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第1章

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今日は休みなので、朝からキアラに本を読んでいる。その本はもちろん『勇者ムラサキ・イチローの冒険』である。

「こうして勇者ムラサキは悪いドラゴン、キュウビキマイラを倒しました。
勇者ムラサキの冒険はこれからだ。」

「どうだー面白いかー?」

キャッキャキャッキャ言ってるので面白かったのだろう。
女の子だからお姫様系のお話にしようかとも思ったが、私が読んでいて苦痛なのでやめた。
さて、続きを読んであげよう。

「勇者ムラサキが悪いドラゴンを倒したら、なんとそのドラゴンの体から剣が出てきました。
それは失われた聖剣デランサイファではありませんか。持ち主に祝福を与え、あらゆる魔を打ち砕く、魔物にとって厄災とも言える剣なのです。
それがなぜキュウビキマイラの体から出てきたのでしょうか。それには長い長い理由があるのです。」

あら、キアラめ寝やがったな。
ふふ、かわいい奴め。

勇者ムラサキは実在したらしい。ならば聖剣デランサイファも実在したのだろうか?
それにしてもドラゴンなのにキュウビ? キマイラ? 妙な魔物もいるものだ。

ローランド王国中央部よりやや南部には巨大なムリーマ山脈が横たわりフランティアとそれ以南の土地を分断している。
その山中にはいくつか盆地も点在しており、そのうちの一つがキュウビキマイラの縄張りだったらしい。

北には魔境があり、南には巨大山脈か。
やはりこの世界は厳しい環境なんだろうな。
しかしその山脈から大河が流れていることを考えると、やはり無くてはならないものなのだろう。

魔境は恐ろしくて行きたくないが、ムリーマ山脈には登ってみたいと考えている。
空を飛べる魔法が使えるようになったら挑戦してみたいものだ。
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