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第1章

170 コーヒーとそれぞれの選択

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私は容赦なくコーヒーを注文した。すると、なんとアレクもコーヒーを頼んだではないか。
そもそもコーヒーがお目当てだったらしい。

さすがに他の三人は金貨二枚と聞いてとても頼めなかったようだ。普通に紅茶を頼んでいる。
それでも銀貨一、二枚はする高級品だが。大丈夫、コーヒーなら私のを一口あげるよ。

ちなみにコーヒーだが、品種は選べないようで『コーヒー』としか頼めなかった。
ホット、アイス、ミルクなどの選択肢すらなしだ。

さて、肝心のお味は……

うまい。うまいが、よく分からない。
日本の高そうな喫茶店で飲んだコーヒーより少し美味いぐらいだろうか。

よし、ここは何か気の利いたことを……
「程よい苦味とコク、柔らかな酸味と甘味がバランス良く調和した味わいって言うのかな。美味しいね。」

「そうね。豊かな酸味、深いコクと苦味、そして芳醇な香り。王都で人気だけあるわね。ちなみに金貨二枚は安い方よ。豆によっては金貨二十枚することもあるらしいわ。」

すごい! さすがアレク! 私は適当なことを言っただけなのに! やはり上級貴族は舌から違うんだろうな。カッコいいぜ。

ちなみにサンドラちゃんは、
「この味好きだわ。」

スティード君は、
「うーん、よく分からないや。」

セルジュ君は、
「苦い!」

みんな正直でいいことだ。



そして話題は進路についてへと転がっていった。

「僕はやっぱり領都の騎士学校だね。評定が少し足りないから頑張らないといけないけど。」

やはりスティード君はすごい。
しっかり先を見据えている。

「僕は王都の貴族学院に行くことになりそうだから、まずは領都の貴族学校かな。」

貴族としての生き方を学ぶ学校である。
貴族の後継が行くような学校であり、王都の貴族学院は半ば箔付けとコネ作りがメインとなっている。
セルジュ君もしっかり考えていたんだな。

「私は王都の中等学校から誘いが来てるから多分そこに行くわ。」

すごい! 中等学校はクタナツにも領都にもある。学ぶことは学問、剣術、魔法と普通にクタナツ学校の続きだ。それが官僚への道だって開ける王都からオファーが来るなんて!
さすが辺境一の頭脳!

「私は……カースについて行くと決めたわ! 母上には了承してもらったわ! 後は父上だけ!」

何それ!? 初耳なんだが!?
みんなも驚いている。
私もだ。

「いやいや、それはまずいって! 僕は下級貴族の三男だよ!? 冒険者やるんだよ!? その上金貸しだよ!?  アルベルティーヌ様は何で許可を出してんの!?」

「それだけど、お義母かあさんって呼びなさいって言ってたわよ。」

「ええー!? それは無茶だよ! 一体どうしてそうなったの!?」

「深い意味はないらしいわよ。カースを気に入ったみたいよ。さすがね。」

あのわずかの間のどこに気に入る要素があったんだ? しかし深く考えるのはやめだ。やりたいようにやると決めたことだし。

「分かったよ。ならそう呼ばせてもらうよ。そんなことよりサンドラちゃんだよ! 王都からお誘いだって? すごいじゃない! さすが辺境一!」

「明らかにカース君の方が大事おおごとだけど、ありがとう。カース君のおかげよ。残り一年だけどまだまだ教えてよね。」

「もうほとんど教えられることないよ。スティード君は騎士学校の後どうするの? 近衛学院とか狙ってみる?」

「いやーそれはどうかな。僕じゃあ無理そうだし早く騎士にもなりたいしね。たぶん騎士学校を卒業できたらそのまま赴任するかな。」

堅実だ。スティード君らしい。

「セルジュ君は貴族学校を卒業したら王都でサンドラちゃんと再会できるね。うちの兄上達とは入れ違いになるかな?」

「ウリエンお兄さんが今王都なんだよね。で、エリザベスお姉さんが来年王都に行くんだよね。エリザベスお姉さんってキリッとしててカッコいいし綺麗だよね。うちの姉上達とは大違いだよー。」

「セルジュ君のお姉さんだってふにゃ~っとしてて可愛いらしいよね。王都はロクでもない貴族が多いらしいから気をつけてね。」

こうして私達はとりとめのない話に夕方近くまで花を咲かせていた。青春だなぁ。

それにしてもみんな真剣に将来を考えている。貴族なら当然なのか。適当に生きてる自分が少し恥ずかしくなってきた。
こんな私にどこまでもついて来るだなんてアレクは奇特だよなぁ。マジで卒業したらどうしよう……
まだ冒険者や金貸し一本で生きたくはない。しばらくは学生らしく、若者らしくダラダラとやっていたいんだ。

選択肢としては……
一、クタナツで冒険者をしつつ金貸し。論外、却下。

二、クタナツで中等学校に進む。
クタナツなら魔境にも近いので冒険者をやりながら生活するのに適している。保留。

三、領都の騎士・魔法・中等学校のいずれか。
私の成績ならどれでも選べる。自分の弱点と言えば身体能力。そこを考えると騎士学校なのだが、堅苦しいイメージがなぁ~。先輩は優しいらしいのでアリはアリか。保留。

四、王都で冒険者兼金貸し。
金を稼ぐにはこれがベストだが、そこまで金に執着はない。若いうちからそこまで金を搔き集めるつもりもないので、却下。

五、その他。思いつかない。

考える時間は後半年ぐらいか。まあ、じっくり考えてみるか。
思えば前世では高校や大学、職業を適当に選んでしまったからな……
今生では悔いのない選び方をしなければ。
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