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第1章

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朝から再び修行が始まった。
まあ例によって私は何もしないのだが。

母上は右手で私の、左手でオディロン兄の首に手を当てている。
マリーの姿は見えない。
馬車で兄上と姉上の送迎だろう。

ぐっ、気持ち悪くなってきた。
しかしオディロン兄にも魔力を注いでるせいか昨日ほどの圧迫感を感じない。
代わりに蛇達が這いずるスピードが上がったように思う。
耐えられる!
吐き気もしない!
軽い船酔い程度だ。

一方オディロン兄は……

「マリー……いないの……?
ううー、うえっ」

苦しそうだ。
それでも立ったままだ。
兄としての意地があるのだろう。
マリーがいないから甘えることもできない。
五歳児にしては十分すごいと思う。
何だこの家族は……
平凡な騎士一家じゃないのか……
父上の兄弟子も何やらすごそうな人って話だし。

午前中はそのまま終わった。

今日は母上が大変だったようで口数が少なかった。
やはり二人同時かつ別々に魔力を流すのは難しいのだろう。
両手で違う楽器を同時に弾くようなものか?

結局マリーは現れず、午後からは姉上が帰ってきた。

午後からの修行も午前同様、我慢できる気持ち悪さだ。
姉上も必死に耐えているようだ。

さて、兄達はどうしてるのだろうか。

後で聞いたら二人でひたすら狼ごっこをしていたらしい。
くっ、羨ましい。
二人ともフラフラになって帰ってきた。
楽しそうだけどそりゃハードだよな。

明日はついにすごい先生が来る日だ。
私には関係ないが楽しみだ。
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