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第1章

121 十月十二日、午前

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アランとフェルナンドが魔境に出発した翌朝遅く、ついにカースが目を覚ました。



……ここはどこだ……
……確かあの時フェルナンド先生が……
……助かったのか……
……体が動かない……
……声が出ない……
……喉が渇いた……
……暑い……
……誰か……

「カース、起きたのか!」

オディ兄……
腕は……
右腕は繋がったのか……

「見てくれ。カースのおかげだよ。もっとも腕がなくなった記憶もないんだけどね。」

繋がってる……
動きはどうなんだ……
痛みは……

「本当にありがとうな。ベレンちゃんも驚いていたよ。待ってな、先生を呼んでくるから。」

そうか……
ここはクタナツ……治療院……

「目が覚めたようだね。これで一安心だよ。さあ、回復させるからね。」

ああ、暖かい……
さっきまで暑かったのに……心地よい暖かさだ……

「それにしてもひどい状態だったよ? 一体何をしたんだい?」

我ながら無茶をしたものだ。
父上もいたのだがら相談するなり指示を仰ぐなりするべきだったな。
でも今思えばあのタイミングで飛び出さなければきっと間に合わなかった……
グリーディアントはどうなんだろう、やはり来るのだろうか……
くそっ、十万百万だと?
私のせいでクタナツが……

「まだ声が出ないようだね。でももう大丈夫。少しずつ回復してるからね。ゆっくり治していこうね。」

喉が渇いた……
水が欲しい……

「よし、まずはここまで。続きはまたお昼にね。何か飲みたかったりするかい?」

欲しい!
水が飲みたい!
必死に目でアピールする。

「口は開けられるかい?」

だめだ……
動かない……
瞬きするので精一杯か……

「開けられないようだね。ではお兄さん、このスプーンで少しずつ飲ませてあげるといい。」

それでもいい!
頼むオディ兄!



水を飲んだ安心感か、カースは再び眠った。
そしてオディロンもカースの横に座ったまま、寝た。

なお、ジェームスだが内臓は無事だった。
肋骨が何本も折れていたが、運良く内臓に刺さることはなかった。長時間背負われて移動したにもかかわらず、かなりの幸運と言えるだろう。
ヒャクータは両足の筋肉がズタズタになっている。いち早く意識は取り戻したが、まだ歩ける状態ではない。激痛とも戦っている。

全員よく生き残ったものだ……
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