ある日俺の髪の毛に兄のブラジャーが引っかかりました。

くりてぃかるひっと

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兄ちゃん…?!

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「喉乾いた…。」

眠たい体を起こして、俺はとぼとぼと水を飲みにキッチンへ足を運んだ。
コップに水を汲み、一気に飲み干し、喉を潤わせる。
そして寝ぼけ眼を擦りながらベッドへ戻ろうとした。が、すぐそこの洗濯室の窓が開いていたことに気がついたのだ。

「気付いて良かったー…」

ガタガタと音を立て、湿った空気が入り込む窓を閉めたその時…。

「いてっ」

髪の毛をぐいっと後ろに引っ張られた感覚があった。幽霊でも出たのかと思いサッと後ろを振り返ると、髪の毛が何かに引っかかっているのがわかった。

「ん…?」

よく見ると、フリルで縁取られ、真ん中に控えめなリボンが付いた、可愛らしい(のであろう)女性用下着、基、ブラジャーがぶら下がっていて、フックの部分が髪の毛と引っかかっていたのだ。

「おわっ…まずい、母さんのかな」

自分の母親はこんなにも可愛らしい(のであろう)ブラを着用するのかと、苦笑しつつもどうにか髪の毛を解こうと、吊り下がっていた物干し竿から、ブラを取った。その時。

「おまっ…なっ、なにしてっ…!!」

後ろから、大分驚いた兄の声が響いた。

「あっ、これは違うよ、その、引っかかっちゃって、」

兄に誤解を持たれては困るので、なんとか弁解(まぁ事実なんだけれど)しようと試みる。

「お前…まさか…気づいた…??」

「はい?何が?あぁ、これ?!
まぁ…確かになぁ。可愛いやつだよなぁ。以外すぎ、」

恐らく、これが自分の母親のものだということの驚きの話であろう。ここは適当に流して眠りにつきたいところではある…

「そう…だよな。やっぱ…気づいてた?…いっ…いつから?」

「今日だけど」

「あっ…じゃ、じゃあ、声とか…聞こえてた?」

「声?!いやぁ…別に…?」

「あっ…そっか、良かった、ごめん、なんでもない」

「え?うん」

「じゃ、それ返して」

「え?」

「え?」

兄は、俺の手に持っている例のブツを指さして、少し恥ずかしそうにそういうのだ。

「は?!おいおい、からかうな!  母さんのだろ、お前まさか、今晩はこれをオカズにするってのか?流石にそれは笑」

「えっ…?気づいてたんじゃ…ない…の?」

「だから何が?!母さんのだろ?これ、」

「あっ…っ……それ…は、」

「……え?…………うそ…」

「……───っ!!」

顔が一気に赤く火照った兄は、凄い勢いで部屋へ帰って行ってしまった。
まさか…まさかね?…え?
俺は、ゆっくりと物干し竿にブラを戻す。

父さん、母さん、報告があります。本日、俺の髪の毛に、兄のブラジャーが引っかかりました。



翌日。
俺は昨日のことが未だ信じられず、あれはただ夢を見ただけなのではないかと暗示をかけていた。最近抜いてなかったし、欲求不満かなにかで、あんなおかしな夢を見てしまったのだと。
なんだか重たい体を引きずり、朝食を食べようと席につく。
と、例の兄が隣の椅子を引いた。俺は昨日のことは、夢だと洗脳済みなので、ここは気軽に挨拶をする。

「おはよ」

「ぅわっ…あ、お、おはよ、」

明らかに不審だ。いや、たまたまだ。大丈夫、大丈夫。そんなわけない。大丈夫なんだ!!

「ぉ、おう」
(俺が小さな頃から憧れていた、かっこいい兄ちゃん、クラスの中心で皆と平等に仲良くしてた、優しい兄ちゃん、いつも、俺の事を危機から守ろうとしてくれた強い兄ちゃん!!(←これは盛った)
そんな兄ちゃんが……ブラをつけるとかいう性癖があるなんて…!!俺は聞いてないぞ神様ぁ!!!!)

と、俺は頭上を見上げて目を閉じ心の中で叫んだ。

「いただきます」

父さんが、手を合わせてそう言った。
はっ!!いけない、これはまだ、確実では無いのだ!!証拠がない。まだ、兄の反応が挙動不審なだけだ。たまたまなんだ。

「いただきます!」

俺も、(某アニメの主人公のように)パチンと手を合わせてそう言った。

テレビのニュースの音と、カチャカチャと、食器と箸の当たる音だけが響く。特に普段と変わりはないが、隣との空気に大きな壁があるように感じた。
気まずいというのはこういう事だ。
なんだか胃にぽっかりと穴が空いて、飯を食べてもストンとどこかへ行ってしまっている気分だった。
食べ終わると、食器をキッチンへ持っていき、そのまま俺はネットの波に乗るために部屋へ戻った。

今日の俺は一日中休みである。兄も休み。
両親は共働きなので、家にはいない。
ひとつ屋根の下、気まずい空気で漂っているわけか…。
俺はヘッドホンを首に下げ、パソコンの、お気に入りの某動画サイトアイコンをクリックした。その時トントントンと、階段を上がってくる音が聞こえた。兄である。
まぁそんなことどうでもいい。大好きな投稿者の配信や動画を見るため、俺はゆっくりとマウスを動かし始めた。
とある動画を視聴する。面白くて、以外に声を上げて笑ってしまう。そういえば、冷蔵庫に炭酸のジュースやら、アイスが入っていたはずだ。動画を見る時に欠かせないのはそれだ!
俺は立ち上がりヘッドホンを外した。

「…んっ、ぅ…」

ん???何か聞こえたか?
耳を澄ましたが、別になにも聞こえていなかった。

「…なんだ」

どこかホッとして、部屋を出て階段を降りる。
冷蔵庫を開けると、ベットボトルに入った、炭酸のジュースがたくさん入っていた。

「おっ!好きなやつ…!」

俺のお気に入りジュースが入っていたのでそちらと、ソーダ味のアイスをチョイス。素晴らしい。これでまた動画をより一層楽しめるのだ。
いかにも典型的なニートの例のような格好で階段を上がり始めると、またも先程の声が聞こえる。

「ぁ…ぅあっ」

…どうせ兄ちゃんがアダルティなビデオでも見てるんだろうと思いスルーしかけたのだが、見つけてしまった。
兄の部屋のドアが微妙に空いている。見つけなければよかった。見つけてしまったら見るしかねえ。
この時俺は、手に抱えたものの優越感に浸っていて、気まずさは忘れていたのだ。
ちらり。気配を消して、隙間から除く。と、

「…ふぅっ…ぁ、あ、んんっ」

あーーーーーーーーー。
まぁ少しは予想してた。予想してたけど、いざ見るとすごいな。兄が例のブツを着用し、体育座りのような格好でベッドの上にうずくまっていた。よくよく見れば(見るな)手は、足の間…、所謂、“ソレ”に伸びていた。兄は、女のような声をあげて震えている。

「………………。」

思わず見入ってしまった。ここは、気づかなかったフリをして、良き弟を演じるのがいい。俺はすんっと真顔に戻り、足音をなるべく立てないようにそそくさと部屋へ戻った。
まぁ…。そうだなぁ。兄がそんなことをしていると思うと、不思議な気分だなぁ。今まで長い間一緒にいた、あの兄ちゃんが…、はぁ。
そんなことを考えながら、椅子に座り、ジュースとアイスを起き、ヘッドホンを手に取った時…。

「あっ」

俺の息子が元気になっていることに気がついた。これはまずい。トイレに行かねばならん。が…足音を立てると(特に理由はないが、)なんか良くなさそうなのだ。それにもう極力動きたくない。どうせ隣でも同じようなことしてるんだから、ここでしてもいいか。
俺は、さっきまで見ていた面白い動画を離れ、アダルトサイトへ飛んだ。気になった動画をクリックし、ヘッドホンを装着し、息子を解放する。
事をなしていると、だんだん兄の顔が脳裏に浮かんできた。

(そういえば、昨日の会話からすると、今までもシてたんだろうな。あんな感じで。ていうか兄ちゃんは女役なのかな…。ってことは後ろも開発してたりすんのかな。彼氏とかいたらどうしよう、俺が気づかないうちに、もう処女卒業してたりして…。兄ちゃん喘ぎ声意外と高かった。女みたい…。俺もヤらせてって言えば相手してくれるかな。どんなプレイ好きなんだろ。…)

自分でも意味わからないけれど、いつの間にかどんどん妄想は広がった。いつの間にか動画も止めていた。全ては兄に意識が向いていた。

「…っあ…」

兄で抜いてしまった。BLとやらによくある展開だろう。BLが好きな男友達が言ってたぞ。俺…男好きなのか?

いやぁないない。そんなハズない。これはたまたまだし、生理現象だし、俺男の子だし。



翌朝、
またも顔を合わせるのが気まずくなってしまった。
兄は、弟に自分のブラを見られてしまった羞恥心、俺は、兄で抜いてしまったという罪悪感…。
こういう時って俺…どうしたらいいの?
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