天から二物も三物も与えられ過ぎた俺がダンジョンで青春を取り戻す

黒丸

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中武さん

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興梠さんのお説教と査定が終わると事務所の奥へと通される。
まぁ、奥といってもプレハブの仮事務所なこともあって応接室なんてなく、衝立で仕切られただけの職員用の休憩スペースだ。
食事をとるために置かれたテーブルと、隅の長机にはポットやコーヒーサーバー、紙コップなんかが並べてある。
物珍しさから、ついついきょろきょろと観察してしまう。
そのたびに座ってるパイプ椅子がミシミシと悲鳴を上げるけど。
壊れないよな、これ。
「待たせてしまって申し訳ない!」
何度かパイプ椅子を破壊した苦い記憶を思い出していると、突然、声がかかる。
振り向けば細身のスーツを着た長身の男性。昨日、興梠さんに指示をだしていた人が立っていた。色素の薄い髪に少し垂れた優しそうな目。ただ、なんだろう、見たままの人じゃない気がする。
「ああ、いいよ。掛けたままで。」
立ち上がろうとする俺を手で制して、正面の椅子にスッっと椅子へ腰掛ける。
なんかすごく所作が綺麗だな、この人。
「初めまして、だね。秋月くん。僕は中武修一。ここの責任者で、ついでに君の大ファンなんだ。」
「ファン、ですか?」
なんで?
いや、確かに学校では俺のファンだって人はいた。こんな見た目で目立つからだろうけど、なんでこんな大人が俺のファン?
「不思議そうだね。自覚がないかもしれないけど、君は有名人なんだよ。」
流石に自覚はありますけどね。
「確かに目立ちますから有名なのはわかるんですが…。」
特にスポーツとかもやってないのにファンもなにもないと思う。
「まぁ、そのへんは詳しく話しても仕方ない。とりあえずは君が表に出てくるのをずっと待ってたって感じかな。」
「表に、ですか?」
「そう。そしてついにその日が近づいてきてる。所有してるダンジョンを防衛状態にしたんだよね?」
「はい、たぶんですが。」
「もし本当に防衛に入ってたら、恐らく個人では第1号だ。これは大変なことだよ。」
いまいちピンとこない。
「これから世界は変わる。すぐにダンジョン探索は一般的な娯楽として受け入れられる。倫理観も変わる。そう世界が仕向けてるからね。」
「それ言っていいことなんですか!?」
「うん、あんまり良くないかな。でも君は知っておいた方がいい。たぶん、君はすぐに全国区で有名になるだろうから。」
そんな馬鹿な、と思いつつも胸がざわつく。
まだ自分のことをよくわかってなかった頃、そんな妄想をしたことがある。
オリンピックでいくつもメダルを取って、取材を受けてテレビに出て。
結局、競技にすら出してもらえなかったけど。
「あっと、すまない。少し興奮しすぎた。」
「いえ、大丈夫です。正直、実感はないですが…。」
「まあ、そうだろうね。じゃあ、本題に入ろうか。」
そう言って居住まいを正す中武さん。
背筋がピンとしてて雰囲気がある。なんかの家元みたいな感じ。
「まずはダンジョンの状況を教えてもらえるかな。」
「はい。」
といっても、そんなに話すことはないんだけど。
とりあえず、1層、2層に魔物の再出現が無いこと、3層、4層の魔物の大型化、奇妙な動き、死体の消失の早さについて説明していく。
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