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第1章

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すっかり秋になった本日、珍しく私とオディ兄の帰宅時間が同じだった。
夜いないことが多く、まだ子供なのにちょくちょく泊まりで冒険者をやっている。
こんなにタフな男だったとは。
ちなみに全然汚れてない。

「オディ兄おかえり。調子はどう? 武勇伝を聞かせてよ。」

「ははただいま。武勇伝なんてあるわけないさ。地道にコツコツとやってるよ。」

「どこまで行けるようになったの?」

「まだグリードグラス草原にすら行けてないよ。当たり前だろ? そこら辺の雑魚を狩ったり、足を伸ばして西の山まで行ったりぐらいさ。
それでも一年目の新人グリーンホーンにしてはよくやってる方らしいよ。」

「さすがオディ兄! すごいんだね! いいなー僕も行ってみたいよ。
そうそう、エロー校長って遥か北の山岳地帯まで行ったことあるんだって! すごいよね!」

「ええー!? すごいね! フェルナンド先生だってノワールフォレストの森から先は行かないって言ってたよね?
すごいなー! 世界は広いよね。」

「おやおや? オディ兄って金貨百枚貯めるために冒険者やってると思ったら、すっかり染まってしまってんじゃない? もう一端の冒険者だね。」

「あはは、運良く今日まで無難に生きてこれたからね。楽しくなってきてるんだよ。」

油断大敵だよ、と言いたかったが私が言うまでもないだろう。

「ちなみにパーティーのリーダーってオディ兄なの?」

「いやいや。いつか話したベレンガリアちゃんがリーダーなんだよ。
あの子って上級貴族なのに変わり者なんだよ。そもそも僕が冒険者を選択肢に考えたのは彼女が原因でもあるね。」

「えー!? 上級貴族なのに!? よくなれたね? もしかして勘当されたとか?」

「ほぼ正解。彼女は学校を卒業後、王都の貴族学校へ行くよう言われたらしいんだ。その時点で王都の貴族子弟との婚約もほぼ決まっていたとか。それが彼女には耐えられなかったらしい。
上級貴族なら普通だけど、彼女は自分で選んだ男性でないと認めないタイプみたいでね。それならこんな家出て行ってやる! 冒険者でも娼婦でも何でもやってやる!とか言って飛び出したって言ってた。」

「うわー、すごいね。じゃあ今どこに住んでるの?」

「ギルド近くの宿だよ。あの辺は冒険者御用達の宿がたくさんあるからね。ちなみに僕らは四人パーティーだけど残り二人も同級生なんだ。平民だけど気が合うんだよね。」

すごい人もいたもんだ。
驚異の新人ってとこなんだろうか。
冒険者もやってみたくなってしまった。
オディ兄に洗濯魔法をしっかり習っておこうかな。

ファンタジーでは新人ってイビられそうだけどその辺どうなんだろう?
新人狩りとかないのかな?
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