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第百十八話 ババンババンバンバン【アビバビバビバ】
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「朝まで付き合ってくれてありがとな」
ソラを抱きながら、テレサとルリに向け深々と頭を下げた。
「水くさい奴だな……頭を下げるなんてしないでくれ」
「謝るのは駄目」
「私たちはこのまま仕事に行くので、ソラちゃんを無事に家まで届けるんだぞ」
そう言って、テレサは悪戯っぽく笑った。
「まだ時間はあるから、家に帰って仮眠でも取ればいいじゃないか」
「詰め所には仮眠室もあるので大丈夫だ」
「ルリはこの後、仕事が続くんだろ?」
「数日ぐらい徹夜が続いても問題ない。ただ、プリンとアイスが食べられないのは残念」
「帰ってきたら、幾らでも作ってやるさ」
俺は笑って答えて、二人とギルドの前で別れることにした。腕の中でぐったりとしていたソラに声を掛ける。
「さあ我が家に帰るとするか」
「クキュ~~ッ」
絞り出すような声でソラが返事を返してきた。昨夜はギルドから家まで帰るのに、あんなに遠いと感じた道のりが、嘘のように近く感じた。ソラを抱えている分重いはずが、この重さに安心感さえ覚える。
我が家に着いたのでソラの足を拭こうとしたが、身体は泥で汚れて真っ黒になっていた。昨日の残り湯が残っていたので、そのまま火を入れて風呂に入る準備をした。リビングでソラを膝に乗せ、お風呂のお湯が沸くのをのんびりと待つ。
いつもなら身体を洗われるのが苦手のソラが抵抗もしない。俺はソラの身体をお湯で流すと、身体から真っ黒な水が流れ出た。昨日はさぞ山の中を走り回ったんだろうなとソラを優しく見つめた。身体の汚れは取れ、いつものエメラルドグリーンの光沢ある鱗が戻ってきた。俺はソラの身体を拭いてお風呂場から出そうとした。
「キュキュキューーー」
ソラが甘えるように鳴き出し、風呂場から一向に出ようとしない。普段は身体を洗うと、風呂場から逃げるように飛び出して、ストレスを発散するかのように部屋中を走り回っていた。俺は聞き分けのないソラを床に置いて、自分の身体を洗うことにする。ソラは床に這いつくばりながら、俺の身体が泡まみれになるのを不思議そうな顔をして眺めていた。
「ふ~~~~疲れたぁ~~~」
浴槽に肩まで浸かると、昨日からの疲れが全部とれる。ソラは自分も風呂に入れろとばかりに湯船をカリカリと掻いた。俺は風呂の温度を心配して無視をしていたが、今度は「キューキュー」と大声で鳴き出したので尻尾からゆっくり、湯船の中にソラを沈めてみる。ソラは俺の柔肌にギュッと爪を立てしがみついてきた。
「イタタタタッ」
俺はソラを身体から離し、もう一度ソラを浮かべるように支えた。暫くするとお湯に慣れたのか、尻尾を左右に振りながら泳ぎだした。泳ぐといっても身体数個分の浴室の間を、プカプカと浮いている感じなだけなのだが……。どうやら熱さには耐性があるらしく、風呂から出ようとはしない。ただ、のぼせてしまうと一大事なので、まだ俺の身体は完全に温もっては居ないが、風呂から上がることにした。
ソラの身体を拭くときには、もう死体のように全身の力が抜けて眠っていた。俺も身体を拭いてベッドに直行した。
俺はソラと布団に入るやいなや泥のように眠りについた――
* * *
寝るのにも体力がいる。二十四時間眠り続けていると思ったら、まだ夕方にもなっていなかった。それでも熟睡したので、疲労は殆ど抜けていた。ベッドから抜け出ると、お腹がググーッと鳴る。昨日の昼から丸一日、水以外を口にしていないことに気が付き苦笑する。いつもならお腹がすいて起こしてくれるソラが、まだベッドの中でピクリとも動かず眠っている。
俺は台所に行き、野菜と肉を炒めて簡単な昼食を作り始めた。フライパンから肉の焼ける香ばしい臭いが鼻に入る。そこにソースをかけるとジューという音と香りが部屋中に広がった。するといつのまにかソラが足下で「キューキュー」鳴き声を出していた。さっきまで起きる気配さえなかったのに、臭いに釣られて起きる食いしん坊だ……。
ソラの食器に野菜と生肉を山盛りに乗せ、野菜炒めと一緒にテーブルまで運んだ。ソラはいつもより五月蠅いぐらいに鳴きながらご飯をねだった。こいつも迷子になって何も食べていないと思うと、今更ながら震えが来た。
遅い昼食を取った俺は、出かけることにした。
ギルドの近くの大通をソラを連れて歩く。低級冒険者御用達の道具屋に入る
「へい、いらっしゃい!」
寿司屋の店主のような挨拶を、道具屋の親父にされた。
「先日、こいつがリードから抜け出してしまったので、少し見てくれないか」
「えっ!? リードから抜け出るほどちゃちな作りはしていないはずだが」
ソラに付いているリードを見ながら
「特に外れる感じはないんだが……」
「ソラ、こいつを外せるか?」
リードをぐいっときつく引っ張った。
「キュキュー」
「このトカゲ言葉が分かるのか」
親父は自分で言った冗談に笑った。
ソラは身体をくねりだしリードの留め具が徐々に緩んでいく。やがて前足に固定されていたリードが緩んで、ソラはリードから簡単に抜け出した。その様子を見ていた親父はかなり驚いている。
「こいつの力は思った以上に強いな! 普通なら留め具が緩むことはないが、力負けしてしまってたのは俺のミスだ」
彼はリードを触りながら、問題のありそうな部分を入念にチェックしていた。
「俺が留め具を壊したなどと、疑わないで欲しい」
「わかっとるわい」
金具を調整しながら、リードの強度を確かめる。
「これで抜け出ることはないはずだ」
そう言って、ソラにリードを付け直した。
「ソラ外せるか?」
「キュピピピーー」
ソラは身体を動かしながら、リードを外そうと身体をくねらす。暫くして外すことを諦める。
「本当に人間の言葉を理解してるのかよ!!」
「ソラは賢いからな。リードの調整費は幾らだ?」
「銀貨四枚だ」
「こういうときは俺のミスだから、ただにするんじゃねーのか!!」
「低級冒険者を相手に商売しているので、稼ぎの良い奴から少しぐらい金を貰っても罰はあたらんだろ」
道具屋の親父は豪快に笑った。
ソラを抱きながら、テレサとルリに向け深々と頭を下げた。
「水くさい奴だな……頭を下げるなんてしないでくれ」
「謝るのは駄目」
「私たちはこのまま仕事に行くので、ソラちゃんを無事に家まで届けるんだぞ」
そう言って、テレサは悪戯っぽく笑った。
「まだ時間はあるから、家に帰って仮眠でも取ればいいじゃないか」
「詰め所には仮眠室もあるので大丈夫だ」
「ルリはこの後、仕事が続くんだろ?」
「数日ぐらい徹夜が続いても問題ない。ただ、プリンとアイスが食べられないのは残念」
「帰ってきたら、幾らでも作ってやるさ」
俺は笑って答えて、二人とギルドの前で別れることにした。腕の中でぐったりとしていたソラに声を掛ける。
「さあ我が家に帰るとするか」
「クキュ~~ッ」
絞り出すような声でソラが返事を返してきた。昨夜はギルドから家まで帰るのに、あんなに遠いと感じた道のりが、嘘のように近く感じた。ソラを抱えている分重いはずが、この重さに安心感さえ覚える。
我が家に着いたのでソラの足を拭こうとしたが、身体は泥で汚れて真っ黒になっていた。昨日の残り湯が残っていたので、そのまま火を入れて風呂に入る準備をした。リビングでソラを膝に乗せ、お風呂のお湯が沸くのをのんびりと待つ。
いつもなら身体を洗われるのが苦手のソラが抵抗もしない。俺はソラの身体をお湯で流すと、身体から真っ黒な水が流れ出た。昨日はさぞ山の中を走り回ったんだろうなとソラを優しく見つめた。身体の汚れは取れ、いつものエメラルドグリーンの光沢ある鱗が戻ってきた。俺はソラの身体を拭いてお風呂場から出そうとした。
「キュキュキューーー」
ソラが甘えるように鳴き出し、風呂場から一向に出ようとしない。普段は身体を洗うと、風呂場から逃げるように飛び出して、ストレスを発散するかのように部屋中を走り回っていた。俺は聞き分けのないソラを床に置いて、自分の身体を洗うことにする。ソラは床に這いつくばりながら、俺の身体が泡まみれになるのを不思議そうな顔をして眺めていた。
「ふ~~~~疲れたぁ~~~」
浴槽に肩まで浸かると、昨日からの疲れが全部とれる。ソラは自分も風呂に入れろとばかりに湯船をカリカリと掻いた。俺は風呂の温度を心配して無視をしていたが、今度は「キューキュー」と大声で鳴き出したので尻尾からゆっくり、湯船の中にソラを沈めてみる。ソラは俺の柔肌にギュッと爪を立てしがみついてきた。
「イタタタタッ」
俺はソラを身体から離し、もう一度ソラを浮かべるように支えた。暫くするとお湯に慣れたのか、尻尾を左右に振りながら泳ぎだした。泳ぐといっても身体数個分の浴室の間を、プカプカと浮いている感じなだけなのだが……。どうやら熱さには耐性があるらしく、風呂から出ようとはしない。ただ、のぼせてしまうと一大事なので、まだ俺の身体は完全に温もっては居ないが、風呂から上がることにした。
ソラの身体を拭くときには、もう死体のように全身の力が抜けて眠っていた。俺も身体を拭いてベッドに直行した。
俺はソラと布団に入るやいなや泥のように眠りについた――
* * *
寝るのにも体力がいる。二十四時間眠り続けていると思ったら、まだ夕方にもなっていなかった。それでも熟睡したので、疲労は殆ど抜けていた。ベッドから抜け出ると、お腹がググーッと鳴る。昨日の昼から丸一日、水以外を口にしていないことに気が付き苦笑する。いつもならお腹がすいて起こしてくれるソラが、まだベッドの中でピクリとも動かず眠っている。
俺は台所に行き、野菜と肉を炒めて簡単な昼食を作り始めた。フライパンから肉の焼ける香ばしい臭いが鼻に入る。そこにソースをかけるとジューという音と香りが部屋中に広がった。するといつのまにかソラが足下で「キューキュー」鳴き声を出していた。さっきまで起きる気配さえなかったのに、臭いに釣られて起きる食いしん坊だ……。
ソラの食器に野菜と生肉を山盛りに乗せ、野菜炒めと一緒にテーブルまで運んだ。ソラはいつもより五月蠅いぐらいに鳴きながらご飯をねだった。こいつも迷子になって何も食べていないと思うと、今更ながら震えが来た。
遅い昼食を取った俺は、出かけることにした。
ギルドの近くの大通をソラを連れて歩く。低級冒険者御用達の道具屋に入る
「へい、いらっしゃい!」
寿司屋の店主のような挨拶を、道具屋の親父にされた。
「先日、こいつがリードから抜け出してしまったので、少し見てくれないか」
「えっ!? リードから抜け出るほどちゃちな作りはしていないはずだが」
ソラに付いているリードを見ながら
「特に外れる感じはないんだが……」
「ソラ、こいつを外せるか?」
リードをぐいっときつく引っ張った。
「キュキュー」
「このトカゲ言葉が分かるのか」
親父は自分で言った冗談に笑った。
ソラは身体をくねりだしリードの留め具が徐々に緩んでいく。やがて前足に固定されていたリードが緩んで、ソラはリードから簡単に抜け出した。その様子を見ていた親父はかなり驚いている。
「こいつの力は思った以上に強いな! 普通なら留め具が緩むことはないが、力負けしてしまってたのは俺のミスだ」
彼はリードを触りながら、問題のありそうな部分を入念にチェックしていた。
「俺が留め具を壊したなどと、疑わないで欲しい」
「わかっとるわい」
金具を調整しながら、リードの強度を確かめる。
「これで抜け出ることはないはずだ」
そう言って、ソラにリードを付け直した。
「ソラ外せるか?」
「キュピピピーー」
ソラは身体を動かしながら、リードを外そうと身体をくねらす。暫くして外すことを諦める。
「本当に人間の言葉を理解してるのかよ!!」
「ソラは賢いからな。リードの調整費は幾らだ?」
「銀貨四枚だ」
「こういうときは俺のミスだから、ただにするんじゃねーのか!!」
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