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高鳴る鼓動
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「今日……あの店、行く?」
「うん、いいよ」
「じゃあ……仕事終わって着替えたら、メールしてくれる?」
「わかった」
「それじゃ、また後で」
「うん、後でね」
志信は軽く左手を上げて喫煙室を出ると、数歩進んだところで大きくガッツポーズをした。
(よっしゃあぁーっ!!卯月さんと約束したー!!やっぱり好きだ、大好きだー!!)
嬉しさのあまり大声で叫びたい衝動に駆られながら、志信は浮き足立って部署へと戻る。
(オレってホント単純……。さっきまであんなにヘコんでたのに、卯月さんが笑ってくれて、めちゃめちゃ嬉しい……)
志信が喫煙室を出て一人になると、薫はタバコの煙をフーッと大きく吐き出して少し笑った。
(なんか気まずいままだったから気になってたけど……ここで会えて良かった、かな)
志信が嫌いなわけじゃない。
一緒にいる事自体は、とても楽しい。
志信からの連絡がしばらく途絶えると、どうしているのかと気になっている自分がいる。
だけど、恋愛をしたいのかと聞かれても素直にうなずけないと思う。
(笠松くんとはこのままでいるのが一番いいって事かな。恋愛感情が絡むと、また失っちゃうかも知れないから……)
新しい恋に消極的な事は自分でもわかっているけれど、今はこのままでいい。
もう、恋に傷付いて泣くのはごめんだ。
(このまま何も始まらなければ、ずっと終わる事もないんだもんね……)
定時になって更衣室で着替えを済ませた薫は、ロッカーの鏡を覗き込んだ。
(あ……。今日は忙しくて走り回ってたから、化粧崩れちゃったかな……。汗かいたし……)
化粧崩れなど、いつもはあまり気にも留めないのに、なんとなく今日は気になった。
化粧と言っても、日焼け止めのリキッドファンデーションとリップクリームを軽く塗って眉を整える程度に描くだけで、他の女性社員のようにしっかりとアイメイクをしたり、チークやグロスなどを塗ったりはしない。
(どうしようかな。化粧道具も持ってきてないし……)
薫は振り返ると、梨花が着替えている事に気付き、そばに言って話し掛けた。
「長野さん、悪いけど……あぶらとり紙とファンデーション貸してくれる?」
「えっ?!」
梨花の過剰な反応に驚いた薫は、なんとなく気恥ずかしくなる。
「……やっぱりいい」
薫は急いで自分のロッカーの中の鞄を掴むと、更衣室の出口に向かって歩き出そうとした。
「待って下さい、卯月さん!いいですよ、使って下さい」
「いや、あの……」
梨花はうろたえる薫の腕に手を添えて引き留め、笑って化粧ポーチを差し出した。
「卯月さんが化粧直しなんて、珍しいですね。これからデートですか?」
「デートとかじゃないけど……。今日は走り回って汗かいたから……このままじゃ、ちょっとアレかなぁって……」
照れくさそうに歯切れの悪い返事をする薫の様子を見て、梨花はニッコリ微笑む。
「化粧、しましょうか?」
「えっ?!」
「卯月さん、いつもの薄化粧でもキレイだけど……ちゃんとしたメイクしたらもっとキレイになるのに、もったいないですよ」
「そんな事はないよ……ちゃんとしたメイクしても似合わないし、なんか恥ずかしいし……。ファンデーション直すだけでいいから……」
「そうですかぁ?絶対キレイだと思うんだけどなぁ。喜ぶと思いますよ、笠松さん」
「えぇっ?!」
(な……何言ってんの?!)
「ごめん、やっぱりいい!!お疲れ様!!」
薫は逃げるようにして足早に更衣室を出た。
思ってもいなかった事を言われ、妙にドギマギしてしまう。
(なんで私が笠松くんのために化粧する必要があるの?それに……笠松くんはそんなの喜んだりしないよ。恋人でもないのに……)
自分でそう思っておきながら、薫は『恋人』とう言葉にまた変にドキドキして、顔を真っ赤にした。
(だから……そんなんじゃないんだって……)
薫は慌てて女子トイレに飛び込むと、個室のドアをバタンと閉めてドアにもたれ、いつもより速い鼓動を抑えようとするかのように、両手を胸に当てて目を閉じた。
(もう…なんなのこれ……。長野さんが変な事言うから……)
薫は深呼吸を繰り返し、呼吸を整える。
(落ち着け私……いつも通りでいいんだから……。笠松くんはただの仲のいい同期ってだけで、別に特別なわけじゃないんだから……)
自分にそう言い聞かせ、もう一度大きく深呼吸をして個室を出ると、今度は鏡を覗き込んだ。
化粧道具を持っていないので化粧直しはできないけれど、化粧崩れに気付いているのに何もしないのは気が引ける。
薫は鞄からポケットティッシュを取り出し、小鼻や額をそっと押さえた。
(大丈夫……だよね?別におかしくないよね……?)
何をそんなにうろたえているのだろうと自分で思いながら、鞄からスマホを取り出す。
【お疲れ様。着替え終わったので、これから喫煙室に向かいます】
メールを送信して、薫はまた鏡を覗き込み、少し照れくさそうに手櫛で髪を整えてから喫煙室へ向かった。
「うん、いいよ」
「じゃあ……仕事終わって着替えたら、メールしてくれる?」
「わかった」
「それじゃ、また後で」
「うん、後でね」
志信は軽く左手を上げて喫煙室を出ると、数歩進んだところで大きくガッツポーズをした。
(よっしゃあぁーっ!!卯月さんと約束したー!!やっぱり好きだ、大好きだー!!)
嬉しさのあまり大声で叫びたい衝動に駆られながら、志信は浮き足立って部署へと戻る。
(オレってホント単純……。さっきまであんなにヘコんでたのに、卯月さんが笑ってくれて、めちゃめちゃ嬉しい……)
志信が喫煙室を出て一人になると、薫はタバコの煙をフーッと大きく吐き出して少し笑った。
(なんか気まずいままだったから気になってたけど……ここで会えて良かった、かな)
志信が嫌いなわけじゃない。
一緒にいる事自体は、とても楽しい。
志信からの連絡がしばらく途絶えると、どうしているのかと気になっている自分がいる。
だけど、恋愛をしたいのかと聞かれても素直にうなずけないと思う。
(笠松くんとはこのままでいるのが一番いいって事かな。恋愛感情が絡むと、また失っちゃうかも知れないから……)
新しい恋に消極的な事は自分でもわかっているけれど、今はこのままでいい。
もう、恋に傷付いて泣くのはごめんだ。
(このまま何も始まらなければ、ずっと終わる事もないんだもんね……)
定時になって更衣室で着替えを済ませた薫は、ロッカーの鏡を覗き込んだ。
(あ……。今日は忙しくて走り回ってたから、化粧崩れちゃったかな……。汗かいたし……)
化粧崩れなど、いつもはあまり気にも留めないのに、なんとなく今日は気になった。
化粧と言っても、日焼け止めのリキッドファンデーションとリップクリームを軽く塗って眉を整える程度に描くだけで、他の女性社員のようにしっかりとアイメイクをしたり、チークやグロスなどを塗ったりはしない。
(どうしようかな。化粧道具も持ってきてないし……)
薫は振り返ると、梨花が着替えている事に気付き、そばに言って話し掛けた。
「長野さん、悪いけど……あぶらとり紙とファンデーション貸してくれる?」
「えっ?!」
梨花の過剰な反応に驚いた薫は、なんとなく気恥ずかしくなる。
「……やっぱりいい」
薫は急いで自分のロッカーの中の鞄を掴むと、更衣室の出口に向かって歩き出そうとした。
「待って下さい、卯月さん!いいですよ、使って下さい」
「いや、あの……」
梨花はうろたえる薫の腕に手を添えて引き留め、笑って化粧ポーチを差し出した。
「卯月さんが化粧直しなんて、珍しいですね。これからデートですか?」
「デートとかじゃないけど……。今日は走り回って汗かいたから……このままじゃ、ちょっとアレかなぁって……」
照れくさそうに歯切れの悪い返事をする薫の様子を見て、梨花はニッコリ微笑む。
「化粧、しましょうか?」
「えっ?!」
「卯月さん、いつもの薄化粧でもキレイだけど……ちゃんとしたメイクしたらもっとキレイになるのに、もったいないですよ」
「そんな事はないよ……ちゃんとしたメイクしても似合わないし、なんか恥ずかしいし……。ファンデーション直すだけでいいから……」
「そうですかぁ?絶対キレイだと思うんだけどなぁ。喜ぶと思いますよ、笠松さん」
「えぇっ?!」
(な……何言ってんの?!)
「ごめん、やっぱりいい!!お疲れ様!!」
薫は逃げるようにして足早に更衣室を出た。
思ってもいなかった事を言われ、妙にドギマギしてしまう。
(なんで私が笠松くんのために化粧する必要があるの?それに……笠松くんはそんなの喜んだりしないよ。恋人でもないのに……)
自分でそう思っておきながら、薫は『恋人』とう言葉にまた変にドキドキして、顔を真っ赤にした。
(だから……そんなんじゃないんだって……)
薫は慌てて女子トイレに飛び込むと、個室のドアをバタンと閉めてドアにもたれ、いつもより速い鼓動を抑えようとするかのように、両手を胸に当てて目を閉じた。
(もう…なんなのこれ……。長野さんが変な事言うから……)
薫は深呼吸を繰り返し、呼吸を整える。
(落ち着け私……いつも通りでいいんだから……。笠松くんはただの仲のいい同期ってだけで、別に特別なわけじゃないんだから……)
自分にそう言い聞かせ、もう一度大きく深呼吸をして個室を出ると、今度は鏡を覗き込んだ。
化粧道具を持っていないので化粧直しはできないけれど、化粧崩れに気付いているのに何もしないのは気が引ける。
薫は鞄からポケットティッシュを取り出し、小鼻や額をそっと押さえた。
(大丈夫……だよね?別におかしくないよね……?)
何をそんなにうろたえているのだろうと自分で思いながら、鞄からスマホを取り出す。
【お疲れ様。着替え終わったので、これから喫煙室に向かいます】
メールを送信して、薫はまた鏡を覗き込み、少し照れくさそうに手櫛で髪を整えてから喫煙室へ向かった。
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