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39 比翼連理 ★

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「んん、……ん」

 ちゅっ、ぢゅっ、と音を立てながら、エヴァンは薫の身体を隅々まで撫でる。滑らかな肌が当たり、緩やかに性感を高められていった。そして、柔らかい手で肝心なところに触れられると、薫は背中を反らし、ひときわ高い嬌声を上げる。

 エヴァンはできるだけ丁寧にすると言った通り、気持ちがいいことだけをしてくれた。大きく反応すれば、痛かったですか? と聞いてくれて、薫はその度に、気持ちいいからもっと、とねだる。

「あっ、……え、エヴァンっ、ちょっと待って……っ」

 中心を扱かれていた薫は、早々にやってきた射精感に待ったをかけた。案の定、心配そうにどうしました? と尋ねてくるエヴァンに、薫は眉を下げて笑う。

「もっとって言ったクセにごめん……イッちゃったら、何かもったいない気がして……」
「……何ですか、それ?」

 エヴァンがクスクスと笑った。その声もくすぐったくて肩を竦めると、彼は薫の細い髪の毛を梳くように撫でてくれる。心地よくて、薫は目を細めた。

「貴方は、かわいいですね」
「ん、……エヴァンは、綺麗、だよ?」

 本当に、と薫は付け足す。最初から、彼を見た時の感想は綺麗な人、だった。温泉に入ってエヴァンの後ろ姿にドキドキして……多分性的対象として見ていたのはその時からだ。

 エヴァンはひとつ、キスをくれる。

「不思議ですね……貴方に綺麗と言われるのは、悪い気がしません」
「そっか、……よかった。……っあ!? やっ、だからっ、……ダメだって……!」

 予告無しに再び分身を擦り上げられ、薫は腰を浮かせて悶えた。背筋が何度も電流が走ったように震え、エヴァンの肩に爪を立ててしまう。

 彼は薫の耳元で囁いた。

「薫が達するところ、見たいです。見せて……」

 熱い吐息が耳にかかり、かと思えば胸に吸いつかれ、一気に絶頂へ駆け上がる。くちゅくちゅと下から音がして、それが滑りをよくしているのも拍車をかけた。

「あ! ……ああっ、え、エヴァン……っ、出る、出ちゃう……っ!」

 グッと、薫はエヴァンの背中で拳を握った。視界が霞み、音と思考が曖昧になった次の瞬間、突き抜けるような快感が薫を襲う。

「……──ッ! んぅ……ッ!」

 断続的に出る熱が薫の下腹を汚した。しばらく自慰をする余裕もなかったので、いつも以上に深い快楽に堕ち、息をするのもままならない。やっと呼吸ができたと思ったら、目尻から涙が落ちた。

 エヴァンはその涙を吸い取ると、宥めるようなキスをする。

かったですか?」
「ん……」

 はあはあと弾む息の中で、吐息のように返事をすると、彼は少し待っててくださいね、と薫から離れていく。それが少し寂しいと思って脱力しながら見ていると、エヴァンは自分の荷物から拳大の瓶を持ってきた。

「……これくらいしか、潤滑油になりそうなものはありませんから」

 そう言って瓶を開けたエヴァン。するといつも彼から香るあの甘い匂いがして、薫はドキリとする。

「……やはり止めておきますか?」

 瓶をじっと見ていたのを、躊躇っていると思ったのだろう、エヴァンはそう尋ねてきた。いつもシリルとする時は、あまりそういうのを使った記憶がないので、使うことで楽になるのならその方がいい、と首を振る。

「大丈夫……」
「本当に? 気が変わったら言ってください」

 自分だって苦しいくせに、とエヴァンの気遣いに薫は胸が熱くなった。好きな人が気持ちよくなれるなら、自分は多少しんどくても我慢しよう、と。

 薫は足を広げて、上半身を肘をついた状態で起こす。エヴァンがたっぷりと瓶の中身を手に取り、陰茎とその後ろの蕾までを濡らしていった。

「ん……」

 ムズムズするような感じがもどかしい。丁寧にすると言った言葉通り、エヴァンは薫の後ろの孔を揉むように触れた。

(大丈夫、シリルを受け入れていた訳だし、エヴァンは痛くないようにしてくれるはず)

 そう思って、力が入りそうになる身体から、意識的に力を抜く。

「……痛くないですか? 指、増やしても良いです?」
「えっ?」

 薫は驚いた。これから指を挿れるものだと思っていたら、既にもう挿入はいっていたらしい。

(全然、痛くない……)

 信じられない。本来そういうことに使う器官ではないのに、少し扱いを変えるだけで、こんなにもすんなりと受け入れられるなんて。

(しかも、ちょっとムズムズする……)

 エヴァンは手に取った液体を、薫の内側に塗り広げるように動かしている。そしてそれがある箇所を掠める度、腰の奥に僅かな甘い痺れが走るのだ。

 ひく、と薫の肩が震える。エヴァンはそれに目ざとく気付いた。

「痛いですか?」
「ううん……。何か、変な感じ……」

 変な感じですか、とエヴァンは呟いている。そして、すぐに圧迫感が増しては消えた。指が増やされたのだろうと思ったけれど、圧迫感と同時にムズムズも強くなる。

「平気ですか?」
「う、ん……」

 グリグリと、内壁を擦っていた指の動きは、やがてゆっくりと抽挿を始めた。

「ゆっくり呼吸をしてください。……そう、だいぶ解れてきましたね」
「そう、なの……?」

 いつの間にか薫の息が上がっている。エヴァンの指が出し入れされる度、奥のある箇所を刺激される度にゾクゾクが増し、薫は身動ぎした。得体の知れない感覚に戸惑い、けれどどんどん熱くなっていく身体に、意識は次第に曖昧になっていく。

「薫……」

 ちゅっ、とキスをされた。エヴァンを見ると、薄紫色の瞳が熱く薫を見ている。

「……っ、あ……っ!」

 急に、ハッキリとした快感が薫を襲った。エヴァンが中に入った指をリズムよく動かし、薫が感じる箇所を触っているのだ。

「……どうです? 気持ちいい?」

 エヴァンの声が上擦った。薫は腕から力が抜けて寝転がると、エヴァンは薫の頭を撫でながら中を刺激する。薫は彼の首に腕を回して、涙目になりながら首をふるふると振った。

「だめ、だめ……っ、そこ、何か変っ」
「……ここですか?」

 エヴァンは指を出し入れし、今まで触れていた箇所を擦る。さらに強い刺激を与えられ、薫は味わったことのない快感に悶絶した。

「やっ! やだ! 擦っちゃ、……ああっ!」

 グチュグチュと、下から音が聞こえる。変になるからもう止めて、と訴えると、彼は息を詰め手を止めた。

 はあはあと二人の弾んだ息が部屋に響く。

「薫……」

 そっと唇にキスをされ、指を抜かれた。挿れていいですか、と言う彼の問いに、薫はコクリと小さく頷く。

「できるだけ、優しくしますから」

 そう言って一度起き上がるエヴァン。一体どこまで気遣ってくれるんだ、と薫は体勢を整えた彼のキスを受け入れた。
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