働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~

山鳥うずら

文字の大きさ
218 / 229

外伝 おっちゃんは、底辺で生き抜く【前編】

しおりを挟む
「新しい荷物が到着したぞ! おめーら! もたもたしてないで、積み込みを始めろ」

 上半身に革製のタンクトップのような服を着込んだ船員が、俺たちに檄を飛ばす。今日は四回目の荷下ろしに、船が沈めば良かったのにと心の中で呪詛を吐きだした。一日にどれだけ荷物を運ぼうと、宿賃が引かれて黄銅貨6枚と銅貨3枚の日給は変わらないので、荷を運ぶ量は少ないのに超したことはない。

 ふらふらになりながら、最後の荷物を倉庫の中に運び終える。周りの運搬人は、自分の倍以上の荷を運び出していた。毎度、たった一つの袋をよたよたと運んでいるおっちゃんを、白い目で見つつ、給料泥棒と野次る。しかし俺に言わせれば、自分の日給より数倍高い給金を貰っているやつらと、最低賃金でこき使われている自分と比べられるのは、迷惑千万だと思う。まあ、向こうも本気でおっちゃんを嫌っているわけでもないので、フヒヒと笑い返すしかなかった……。

 異世界に来てから一年が経ち、漸くある程度まで意思疎通が出来るようになってきた。学生生活で六年以上英語を習っておきながら、会話の一つも無理だったことを鑑みれば、素晴らしい結果だと言えよう。しかし、ここからがスタート地点だと考えると笑うに笑えない。この底辺の生活から脱出しようと、この一年色々な情報を掻き集めたが、なんの取り柄もないおっちゃんの転職先など、何処にもあるはずはなかった。

 ただ一つ小さな光明があるとすれば、『冒険者』という命を対価に素材を集めたり、荒事に関わる依頼を受けるギルドの存在だった。ただし、ギルドに登録するにもそれなりにお金が掛かり、それ以上に現場で必要になる武器や防具を、自腹で揃えなければならない。

 物語の世界なら、ギルド職員が新米冒険者に武器や防具を貸し出すサービスがあるが、現実の職場において、仕事道具を碌にそろえられない奴に、仕事を回すお人好しなどいやしない。一応、武器屋に中古のなまくらな刀は売ってはいたが、自分の年齢からそれを使いこなせるとは思えなかった。ただ俺は薙刀を習ったことがあったので、なんとか特注でつくれば、この底辺生活から脱出来ると踏んでいた。

「師匠、今日も頼みます」

 俺は安酒の瓶を、もう頭皮の白髪もかなり抜けきった同部屋の爺さまに手渡した。

「今日も、すまんのう」

 師匠はその安酒に口を付けた。そうして酒を旨そうに飲みながら、砂が敷き詰められた木枠の中に、こちらの文字を書いて教えてくれる。俺はそれを声を出して文字を覚える。同部屋の二人は、日銭を握ったままどこかに出かけているので、気にすることなく、勉強を続ける。

『綺麗なお姉ちゃんと、パフパフしたい』『服を脱がせれば、大きなおっぱいが、ぼよよんと飛び出した』『金貨を千枚拾って憲兵に届けたら、落とし主に正直者だと感動され、娘を嫁に貰ってくれと頼まれました』――声を出して反復する。師匠は教えるのがとても上手だったので、俺の語学力はメキメキと上がる。

 それと同時に、早朝、長いこんを振ることを始めた。まだ部屋の同僚が高いびきをかいて寝ているのを横目で見て、ベッドから静かに抜け出す。

 薙刀の基本動作、上下振り、斜め振り、横振り、斜め振り下から振り返す八方振りを反復。最初は関節が堅くなって、棍を上手く動かすことが出来ずに唖然とした。昔取った杵柄を、数十年も整備していないと、これほど使い物にならなくなっているとは、思いもしなかった。身体に染みついた基本動作を、絞り出すのに半月かかる……。

 物語の主人公のように、雨の日も風の日も休まず、棍を振り続ける。否、出来ようもなく……うぅかり寝過ごしてしまって、そのまま仕事に出かける日も多々あった。それでも二年の間続けていると、身体の一部として棍を扱えるようにはなる。それなりに様にはなってきたと、自画自賛。けれども同僚たちには、健康志向の木の棒を振る変なおっちゃんだと、ここを出るまで思われていた。

 日本では酒を好んで飲むことは無かったが、この職場で神経をすり減らしながら生きていくうちに、酒で酔う意味を覚えていく。安酒を飲んでは、日々の憂さ晴らしをしていた。けれども、武具を買い揃えるという目標があると、日銭を酒に変えることは少なくなった。

 そんな最底辺の生活が三年のど経過し、俺は小銭で重くなった銭袋を抱えて武器屋の門を潜る。これから下流階級から抜け出すための第二の人生がスタートする――

 新作を書き始めました。ジャンルは違いますが、応援してくれると嬉しいです。お気に入りに登録してくれると作者は、喜びの舞を踊りますwww。

 https://www.alphapolis.co.jp/novel/613099930/158643400
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...