【短編集】何処かの誰か

るくぶる

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好きな人

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まただ。
テレビのニュースでは最近この辺りで飛び降り自殺が増えているというニュースをしていた。

しかし俺には関係のないことだ。
なぜなら
俺は最近好きな人ができたからだ。
その人はいつも俺の少し前を歩いている

朝、俺が会社に行くときも
夜、俺が自宅に帰るときも

後ろ姿しか見たことがないのだが
俺はその人の魅力にとりつかれていた。
ある時、勇気を振り絞って明日声をかけようと決心した。
なんて話しかけたらいいかな
まずは食事に誘ってみたり…
断られたらどうしよう…
そんなことを考えていたら夜も眠れなかった。
寝不足のまま会社に向かい、夜まで働き、やっと仕事が終わった。
まだ、時間はある。今日、話しかける。
会社を出ると、あの人が前を歩いている。よし。と自分に喝を入れながら彼女に近づいていく。
しかし彼女に近づくことができない。
いくら歩いても、距離が縮まらない。
しかし、俺は彼女が好きだ。
その思いで、彼女についていく。
少しづつ追いついているような気がする。
もう少しだ、もう少しだ。
彼女はビルに入っていく。
もう少しだ、もう少しだ。
彼女は階段で上に上がっている。
もう少しだ、もう少しだ。
彼女はビルの屋上に出た。
もう少しだ、もう少しだ。
その時、彼女は振り返った。
ぐちゃぐちゃに潰れた顔を歪めながら。





思った時にはもう遅かった


彼女は私を捕まえ


一緒に


ビルの屋上から










また自殺か
ニュースを見ながら自分に無関係なことだとテレビの電源を切る。


なぜなら


僕は最近好きな人ができたからだ。





その人はいつも僕の少し前を歩いている






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