1 / 18
結婚式を終えた夜に 1
入籍してから3か月半が経ち、無事に挙式を終えた日の夜遅く、葉月と二人で暮らしている自宅に戻ると、ポストを覗いた葉月が俺に一通の封書を差し出した。
「志岐宛ての手紙、届いてるで」
「手紙?」
ダイレクトメールの類いかと思ったけれどそうではないらしく、封筒には丁寧な手書きの文字が並んでいる。
ネクタイをゆるめながら封筒を裏返して差出人の名前を見たけれど、北村 雅夫というその男性の名前には心当たりがない。
「知らない人だなぁ。誰だろう?」
「会社の関係者ちゃう?」
大学卒業後から勤めている祖母の会社の後継者に任命された頃から、それまで面識のなかった会社関係の人たちとの関わりが多くなったので、その可能性もあるかとは思ったけれど、どう考えてもこれは個人的な手紙に見える。
「いや、それなら社名入りの封筒で送ってくるんじゃないか?」
「そうか、それもそうやな。まぁ、開けてみたらわかるんちゃう?そんなに気になるんやったら今開けてみたら?」
差出人の正体は気になるものの、今日は結婚式と披露宴で緊張しっぱなしで、そのあと二次会に続き三次会まで開いてもらって、クタクタに疲れている。
早いとこ風呂に入ってゆっくり休みたい。
いや、その前に早くベッドの中でじっくり葉月を愛でたい気持ちの方が勝っている。
ウエディングドレスやお色直し後の青いドレスを着た葉月はとても言葉では言い表せないほど綺麗で、感極まって涙ぐむ横顔はあまりにもかわいくて、早く二人きりになって思いきり抱きしめたいとずっと思っていたのだ。
どうせもうこんな時間だし、手紙を見るのは1日くらい遅れても問題ないだろう。
「うーん……。でも今日は酒も入ってるし、頭回んないから明日でいいや。それより葉月、今日くらい一緒に風呂に入ろうよ」
二次会用に仕立てたフォーマルドレスの背中のファスナーを下ろそうとしている葉月を後ろから抱きしめると、葉月は俺の手をバチバチ叩いて振りほどこうとした。
「なに甘えたこと言うてんの」
「いいじゃん、新婚なんだし」
「恥ずかしいからお風呂はイヤやって言うてるやん」
結婚しても相変わらず恥ずかしがりやの葉月は、何度誘っても一緒に風呂に入ってはくれない。
これまで数えきれないほど裸で抱き合っているのに、一緒に風呂に入るのがなぜそんなに恥ずかしいんだろう?
「なんで?葉月の裸なら何度も見てるけど」
「それでもあかんねん!恥ずかしいもんは恥ずかしいの!」
「ふーん……やっぱ今日もダメか。じゃあ風呂から上がったらもっと恥ずかしいことしてやるから、覚悟してろよ?」
そう言ってファスナーを下ろし首筋にキスすると、葉月は真っ赤な顔をして俺を部屋から押し出した。
「志岐のアホ!スケベ!そんなん言わんでええわ!はよ風呂入れ!」
「はいはい、気が向いたら葉月も入ってきていいよ」
付き合い始めてから何年経っても恥じらう葉月は本当にかわいいなと思いながら浴室に向かった。
風呂に入って湯舟に浸かりながらぼんやりしていると、葉月と出会った頃のことや付き合い始めた頃のことを思い出した。
そして結婚式という人生に一度の晴れ舞台を無事に終えた安堵からか、葉月と出会う前のことや子どもの頃の記憶までが頭の中を駆け巡った。
おそらく俺の幼少期は、誰の目から見ても普通ではないと思うし、あまり幸せだったとは言えないだろう。
だからと言うわけでもないけれど、子どもの頃のことなど滅多に思い出すことはなかったのに、今日はやけに鮮明に記憶が蘇る。
「志岐宛ての手紙、届いてるで」
「手紙?」
ダイレクトメールの類いかと思ったけれどそうではないらしく、封筒には丁寧な手書きの文字が並んでいる。
ネクタイをゆるめながら封筒を裏返して差出人の名前を見たけれど、北村 雅夫というその男性の名前には心当たりがない。
「知らない人だなぁ。誰だろう?」
「会社の関係者ちゃう?」
大学卒業後から勤めている祖母の会社の後継者に任命された頃から、それまで面識のなかった会社関係の人たちとの関わりが多くなったので、その可能性もあるかとは思ったけれど、どう考えてもこれは個人的な手紙に見える。
「いや、それなら社名入りの封筒で送ってくるんじゃないか?」
「そうか、それもそうやな。まぁ、開けてみたらわかるんちゃう?そんなに気になるんやったら今開けてみたら?」
差出人の正体は気になるものの、今日は結婚式と披露宴で緊張しっぱなしで、そのあと二次会に続き三次会まで開いてもらって、クタクタに疲れている。
早いとこ風呂に入ってゆっくり休みたい。
いや、その前に早くベッドの中でじっくり葉月を愛でたい気持ちの方が勝っている。
ウエディングドレスやお色直し後の青いドレスを着た葉月はとても言葉では言い表せないほど綺麗で、感極まって涙ぐむ横顔はあまりにもかわいくて、早く二人きりになって思いきり抱きしめたいとずっと思っていたのだ。
どうせもうこんな時間だし、手紙を見るのは1日くらい遅れても問題ないだろう。
「うーん……。でも今日は酒も入ってるし、頭回んないから明日でいいや。それより葉月、今日くらい一緒に風呂に入ろうよ」
二次会用に仕立てたフォーマルドレスの背中のファスナーを下ろそうとしている葉月を後ろから抱きしめると、葉月は俺の手をバチバチ叩いて振りほどこうとした。
「なに甘えたこと言うてんの」
「いいじゃん、新婚なんだし」
「恥ずかしいからお風呂はイヤやって言うてるやん」
結婚しても相変わらず恥ずかしがりやの葉月は、何度誘っても一緒に風呂に入ってはくれない。
これまで数えきれないほど裸で抱き合っているのに、一緒に風呂に入るのがなぜそんなに恥ずかしいんだろう?
「なんで?葉月の裸なら何度も見てるけど」
「それでもあかんねん!恥ずかしいもんは恥ずかしいの!」
「ふーん……やっぱ今日もダメか。じゃあ風呂から上がったらもっと恥ずかしいことしてやるから、覚悟してろよ?」
そう言ってファスナーを下ろし首筋にキスすると、葉月は真っ赤な顔をして俺を部屋から押し出した。
「志岐のアホ!スケベ!そんなん言わんでええわ!はよ風呂入れ!」
「はいはい、気が向いたら葉月も入ってきていいよ」
付き合い始めてから何年経っても恥じらう葉月は本当にかわいいなと思いながら浴室に向かった。
風呂に入って湯舟に浸かりながらぼんやりしていると、葉月と出会った頃のことや付き合い始めた頃のことを思い出した。
そして結婚式という人生に一度の晴れ舞台を無事に終えた安堵からか、葉月と出会う前のことや子どもの頃の記憶までが頭の中を駆け巡った。
おそらく俺の幼少期は、誰の目から見ても普通ではないと思うし、あまり幸せだったとは言えないだろう。
だからと言うわけでもないけれど、子どもの頃のことなど滅多に思い出すことはなかったのに、今日はやけに鮮明に記憶が蘇る。
あなたにおすすめの小説
【完結】泡になった約束
山田森湖
恋愛
三十九歳、専業主婦。
夫と娘を送り出し、静まり返ったキッチンで食器を洗う朝。
洗剤の泡が立っては消えるその繰り返しに、自分の人生を重ねながら、彼女は「ごく普通」の日常を受け入れている。
愛がないわけではない。けれど、満たされているとも言い切れない。
そんな午前中、何気なく出かけたスーパーで、背後から名前を呼ばれる。
振り返った先にいたのは、かつて確かに愛した男――元恋人・佐々木拓也。
平穏だったはずの毎日に、静かな波紋が広がり始める。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました
由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。
そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。
手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。
それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。
やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。
「お前に触れていいのは俺だけだ」
逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。
これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡