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チュールな世界の孤高のグルメ
しおりを挟むこの世界では、猫も犬もチュールという軟弱なおやつに飼い慣らされてしまった。かつて誇り高き野良猫たちは、今や人間の家で喉をゴロゴロ鳴らし、チュールのために芸をする始末。
「ああ、嘆かわしい!」
そう呟くのは、ユニコーン神山猫。立派な角と鬣を持つ、この世界で唯一チュールに魂を売らなかった猫だ。彼は今日も、チュールまみれの世間に背を向け、孤独なグルメ道を邁進する。
ある日、神山猫は路地裏で美味しそうな匂いを嗅ぎつけた。それは、焼き鳥屋の屋台から漂ってくるタレの香ばしい匂い。
「これは…!」
神山猫は、本能のままに屋台へと歩み寄る。香ばしい匂いに誘われ、他の猫たちも集まってくるが、屋台の親父が「猫お断り!」の札を掲げると、皆一斉に尻尾を巻いて逃げていく。
「ふん、軟弱な奴らめ。チュールに毒された猫どもには、この香ばしい匂いの魅力もわからんとは!」
神山猫は、親父の視線を巧みに避けながら屋台の隙間に潜り込む。そして、焼き鳥の匂いにうっとりしながら、じっくりと焼き加減を見極める。
その時、親父が神山猫に気づいた。
「こら!猫!あっち行け!」
親父は、神山猫を追い払おうと箒を振りかざす。しかし、神山猫は動じない。彼は、親父の目を真っ直ぐに見つめ、こう言った。
「私は、チュールなどには興味がない。この香ばしい焼き鳥が欲しいのだ。」
神山猫の真剣な眼差しに、親父はたじろぐ。そして、神山猫に一本の焼き鳥を差し出した。
「…しょうがねえな。食ってけ。」
神山猫は、親父から受け取った焼き鳥を一口で食べる。
「うむ!美味い!タレの甘辛い味付けと、鶏肉のジューシーさが絶妙なハーモニーを奏でている。まさに、猫の舌を唸らせる逸品だ!」
神山猫は、焼き鳥の美味しさを噛みしめながら、至福の時間を過ごす。
「やはり、真のグルメとは、チュールなどに惑わされることなく、自分の舌で美味しさを見極めることなのだ。」
そう呟きながら、神山猫は夜の街へと消えていく。彼の孤独なグルメ道は、まだまだ続く。
…後日談…
焼き鳥屋の親父は、神山猫のグルメっぷりに感心し、彼専用の猫用焼き鳥を開発した。その焼き鳥は「ユニコーン焼き」と名付けられ、猫界で一大ブームを巻き起こす。しかし、神山猫は「ユニコーン焼き」には目もくれず、今日も新たなグルメを求めて街を彷徨っているのであった。
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