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美形は神で罪です

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「う…」
「大丈夫?」

目を開ける。
見知らぬ部屋に少し困惑する。
でもその困惑はすぐに消え去った。

一瞬フリーズしてしまった。
なんと、そこには…!

「は?美形尊い。罪だわ。」

「は?あゆり何言ってんの?」

うおぉぉ!!美形が…私の…あれ?
なんで私の名前知ってんの?
こいつ…ん?

「君、ユウタ?」
「車にはねられて頭おかしくなった?」

なんとなく悲しい。
いや、でもなんで乙女ゲームのキャラがここに?

「…ってここは!?」
「知るわけねぇだろ。」

辺りを見渡す。
白い壁に床は魔法陣みたいなものが書かれた部屋。
シンプル イズ ベストか…
そして私の服が家着ではなくセーラー服に変わってる。
青い襟に青いスカート。そして赤のリボン。まさか着れるとは…

ここに来るまでの記憶を必死に思い出す。

私は、ヤンデレと苦いひとときーにがひとーをやってた。
2周目を始めたら急に誰かの声がして、眩しい光を私を襲って…
今に至る…ってとこかな?

「心中するつもりだったのに…」
「…ん?何か言った?」
「ううん、何も。」

笑顔で返されて顔が赤くなる。

(イケメン耐性ないんだってば!)

ーーコンコン、ガチャ

ドアを開ける音がする。

「まぁ、いい子ですね。転生者は」
「…お姫様?」
「いいえ、お妃ですわ。若く見られて嬉しいわ。」

濃い緑色をした髪に青い目をしていた。

姫と間違われて嬉しいのだろうか?私にはわからない。
でも…若く見えすぎっ!

「もうじき王子と王がいらっしゃいます。私には何にも出来ないのでここで失礼しますわ」
「あ、はい…」
「若いっていいですわね。では。」

淑女の礼をして帰っていった。

何しにきたんだ??

それに、ユウタと私はどういう風に見られてたのだろう。
ユウタは顔が赤らんでいた気がする。

「あ、そうよ!なんで車にひかれたのよ!」
ユウタは驚いた顔で固まっている。
「ここに来る前に心中…なんて言ってたし…」
「あ、やっぱり聞こえてたんだ」
ユウタは笑顔だった。
それが逆に怖かった。
「聞こえてるに決まってる…でしょう?」
ユウタが一歩前に進む。私は一歩下がる。
それを繰り返したら…
「なんで下がるの?」
上目遣いで顔が赤くなってしまった。
うっ…可愛いは罪よ…!

ーーとんっ

「あっ…!」

いつの間にか壁に追い詰められていた。
そして私の横に手が置かれる。
私が逃げられない状況になってしまった。

「ねぇ…もうすぐ王子とか来るって言ってたよ…」
「ふふ…そんなの関係ないと思うけど?」

だから、イケメン耐性ないんだってば!

顔が近づいて私の肩に乗っかってきた。
「ひゃっ…」
変な声出してしまった。
うおぉぉぉお!いい匂いがする!!
オタク三昧だった私にとっては行き過ぎな行為よ!

ーーコンコン

救世主が現れたわ!

そんな私を察知したのか、私の横にあった手を後ろに回す。
(なんか抱きしめられてる形になったんでけどっ!!尊い!!)

「失礼します」

(あれ?この声…聞いたことある…)

ーーガチャ

そこに現れたのは金髪碧眼の美少年王子だった。

状況を理解したのか気まずそうな顔で聞いてくる。
「…何やってるんですか?転生者様…」
「助けてっ…ください…!」
「あっ…はい…?」

とにかく私は乗り気じゃないことを証明できたと思う。
自然と力が入ってきた気がする。
息が苦しくな…って…

「苦しっ…」

王子ールネーは危険を察知したようだ。
βοήθησέ με να ανέμουかぜよたすけたまえ

風が強く吹いてきた。
(ここ室内…でも飛ばされないようにもっと力が増してるんですけどー!!)
ルネは少し考え、
「#δραπετεύω____じゆうになれ#」
と呟いた。
ユウタは何者かの力に引っ張られてようやく離れた。
「ゴホッ…」
苦しくなったのか咳が出てくる。
咳が治まりかけた頃、
「…大丈夫ですか…?」
静まり返ったこの部屋にルネの言葉が響く。
「…いいえ」
私は正直に話した。
ユウタがむくりと起き上がった。
「ねぇ、あゆり何者かに抑えられてたみたい…」
「そんなの知らないわよ!」
私はルネの方に近づく。
…なんか忘れてるような…

(あ、この世界の美形全員ヤンデレじゃん)

ルネの方にさらに近づく。
(まだ!まだ大丈夫)
そう思い、ルネの顔を見ると、どことなく顔がにやけてた気がする。
「そういや転生者を呼んだのって、聖女だけを召喚するためだったんですよねー…」
言いたいことがわかった気がする。
ユウタは不機嫌な顔で私たちを見る。
「アユリさん?でしたっけ」
「…はい」
ルネがにっこりと笑う。
「アユリさんだけが必要だったので、あなたはいりませんよ?」
ゾワッってした。
どす黒い闇の深い笑顔だった気がするから。
「さぁ、行きましょうかアユリさん」
「は、はい…」

そうして私は罠にかかってしまったことを今でも悔やんでいる。
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