと分からん」
「さすがのお前でも分からないか」
「ああ、答えが知りたい」
「簡単な事よ、テトラを助けたお礼に、皇国のエルフがクスリを持ってきてくれたの。それで、おっちゃんに感謝を伝えに来たわけ」
「そうだったのか……本当は俺が先にお礼を言うべきだったのに恥ずかしい限りだ」
「あれは金貨二十枚の契約だったじゃない」
「ああ、それでもあんたに教わった魔法で俺たちは救われた」
あまりに率直な言葉に、彼女の身体が少し震える。しかしそれに気づかれたくはなかったので、口調をわざと変えた。
「では、お互い救われたので帳消しじゃの」
「その顔で老人語をつけられると気持ちが悪いんだが」
「それは悪かったのう」
チェルシーはくつくつと笑いを洩らした。この糞エルフ、わざと言いやがった。
「せっかく家に来てくれたから、飯でも食べていくか」
少々投げやりに、チェルシーを食事に誘った。
「そうしてわしもパクリと食べるつもりじゃな」
ニヤニヤしながら、俺の顔を覗く。
「クレハンと兄弟になるつもりは毛頭ない」
そう言ってから、二人で下卑た笑いをした。
俺はチェルシーとテトラを酒の肴にお酒が進む。酒で少し赤みがかった肌をした彼女に邪な気持ちを持つなという方が無理だったが……。
酒を酌み交わしながらながら、二人は夜が更けても会話を続ける。
「一つだけ教えて欲しいことがある」
俺は心の凝りを酒の力を借りて、彼女に直接ぶつけてみることにした。
「何なりと言っとくれ」
邪な気持ちが三百パーセント減退した……
「テトラに転移魔法を教えなかったのは何故だ?」
少しだけ間を置いてから、チェルシーが俺の疑念に答える。
「私が知らないといったら納得出来るわけ無いわね……。簡単に言ったらあの魔法を彼女に与えるのは早すぎると考えたの。転移魔法は使い方によっては、無敵に近いと思わない?」
「だからこそ、あの魔法があれば楽に旅が出来たと思うぞ」
「そこよ! 老婆心ながら、強力な魔法が彼女の成長を、阻害するとは考えない?」
「確かに……俺目線で考えれば使い勝手の良い魔法だが、おこちゃまには危険すぎるかもな」
「その通り! でもあの子の才能ならすぐに覚えちゃいそうだけどね」
俺は彼女に鍵を渡したことを少しだけ後悔し、恥ずかしながら期待もしてしまった。
この流れで、どうして俺たちを転移魔法でエルフ皇国に送ってくれなかったのか? と、聞こうとして止める。どうせ、はぐらかされるだろうし、この質問は愚問だと思い口にはしなかった。
「テトラの仕事だろ」
誰もいないリビングに向かって声を掛け苦笑する。ベッドから重い腰を上げて、玄関の扉を開けにいった。扉を開くと若い金髪のエルフが立っていた。
エルフ皇国で、お腹一杯のエルフを見て来たので珍しくはなかったが、我が家に訪れるエルフは二人しかいない。玄関先に立つエルフの、成長しきった胸をガン見しながら少し残念に思った。
こんなとこに突っ立てないで、早く中に入れよチェルシー婆さん
そう言って、彼女を家に招き入れた。
「つまんない男じゃの……何故、直ぐに分かったのじゃ?」
俺は彼女をテーブルに座らせ、お茶と焼き菓子を差し出した。
「俺の家を知ってるエルフは三人しかいない。消去法で婆さんが残る。ここから質問の答えだが、たまにキャハハと高い声で笑うのに気付いていたか?」
「それだけで、わしと決めつけるのは早計じゃの」
「飯をあれだけ食う婆は、この世にそうそういないよな。そしてここが決め手なんだが、婆さんを若いと仮定すると、クレハンがここに永住した答えが簡単に出るのよ。男は皆スケベだし。しかも、俺は爺さんからチェルシーを一度も紹介されたことはないからな。これだけ美人さんだと、俺に寝取られるって考えてもおかしくはないと思っただけさ」
「キャハハハハハ、それうける!!」
のじゃ言葉のない彼女は、二十歳を過ぎても制服を着るギャルに思えた。
「で、なぜ今まで歩けない振りを続けていたかは、トンと分からん」
「さすがのお前でも分からないか」
「ああ、答えが知りたい」
「簡単な事よ、テトラを助けたお礼に、皇国のエルフがクスリを持ってきてくれたの。それで、おっちゃんに感謝を伝えに来たわけ」
「そうだったのか……本当は俺が先にお礼を言うべきだったのに恥ずかしい限りだ」
「あれは金貨二十枚の契約だったじゃない」
「ああ、それでもあんたに教わった魔法で俺たちは救われた」
あまりに率直な言葉に、彼女の身体が少し震える。しかしそれに気づかれたくはなかったので、口調をわざと変えた。
「では、お互い救われたので帳消しじゃの」
「その顔で老人語をつけられると気持ちが悪いんだが」
「それは悪かったのう」
チェルシーはくつくつと笑いを洩らした。この糞エルフ、わざと言いやがった。
「せっかく家に来てくれたから、飯でも食べていくか」
少々投げやりに、チェルシーを食事に誘った。
「そうしてわしもパクリと食べるつもりじゃな」
ニヤニヤしながら、俺の顔を覗く。
「クレハンと兄弟になるつもりは毛頭ない」
そう言ってから、二人で下卑た笑いをした。
俺はチェルシーとテトラを酒の肴にお酒が進む。酒で少し赤みがかった肌をした彼女に邪な気持ちを持つなという方が無理だったが……。
酒を酌み交わしながらながら、二人は夜が更けても会話を続ける。
「一つだけ教えて欲しいことがある」
俺は心の凝りを酒の力を借りて、彼女に直接ぶつけてみることにした。
「何なりと言っとくれ」
邪な気持ちが三百パーセント減退した……
「テトラに転移魔法を教えなかったのは何故だ?」
少しだけ間を置いてから、チェルシーが俺の疑念に答える。
「私が知らないといったら納得出来るわけ無いわね……。簡単に言ったらあの魔法を彼女に与えるのは早すぎると考えたの。転移魔法は使い方によっては、無敵に近いと思わない?」
「だからこそ、あの魔法があれば楽に旅が出来たと思うぞ」
「そこよ! 老婆心ながら、強力な魔法が彼女の成長を、阻害するとは考えない?」
「確かに……俺目線で考えれば使い勝手の良い魔法だが、おこちゃまには危険すぎるかもな」
「その通り! でもあの子の才能ならすぐに覚えちゃいそうだけどね」
俺は彼女に鍵を渡したことを少しだけ後悔し、恥ずかしながら期待もしてしまった。
この流れで、どうして俺たちを転移魔法でエルフ皇国に送ってくれなかったのか? と、聞こうとして止める。どうせ、はぐらかされるだろうし、この質問は愚問だと思い口にはしなかった。
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