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第1章

201 スパラッシュの愚痴と御礼

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同日夕方、スパラッシュさんが訪ねてきた。

「坊ちゃん、先日はありがとうごぜぇやした。お陰様で命拾いしやしたぜ。」

おお、さすがに気付いてたのか。スパラッシュさんやるな。

「いやいや、スパラッシュさんなら問題ないだろうとは思ったんだけどね。数が多かったから念のためね。」

「助かりやした。あいつらを見捨てて逃げようと考えていた矢先だったんでさぁ。」

「意外だね。スパラッシュさんでもそんなことがあるんだね。」

「いやー、あいつらと来たらひでぇんでさぁ。強くなることしか考えてやがらねぇんで。冒険者のマナーを守りゃしねぇ。一人だけまだマシな奴もいやしたが。」

「あの人達って何等星? どんなマナー違反をしてるの?」

「あれで八等星でさぁ。獲物は獲りっぱなし、埋めやしねぇんで。魔石の取り出しも汚いんでさぁ。下手くそな解体しやがるもんで余計な魔物が寄って来るってわけで。少し土を被せておけば違うものをそれすらしやがらねぇ。全く最近の若ぇもんは。
そこいくと坊ちゃんはあれだけの魔物をきっちりと処理なすって! ご立派ですぜ!」

「あはは、面倒だったよ。やっぱ放っておいたらアンデッドになっちゃうかな?」

「それもですが、他の魔物が食っちまって成長されるのが厄介なんでさぁ。例えばゴブリンが他のゴブリンを百匹食うと上級ゴブリンになるって話がありまさぁ。」

「へぇー。じゃあもしゴブリンがオークやオーガなんか食べたらすごいことになるのかな?」

「そんなの聞いたことはねぇですが、あり得る話ですぜ。」

やはりスパラッシュさんは物知りだな。とても参考になる。しかもお礼を言うためにわざわざ来てくれるなんていい人だ。とてもいい人だ。

「さあさあ夕食の時間ですよ。スパラッシュさんも食べて行ってくださいな。」

「こりゃ奥様、一言お礼申し上げたら帰るつもりが長居しちまいやして。」

「うふふ、今夜はすごいわよ。よかったわね。」

先日に引き続き魚料理だ。しかもウンタン、サカエニナ、ホウアワビもある。
醤油とワサビが欲しくてたまらない。
ちなみにキアラは魚は食べるがウニなどは嫌がって食べない。

「こいつぁすげぇ。一体どうしたこってすか!?」

「カースがね、海まで行って買ってきてくれたのよ。私も久しぶりに魚を食べられてご機嫌なの。」

「海ですかい!? 坊ちゃんはどうやっ、いや聞いても仕方ないでさぁね。ありがたくいただきまさぁ。」

マリーの料理はやはり絶品だった。
私も母上もスパラッシュさんも大満足だった。
ちなみにスパラッシュさんからはお土産にオウエスト山の果実を貰った。話に花が咲いていたので出し忘れていたらしい。
スパラッシュさんはそれを絞ってジュースにもしてくれた。
そこまで甘くはないがどこか郷愁を感じる味わいだった。たぶんアケビに近い味のせいなのだろうか。
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