23 / 38
24 魔力と世話係
しおりを挟む
私が夢の中でショウ様に顔射をしてしまってから数日後、なぜか私とショウ様は二人で旅行をしていた。それもあの、変態ドM眼鏡野郎から「あんな異空間にずっといたら疲れちゃうでしょう? HAHAHA!」と言われ旅行の手配も彼がしてくれたのですが、……嫌な予感しかしません。しかも異空間って何ですか。
そして今、私たちは温泉から宿の部屋へ戻るところだ。人間界の東方の国の民族衣装、『ユカタ』を着せられ、ショウ様とゆっくり歩く。
結果的に温泉はとても気持ちよかった。美肌効果があるというだけあって、風呂上がりも肌がツルツルしている気がします。
そして、ここまで何も無いのも怖くなってきました。あのトルンが、心ゆくまで楽しんでくれたまえ、とニコニコしていたのが、どうも引っかかります。
「ショウ様、もうあとは休むだけですが、楽しんでいらっしゃいますか?」
「うん……」
ショウ様は少し緊張した感じで返事をされる。大きく開いた胸元から、桜色の部分が見えて、私は視線を逸らした。……この民族衣装は、キチンと着用しないと色々見えてしまって困ります。
この旅行に来た時から、ショウ様は珍しく、ほのかに魔力を絶えず出していました。なので私もつい、ショウ様を意識してしまいます。私は仕事で来ているというのに……今夜が不安で仕方がありません。
私たちは部屋に戻ると、木と紙で作られた引き戸を開ける。中は植物を編んでできた敷物が敷き詰められ、何とも言えない青い匂いがします。
けれど、寝室に入って私は驚いた。床に敷いてあった布団は、おおよそ魔族が二人入れる大きさではなかったからだ。
「あれ? 私の寝床は違う部屋でしょうか?」
「いいんじゃない? 一緒に寝れば」
他の部屋も探そうと、足を向けたところでショウ様に腕を掴まれる。やっぱり、これをショウ様も変態ドM眼鏡野郎も狙っていたのですね。
「リュート、一緒に寝てくれる?」
上目遣いで私を見るショウ様。命令であればお断りする理由はないのですが、これは「お願い」でしょうか?
「……残念ながら、私は世話係の身。そのお願いは受け入れることはできません」
そっと、ショウ様の腕を外す。ショウ様は不安そうに私の顔を見上げ、それからその目は悲しげに伏せられた。
「世話係世話係って……世話係じゃなかったらリュートはどうするつもりなの?」
「それは……」
「僕が『洗礼』を受けた日、リュートはキスしてくれたよね?」
あれは何だったの? と尋ねられ、私は答えることができなかった。あの時は感情のまま行動してしまっていたから……つまりは、そういうことなのでしょう。
「ねぇ、僕は淫魔だよ? リュートが僕に欲情しているのなんて、すぐに分かるんだ。僕は『特殊』だし」
ショウ様はその場で、はら、とユカタから肩を出した。白い肌と、胸の桜色が露になって、私は視線を逸らす。
「でも、『気持ち』は分からない。こうやって確かめるしか、僕は方法を知らない……」
ショウ様の細い指が、私の手を取った。そっと握り、私の手はショウ様の胸へと寄せられる。
どうしてでしょう? ショウ様の魔力はうっすらとしか感じられないのに、私はどうしようもなく緊張しています。
「僕の魔力は特殊。現実では、相手に欲情されなければ発動しない」
「え……?」
ねぇリュート、と甘い声がした。それだけで腰の奥がゾクリとして、息を詰める。
「ほら、これだけで僕の魔力は溢れてくる。今までの世話係もそれは変わらないけど、殺さずに済んでるのは、リュートだけだよ」
そういえば私がショウ様の元へ派遣された時、ショウ様は、みな快楽堕ちして使い物にならなくなったと仰っていた。ショウ様はそれでも、私がショウ様を乱暴に扱うことなく、主人として接してくれたことが、嬉しかったと言う。ショウ様の魔族嫌いは、そういうところからもきているのか、と私は納得した。
「お母様やトルンは躍起になって、僕の魔力を引き出そうとしているけど。僕はこれでいいと思ってる」
僕を王子として扱ってくれる、リュートだけがいればいいから。ショウ様はそう言って、私の両手を自分の頬に当てた。
「だから教えて。リュートは僕の身体だけが目的?」
「……その聞き方は、ずるいです」
頭まで痺れるような甘い囁きに乗せて、ショウ様の香りが漂ってくる。ショウ様は私の手をそっと撫で、指先に触れるだけのキスをした。
「聞きたいの。リュートの気持ちを」
私は目眩がして目を閉じる。今すぐにショウ様を掻き抱きたい衝動を抑えて、私はショウ様のウェーブがかかった艶やかな黒髪を撫でた。
顔が熱い。鼓動が早くなる。呼吸も荒くなって身体は興奮しているのに、心の中は一つの感情で占められていた。
「……愛しています。ショウ様……」
そう呟いた途端、ショウ様は私の胸に飛び込んできて、ぐい、と首の後ろを引き寄せられる。ショウ様の唇は、自分と同じものとは思えないくらいの柔らかさで、私はすぐにその感触と行為に夢中になってしまった。
「ショウ様、……ショウ様。……貴方は本当に愛らしいお方だ」
口付けの合間にそう告白すると、ショウ様はぎゅうぎゅうと私に抱きついてくる。胸に顔をうずめて、表情が分からないので少し寂しい。すると鼻を啜る音がしたので、私は再びショウ様の頭を撫でた。
「リュート、僕と結婚して」
「……かしこまりました」
先程、「これは命令だろうか?」なんて考えていた、私のセリフとは思えないくらいの即答。ええ、浮かれてたんですよ、きっと。
可愛いショウ様。私はショウ様のお顔を少し強引に上へ向かせると、涙で潤んだ瞼に口付けをした。
もう、自制できそうにありません。
そして今、私たちは温泉から宿の部屋へ戻るところだ。人間界の東方の国の民族衣装、『ユカタ』を着せられ、ショウ様とゆっくり歩く。
結果的に温泉はとても気持ちよかった。美肌効果があるというだけあって、風呂上がりも肌がツルツルしている気がします。
そして、ここまで何も無いのも怖くなってきました。あのトルンが、心ゆくまで楽しんでくれたまえ、とニコニコしていたのが、どうも引っかかります。
「ショウ様、もうあとは休むだけですが、楽しんでいらっしゃいますか?」
「うん……」
ショウ様は少し緊張した感じで返事をされる。大きく開いた胸元から、桜色の部分が見えて、私は視線を逸らした。……この民族衣装は、キチンと着用しないと色々見えてしまって困ります。
この旅行に来た時から、ショウ様は珍しく、ほのかに魔力を絶えず出していました。なので私もつい、ショウ様を意識してしまいます。私は仕事で来ているというのに……今夜が不安で仕方がありません。
私たちは部屋に戻ると、木と紙で作られた引き戸を開ける。中は植物を編んでできた敷物が敷き詰められ、何とも言えない青い匂いがします。
けれど、寝室に入って私は驚いた。床に敷いてあった布団は、おおよそ魔族が二人入れる大きさではなかったからだ。
「あれ? 私の寝床は違う部屋でしょうか?」
「いいんじゃない? 一緒に寝れば」
他の部屋も探そうと、足を向けたところでショウ様に腕を掴まれる。やっぱり、これをショウ様も変態ドM眼鏡野郎も狙っていたのですね。
「リュート、一緒に寝てくれる?」
上目遣いで私を見るショウ様。命令であればお断りする理由はないのですが、これは「お願い」でしょうか?
「……残念ながら、私は世話係の身。そのお願いは受け入れることはできません」
そっと、ショウ様の腕を外す。ショウ様は不安そうに私の顔を見上げ、それからその目は悲しげに伏せられた。
「世話係世話係って……世話係じゃなかったらリュートはどうするつもりなの?」
「それは……」
「僕が『洗礼』を受けた日、リュートはキスしてくれたよね?」
あれは何だったの? と尋ねられ、私は答えることができなかった。あの時は感情のまま行動してしまっていたから……つまりは、そういうことなのでしょう。
「ねぇ、僕は淫魔だよ? リュートが僕に欲情しているのなんて、すぐに分かるんだ。僕は『特殊』だし」
ショウ様はその場で、はら、とユカタから肩を出した。白い肌と、胸の桜色が露になって、私は視線を逸らす。
「でも、『気持ち』は分からない。こうやって確かめるしか、僕は方法を知らない……」
ショウ様の細い指が、私の手を取った。そっと握り、私の手はショウ様の胸へと寄せられる。
どうしてでしょう? ショウ様の魔力はうっすらとしか感じられないのに、私はどうしようもなく緊張しています。
「僕の魔力は特殊。現実では、相手に欲情されなければ発動しない」
「え……?」
ねぇリュート、と甘い声がした。それだけで腰の奥がゾクリとして、息を詰める。
「ほら、これだけで僕の魔力は溢れてくる。今までの世話係もそれは変わらないけど、殺さずに済んでるのは、リュートだけだよ」
そういえば私がショウ様の元へ派遣された時、ショウ様は、みな快楽堕ちして使い物にならなくなったと仰っていた。ショウ様はそれでも、私がショウ様を乱暴に扱うことなく、主人として接してくれたことが、嬉しかったと言う。ショウ様の魔族嫌いは、そういうところからもきているのか、と私は納得した。
「お母様やトルンは躍起になって、僕の魔力を引き出そうとしているけど。僕はこれでいいと思ってる」
僕を王子として扱ってくれる、リュートだけがいればいいから。ショウ様はそう言って、私の両手を自分の頬に当てた。
「だから教えて。リュートは僕の身体だけが目的?」
「……その聞き方は、ずるいです」
頭まで痺れるような甘い囁きに乗せて、ショウ様の香りが漂ってくる。ショウ様は私の手をそっと撫で、指先に触れるだけのキスをした。
「聞きたいの。リュートの気持ちを」
私は目眩がして目を閉じる。今すぐにショウ様を掻き抱きたい衝動を抑えて、私はショウ様のウェーブがかかった艶やかな黒髪を撫でた。
顔が熱い。鼓動が早くなる。呼吸も荒くなって身体は興奮しているのに、心の中は一つの感情で占められていた。
「……愛しています。ショウ様……」
そう呟いた途端、ショウ様は私の胸に飛び込んできて、ぐい、と首の後ろを引き寄せられる。ショウ様の唇は、自分と同じものとは思えないくらいの柔らかさで、私はすぐにその感触と行為に夢中になってしまった。
「ショウ様、……ショウ様。……貴方は本当に愛らしいお方だ」
口付けの合間にそう告白すると、ショウ様はぎゅうぎゅうと私に抱きついてくる。胸に顔をうずめて、表情が分からないので少し寂しい。すると鼻を啜る音がしたので、私は再びショウ様の頭を撫でた。
「リュート、僕と結婚して」
「……かしこまりました」
先程、「これは命令だろうか?」なんて考えていた、私のセリフとは思えないくらいの即答。ええ、浮かれてたんですよ、きっと。
可愛いショウ様。私はショウ様のお顔を少し強引に上へ向かせると、涙で潤んだ瞼に口付けをした。
もう、自制できそうにありません。
1
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 1000 Thank_You!!
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる