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難儀なカノン-4
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早いものであの調査から1週間経った。私は頭を抱えていた。魔王にも匹敵するほどの強者。ここに来ての第三勢力は聞いてない。ただでさえ魔王との停戦状態が崩れそうだと言うのに。
何か仕掛けられてからでは遅いだろう。かといって刺激するのも恐らく逆効果。
何をするにも、その事が頭を駆け巡った。それは魔道師団の訓練にも響いていたようだ。
「カノン、どうした?考え事か?」
私にそう声をかけてきたのは魔道師団長、アレス·フォレイアさんだった。現在は野外にて訓練中である。何か察したのだろう。
「い、いえ、お構い無く。」
「肩に力が入りすぎだ。お前らしくない。」
やはり、この人には何もかも見抜かれる。
「………実は、件の2人について。」
「イールとルージュか………。」
あの調査のあと、私は国王にその事を報告した。結果は現状維持が最優先とのこと。当たり前だ。触らぬ神に祟りはない。
「思うに、俺もそこまで悪い奴ではないように見える。」
「アレスさん…。」
「ただ静かに暮らしたいと、そう言っていたのだろう?」
「はい…ですが、2人の力はあまりにも強大であると。」
「仮にだけど、その2人がこちら側についてくれたらとてつもない戦力だと思わないか?」
「そう…ですが…。」
「まあ、そこは君の考えるところじゃない。まずは目の前のことに集中しなさい。」
「…はい。」
そうだ。この件に関しては私がいくら悩んだところで仕方がないのだ。なら、考えるだけ無駄である。こればかりはなるようにしかならない。
そう言い聞かせ、空を見上げた。
―――――――――――――――
――――――――――
―――――
「それで、イール様は?」
そうだった…そう言えばそのために動いてたんだった…。
「あの、お言葉ですがイールに関しては諦めたほうがよろしいかと。」
「なぜそんなことを?」
「彼の力は図り知れません。メイ様にもしものことがあったら私は………。」
どうにかしてこいつの暴走を止めなくては………この方に支えて早十数年。なかなか色々あったのだが、それでも案外楽しかった。それがなくなるのが………いやいや、解放はされる。
「私のことを心配してくれているのですね………でも大丈夫です。イール様はお優しい方ですし。」
この盲目少女めが。なぜ解らん。
「その方が、魔王並みの力を持っていることが問題なのです。現状維持でさえ大変なのにそこにイールと言う不確定要素まで持ち込んでしまえばこの国はもう………。」
そうだこれまでに私が色々とやってきたことが水の泡になる。それだけは勘弁願いたい。
「結局、貴女はそうやってこの国のことばかりじゃないですか!!私のことなんて考えてもくれずに!!」
声をあらげたメイ様を見たのはこれが初めてだった。
「メイ様………?」
「もうカノンのことなんて知りませんわ!!」
そう言うとメイ様は窓枠に足をかけ…。
「ちょ、メイ様!?」
判断が鈍った。そのタイミングで心理世界に引きずり込めば良かったものを、それが出来なかった。彼女は、飛び下りたのだ。
慌てて窓に駆け寄り下を見る。
「ああ…そうだった…。」
そこにはふわりふわりと飛んでいく彼女の姿が………。
「ああ…消えないもんだな。」
と、昔を思い出している場合ではない。とっとと探しに行かねばあの人はもしかしたら森まで行ってしまうかもしれない。もし何かあろうものならこの国は…。
「国の為………。」
思い返す。メイ様の言葉を。私はこの国のことばかりでメイ様のことは考えてなど居ない?いいや、そんなことはない………とも言いきれないのかもしれない。
ここは、今の私の居場所だ。この場所を守りたいと言うのが素直な私の気持ち。メイ様に支えたのは、彼女が私を拾ってくれたから。はっきり言おう、私はメイ様に支えて良かったと思っている。多少面倒くさいところはあるが、それでも一緒にいて信頼でき、安心する。
「探しに行くか…。」
そうして、私は気だるそうに身体を動かす。
メイ様の行動は何もかも、あの懐かしい姿に重なる。だからこそ、守りたい。今度こそ。これはチャンスなのだ。
昔の私、小春 華音は死んだ。弱いあの頃の私とは違うのだ。新しい私としてこの世界でやり直せるのだ。
そうして私、カノン·コハルはその部屋をあとにするのだった。
何か仕掛けられてからでは遅いだろう。かといって刺激するのも恐らく逆効果。
何をするにも、その事が頭を駆け巡った。それは魔道師団の訓練にも響いていたようだ。
「カノン、どうした?考え事か?」
私にそう声をかけてきたのは魔道師団長、アレス·フォレイアさんだった。現在は野外にて訓練中である。何か察したのだろう。
「い、いえ、お構い無く。」
「肩に力が入りすぎだ。お前らしくない。」
やはり、この人には何もかも見抜かれる。
「………実は、件の2人について。」
「イールとルージュか………。」
あの調査のあと、私は国王にその事を報告した。結果は現状維持が最優先とのこと。当たり前だ。触らぬ神に祟りはない。
「思うに、俺もそこまで悪い奴ではないように見える。」
「アレスさん…。」
「ただ静かに暮らしたいと、そう言っていたのだろう?」
「はい…ですが、2人の力はあまりにも強大であると。」
「仮にだけど、その2人がこちら側についてくれたらとてつもない戦力だと思わないか?」
「そう…ですが…。」
「まあ、そこは君の考えるところじゃない。まずは目の前のことに集中しなさい。」
「…はい。」
そうだ。この件に関しては私がいくら悩んだところで仕方がないのだ。なら、考えるだけ無駄である。こればかりはなるようにしかならない。
そう言い聞かせ、空を見上げた。
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「それで、イール様は?」
そうだった…そう言えばそのために動いてたんだった…。
「あの、お言葉ですがイールに関しては諦めたほうがよろしいかと。」
「なぜそんなことを?」
「彼の力は図り知れません。メイ様にもしものことがあったら私は………。」
どうにかしてこいつの暴走を止めなくては………この方に支えて早十数年。なかなか色々あったのだが、それでも案外楽しかった。それがなくなるのが………いやいや、解放はされる。
「私のことを心配してくれているのですね………でも大丈夫です。イール様はお優しい方ですし。」
この盲目少女めが。なぜ解らん。
「その方が、魔王並みの力を持っていることが問題なのです。現状維持でさえ大変なのにそこにイールと言う不確定要素まで持ち込んでしまえばこの国はもう………。」
そうだこれまでに私が色々とやってきたことが水の泡になる。それだけは勘弁願いたい。
「結局、貴女はそうやってこの国のことばかりじゃないですか!!私のことなんて考えてもくれずに!!」
声をあらげたメイ様を見たのはこれが初めてだった。
「メイ様………?」
「もうカノンのことなんて知りませんわ!!」
そう言うとメイ様は窓枠に足をかけ…。
「ちょ、メイ様!?」
判断が鈍った。そのタイミングで心理世界に引きずり込めば良かったものを、それが出来なかった。彼女は、飛び下りたのだ。
慌てて窓に駆け寄り下を見る。
「ああ…そうだった…。」
そこにはふわりふわりと飛んでいく彼女の姿が………。
「ああ…消えないもんだな。」
と、昔を思い出している場合ではない。とっとと探しに行かねばあの人はもしかしたら森まで行ってしまうかもしれない。もし何かあろうものならこの国は…。
「国の為………。」
思い返す。メイ様の言葉を。私はこの国のことばかりでメイ様のことは考えてなど居ない?いいや、そんなことはない………とも言いきれないのかもしれない。
ここは、今の私の居場所だ。この場所を守りたいと言うのが素直な私の気持ち。メイ様に支えたのは、彼女が私を拾ってくれたから。はっきり言おう、私はメイ様に支えて良かったと思っている。多少面倒くさいところはあるが、それでも一緒にいて信頼でき、安心する。
「探しに行くか…。」
そうして、私は気だるそうに身体を動かす。
メイ様の行動は何もかも、あの懐かしい姿に重なる。だからこそ、守りたい。今度こそ。これはチャンスなのだ。
昔の私、小春 華音は死んだ。弱いあの頃の私とは違うのだ。新しい私としてこの世界でやり直せるのだ。
そうして私、カノン·コハルはその部屋をあとにするのだった。
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