ねもとやどる

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兄×妹/双子近親

ディフェンバキア

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「ねえねえ、るり」

「なに、ひすい」

 ダイニングテーブルでは、双子の小学生が並んで宿題を始めていた。

「お母さん、買い物行ったよ」

「そっか」

「今ね、誰もいないよ」

「そうだね」

 妹の言葉に相槌を打ち、軽快に走らせていた鉛筆をノートの上へ置いた。

「ひすい」

 横へ座り直し手を広げれば、同じ顔の妹は嬉しそうにその胸へ飛び込んだ。

「ん……」

 ハグをしながら、瞼を下ろす妹に兄が唇を重ねる。

 どちらが言い出したのか。いつ始めたのかも曖昧な、秘密の恋人ごっこ。

 それはふたりが成長し、外見が変化した後も続いていた。


 ××× ××× ×××


 帰宅後、肩からリュックを下ろすと首を左右に動かしながら廊下を歩く。白草しろくさ 瑠璃るり
 濡れたような艶の有る黒髪は、見た目より軽やかな髪質だ。
 切れ長のやや細い瞳は表情を作らなければ、冷たい印象を持たれがちで少し近寄り難さがある。

「お帰り、瑠璃」

「ん、ただいま」

 リビングへのドアを開けて立つのは瑠璃と双子の妹、翡翠ひすいだった。
 目尻はやや切れ長の印象を与えるものの、瞳は大きく頬も柔らかそうな丸みがある。
 兄と違い、全体的に親しみやすそうな雰囲気を作り出していた。

 成長と共に変化を遂げた容姿となったふたりは、仄かに似ている程度。
 ふたりを知らない人からは双子だと思われる事はないだろう。

「ねえ、瑠璃。今日もお母さん、仕事だって」

「そう」

 答えると、目線の端に映る翡翠を盗み見た。
 薄いピンク色に引かれたリップ。白い肌と相まって、愛らしさが一段と際立つ。

「翡翠」

「あ、んん」

「……ふっ」

 彼女の顎を掴み上を向かせると、自身と同じ形の唇を塞いだ。

「は……瑠璃」

「ん……」

 リュックが手から滑り落ちる。軽くなった瑠璃の手は、翡翠の腰へ回されていた。

「翡翠」

「あぅ…んん」

 重なる唇の隙間から漏れる甘い声に、腰に回す腕の力が一層強まる。
 次第に深くなる口付け。翡翠は息苦しそうに頭を振り、抵抗した。

「はっはあ……だめ」

「む……」

 さらに両手を彼の口許へ重ね、拒絶の意を示すのだ。

「何が駄目なんだよ」

「ご飯、用意しなきゃ……」

「はああ」

 不服そうに大きな溜め息を吐く瑠璃。
 飯よりも翡翠を食べたい、などと脳内で漏らしていた。
 そんな煩悩まみれの兄に気付く様子のない妹。
 瑠璃の手からすり抜けると、駆け足でリビングへ入って行く。

「はー……ヤバい」

 瑠璃は自身の手の平を見つめ、拳を作る。
 もう、キス止まりでは終われなくなっている気がする。
 妹に対して感じている欲情。間違った気持ちだとと思いながら、それは日に日に大きくなっていた。

 翡翠から移ったリップを指で拭っていると、スマホが鳴り出す。
 リュックから取り出すと、光る画面には時田の文字。
 瑠璃はタップし、会話へ切り替えた。

「何……うん、今飯前」

 電話の相手は時田ときた 萌羽めう。瑠璃の彼女だ。

「え?あーじゃ、明日持って行くわ」

「……」

 廊下で会話する瑠璃の背中を、悟られ無い程度に見つめる翡翠。
 解っている、彼は自分の兄だ。キスも幼い頃からしている、ごっこの延長でしかない。

 瑠璃の事が好きだなんて、間違い無く勘違いだ。
 理解はしていても、まだ整理は出来ないでいる。

 話し声を遮るように、翡翠はキッチンへ戻って行くのだった。


 end
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