奇跡の世代の「汚点」と呼ばれた男、魔法の才能がありません。

おにぎり

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二章 (ポーディングの街編)

15.依頼達成

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 トロールを倒してしばらくした後、騎士団が乗り込んで来た。レンやガラルなどの負傷者が運ばれた後、騎士団による調査が始まった。狭い横穴をもろともせず、隅々まで調査をしていく。

 ー2日後ー
 トロールが住む洞穴とゴブリンの巣が繋がっていることが確認された。4体のトロールはゴブリンの巣に迷い込み、結果的にゴブリンを支配していたようだ。
 俺がそのことを知ったのは今である。今日はゴブリン討伐の報告するために、朝からポーディング領主の元に来ている。
「ルイスよ、此度の件はご苦労であった」
 胸が痛い。今回の事件、元はと言えば俺が間違った情報を報告したせいである。
 ゴブリン・ロードの討伐を領主の名の下に宣言したポーディング様。その顔に泥を塗る結果となってしまった。

「ルイスよ、そのような顔をするでない。此度の件、先遣隊の調査不足、戦略の不足。そして何よりも私の采配のミスも原因だろう」
 領主様のその言葉に、その場にいる一同が驚いた。威厳を損ねると言う理由で、領主は自らの過ちを認めないのが常識だ。

 報告が続く。
 討伐部隊の損害について、自警団の隊長が報告をする。
 隊長によれば、自警団1班の副リーダーのガラル、隊員のレンは重度の全身火傷により意識不明。尖兵団の団長であるミーレスが全身打撲により死亡。ミーレス以外の尖兵団は行方不明。その他、Aランク冒険者の戦闘不能は15名であるらしい。
 涙を呑みながら報告する隊長に、領主様は自責の念とともに労いの言葉を与えた。


 領主様への報告を終えて、カエム商会に向かう。
 元々の依頼である、ゴブリンの笛50個を納品するためである。
 裏口から商会に入ると、そこにカエムが待っていた。涙ながらに近寄るカエムを、俺は素直に受け入れた。
「ルイス殿が……トロールと戦ったと聞いて、私は……」
 どうやら、俺が危険な目に合ったのは、自分のせいだと考えているようだ。
「気にしないでください、商会長。こうして5体満足なんですから。」

 俺がそう伝えると、大粒の涙を流して俺に抱きついた。
「あなだに命を救われたどいうのに……私はなんでごとをぉー」
 子供のように泣きじゃくるカエムをあやした後、俺は正式に依頼完了の報酬を受け取った。
 しかし、それは元の報酬の10倍ほどはあった。
「商会長!これはどういう……」
 泣き止んだカエムが自慢げに言う。
「これはだな、トロールの討伐報酬も含んでいるんだ」
 驚いた。そもそも、俺は討伐依頼を受けた覚えはないのだが……

「驚いたか?」
 見たことがない大金を前に、目が丸くなっている俺を見たカエムが言う。
「領主様が後付けで依頼を出したんだ。ゴブリンの巣の討伐に参加したものが対象だ。トロールの出現という緊急事態が発生したことが理由らしい。」

「そんなことを言われても、使い道も決めてないし、こんな大金を持ち歩くわけには……」
 俺がそう言うと、カエムは更に天狗になって言う。
「だったら我が商会に預けるといい。ありとあらゆる街にある我が商会の窓口で、いつでも金を下ろせるぞ?」
 何やら商売の匂いがプンプンするが、俺はカエムのその提案を受け入れることにした。
「毎度ありっ!」
「なんだよそれ」
 苦笑いする俺。秘書も呆れている様子でこちらを見ていた。


 夜。
 酒場に行くと、俺の話で持ち切りだった。
「隣の部屋で音聞いてたんだけどよ、マジですごかったんだぜ?」
「一体何があったんだ?」
「それがな、突然音が無くなっちまったんだよ。」
「……は?」
「音がなくなったって……お前そんなはずないだろう?」
「いやいや、それがさ、音がなくなったかと思ったら、いかづちのような音が聞こえたんだ。その直後だった!壁が崩れ落ちて、見えたんだよ!」
「見えた?何が」
が残像を残してトロールを粉々にしちまう瞬間を!」
「はぁ?お前、トロールに脳みそ食われちまったんじゃないのか?」
「そうだぞ?お前もっとマシなこと言えよ」
「本当なんだって!」

 ーーー
 なんか恥ずかしいような、腹が立つような……
 周りで聞こえる俺の噂を聴きながらビールを飲む。
 あぁ、この状況。小さい頃からの夢だったんだよなぁ。

 俺がニヤニヤしながらつまみを食べていると、隣に誰かが座った。
 いきなりのことで驚く。
 誰かが俺がいることに気がついたのだろうか。気づいて、隣に座った?なぜ……。武勇伝を聞くため……?それはそれで、困るのだが……

「ルイス……」
 女性の声だ。金色の長い髪を揺らしながら酒を飲んでいる。俺の知り合いにこんな美しい人はいただろうか。
「あなた、私のことを忘れているでしょ?」
「いや……覚えているよ」
 覚えていないが、そう答える。この街の人ではないのかもしれない。魔術大学時代の同期とか……。以前パーティを組んでいた人とか……。いや、だめだ思い出せない。

「互いの剣に誓ったでしょ?」
 その言葉で思い出す。
「お前、あの時の戦士か?」
 女はウインクをした後、俺のビールを一気に呑み干した。
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