17 / 35
第17話
その後、駿太郎と友嗣は揃って自宅に戻る。駿太郎は夕飯がまだだったので、友嗣が喜んで作ると言い出し、具沢山のお雑煮を作ってくれた。正月らしい食事を、と思って餅を買っただけなのに、こんなに美味しい料理になるなんてとホクホクしながら食べる駿太郎を、友嗣もニコニコしながら眺めていた。
そしてそれぞれ風呂に入り、揃ってベッドに入る。駿太郎は抱きつかれて眠り、起きたら朝だった。
「……」
あまりにも自然に二人でベッドに入ったな、と悶えていると、友嗣の腕に力が込められる。
「行かないで……」
小さい声だったけれど、彼は確かにそう言った。寝言なのかな、と思って顔を覗くと、うっすらと目が開いている。
「どこにも行かない」
そう言って頭を撫でると、心地よさそうに目を伏せる彼。もしかしてと思って、駿太郎は尋ねてみる。
「俺がいなくて寂しかったのか?」
「うん……」
素直に頷く友嗣がかわいくて、胸が甘く締めつけられながらも「ごめんな」と謝った。すると友嗣は、ううん、とはにかんだように笑うのだ。
(かわいい……)
甘えられると弱い駿太郎は、多分兄だからというのもあるのだろう。かわいがりたいという母性本能がムクムクと湧き上がってくるのだ。
「友嗣、今日は何する?」
本来は今日、実家から帰ってくるはずだったので、今日の予定は何もない。光次郎に挨拶せずに帰ってきたから文句は言われるだろうが、父に背中を押してもらったからか、気分は軽い。
「ん? シュンのしたいこと」
目を細め、柔らかく微笑む友嗣はやはり綺麗だ。その顔が近付いたので思わず両頬を掴んで止めると、途端に彼の唇が尖る。
「こら、手は出さないって約束だろ?」
「えー? ほんとにここではしないの?」
しない、と言いながら、駿太郎は起き上がりざまに友嗣の唇にキスをする。すると素早く腕を掴まれ、引き寄せられた。バランスを崩した駿太郎は友嗣の上に倒れ込むと、後頭部を押さえつけられ唇が合わさる。
「ちょ……っ」
ほんの冗談だ、と離れようとした頭をまた引き寄せられた。ぬるりとした感触に肩を震わせると、目の前の男は嬉しそうに目を細める。
「ん、……んん……っ」
がっちりと頭を押さえつけられ、逃げることができないまま口内を蹂躙された。上顎を舌先でくすぐられ、うなじがチリリとして思わず身体を起こそうとするけれど、かなわない。
「……あは、敏感」
「……るさい……」
口を離した友嗣は満足気に笑った。こんなことで、しっかりと反応してしまう自分が恨めしい。駿太郎は友嗣を睨むけれど、迫力がないのは自分でもわかっている。
「シュンがしたいこと、しよ?」
そう言いながら、友嗣は頬を撫でてくすぐってきた。崩れそうな理性を保ちながら、駿太郎は勢いよく友嗣から離れる。
「そうだデートしようそうしよう!」
このまま流されたら一日ベッドから出られない自信がある。新年早々、そんな爛れた生活は嫌だし、恋人ならお互いの休日が合った時くらいは、恋人らしいことを……。
(いや、だから朝からはなしだ!)
思わずまた流されそうになって、駿太郎はベッドから降りる。
しかし友嗣の反応はない。気になって彼を見ると、驚いたような顔をしていた。
そういえば同棲して数日間しか経っていないにも関わらず、友嗣のこういう表情をよく見ているな、と思う。何をそんなに驚くことがあるのだろう、と声をかけると、彼は戸惑ったように目を泳がせた。
(これも……そういえばヤッた時に見たな)
「……でーと?」
心底不思議そうな声が友嗣からする。もしかして、と思って駿太郎は再びベッドに座った。
「そう、デート。もしかして初めてか?」
友嗣の元恋人とはどういう関係だったのか、駿太郎は詳しく知らない。けれど、身体の関係があったことはよく知っている。ひょっとすると、今までそういう関係でしか、恋人を作ったことがないのかも、と思ったのだ。
「でーとって、なにするの?」
そう言った友嗣の声は、一気に幼くなったように舌っ足らずになった。やはり今までの恋人は、恋人ではなくセフレだったのかな、と駿太郎は彼の頭を撫でる。
「二人で外に遊びに行くんだよ」
あそびに、とオウム返しをする友嗣。どこに行きたい? と聞くと、それまで戸惑っていたようだった彼はにっこりと笑った。
「シュンが行きたいところ」
「……俺じゃなくて。友嗣が行きたいところを聞いてるんだけど」
駿太郎はそう言うと、友嗣はあからさまに狼狽えた表情をした。二人でやりたいことはないかと問えば、シュンがしたいことならなんでも、と返ってくる。
大きなため息が出た。すると友嗣は縋るようにこちらを見たのだ。
「シュン? ごめん、おこっちゃった?」
ゆるして、と言う友嗣はやはり実年齢よりだいぶ幼く見える。上目遣いで見てくるのでかわいいと思うけれど、絆されているのを表に出すのは憚られた。代わりに、こほん、とわざとらしい咳払いをする。
「じゃ、ショッピングモールでも行くか? 混んでると思うけど」
「……っ、うん!」
友嗣の顔がぱあっと明るくなった。背景に花でも飛びそうな勢いなので、駿太郎は思わず笑う。無意識に手を伸ばし、彼の頭を撫でると、友嗣はまた驚いたように目を見開いた。
駿太郎はそれに気付き、パッと手を離す。
「あ、いや、悪い……」
「シュンー! 好きー!」
「ぅわ……っ!」
抱きつかれてベッドに引き倒される。自分より体格がいい友嗣には、やはり力ではかなわない。
(ほんと、図体がでかいだけの子供って感じだな……!)
ちゅうちゅうと顔に吸い付いてくる友嗣を放置し、彼の愛情表現が終わるまで、駿太郎は遠い目をしながら待っていた。
そしてそれぞれ風呂に入り、揃ってベッドに入る。駿太郎は抱きつかれて眠り、起きたら朝だった。
「……」
あまりにも自然に二人でベッドに入ったな、と悶えていると、友嗣の腕に力が込められる。
「行かないで……」
小さい声だったけれど、彼は確かにそう言った。寝言なのかな、と思って顔を覗くと、うっすらと目が開いている。
「どこにも行かない」
そう言って頭を撫でると、心地よさそうに目を伏せる彼。もしかしてと思って、駿太郎は尋ねてみる。
「俺がいなくて寂しかったのか?」
「うん……」
素直に頷く友嗣がかわいくて、胸が甘く締めつけられながらも「ごめんな」と謝った。すると友嗣は、ううん、とはにかんだように笑うのだ。
(かわいい……)
甘えられると弱い駿太郎は、多分兄だからというのもあるのだろう。かわいがりたいという母性本能がムクムクと湧き上がってくるのだ。
「友嗣、今日は何する?」
本来は今日、実家から帰ってくるはずだったので、今日の予定は何もない。光次郎に挨拶せずに帰ってきたから文句は言われるだろうが、父に背中を押してもらったからか、気分は軽い。
「ん? シュンのしたいこと」
目を細め、柔らかく微笑む友嗣はやはり綺麗だ。その顔が近付いたので思わず両頬を掴んで止めると、途端に彼の唇が尖る。
「こら、手は出さないって約束だろ?」
「えー? ほんとにここではしないの?」
しない、と言いながら、駿太郎は起き上がりざまに友嗣の唇にキスをする。すると素早く腕を掴まれ、引き寄せられた。バランスを崩した駿太郎は友嗣の上に倒れ込むと、後頭部を押さえつけられ唇が合わさる。
「ちょ……っ」
ほんの冗談だ、と離れようとした頭をまた引き寄せられた。ぬるりとした感触に肩を震わせると、目の前の男は嬉しそうに目を細める。
「ん、……んん……っ」
がっちりと頭を押さえつけられ、逃げることができないまま口内を蹂躙された。上顎を舌先でくすぐられ、うなじがチリリとして思わず身体を起こそうとするけれど、かなわない。
「……あは、敏感」
「……るさい……」
口を離した友嗣は満足気に笑った。こんなことで、しっかりと反応してしまう自分が恨めしい。駿太郎は友嗣を睨むけれど、迫力がないのは自分でもわかっている。
「シュンがしたいこと、しよ?」
そう言いながら、友嗣は頬を撫でてくすぐってきた。崩れそうな理性を保ちながら、駿太郎は勢いよく友嗣から離れる。
「そうだデートしようそうしよう!」
このまま流されたら一日ベッドから出られない自信がある。新年早々、そんな爛れた生活は嫌だし、恋人ならお互いの休日が合った時くらいは、恋人らしいことを……。
(いや、だから朝からはなしだ!)
思わずまた流されそうになって、駿太郎はベッドから降りる。
しかし友嗣の反応はない。気になって彼を見ると、驚いたような顔をしていた。
そういえば同棲して数日間しか経っていないにも関わらず、友嗣のこういう表情をよく見ているな、と思う。何をそんなに驚くことがあるのだろう、と声をかけると、彼は戸惑ったように目を泳がせた。
(これも……そういえばヤッた時に見たな)
「……でーと?」
心底不思議そうな声が友嗣からする。もしかして、と思って駿太郎は再びベッドに座った。
「そう、デート。もしかして初めてか?」
友嗣の元恋人とはどういう関係だったのか、駿太郎は詳しく知らない。けれど、身体の関係があったことはよく知っている。ひょっとすると、今までそういう関係でしか、恋人を作ったことがないのかも、と思ったのだ。
「でーとって、なにするの?」
そう言った友嗣の声は、一気に幼くなったように舌っ足らずになった。やはり今までの恋人は、恋人ではなくセフレだったのかな、と駿太郎は彼の頭を撫でる。
「二人で外に遊びに行くんだよ」
あそびに、とオウム返しをする友嗣。どこに行きたい? と聞くと、それまで戸惑っていたようだった彼はにっこりと笑った。
「シュンが行きたいところ」
「……俺じゃなくて。友嗣が行きたいところを聞いてるんだけど」
駿太郎はそう言うと、友嗣はあからさまに狼狽えた表情をした。二人でやりたいことはないかと問えば、シュンがしたいことならなんでも、と返ってくる。
大きなため息が出た。すると友嗣は縋るようにこちらを見たのだ。
「シュン? ごめん、おこっちゃった?」
ゆるして、と言う友嗣はやはり実年齢よりだいぶ幼く見える。上目遣いで見てくるのでかわいいと思うけれど、絆されているのを表に出すのは憚られた。代わりに、こほん、とわざとらしい咳払いをする。
「じゃ、ショッピングモールでも行くか? 混んでると思うけど」
「……っ、うん!」
友嗣の顔がぱあっと明るくなった。背景に花でも飛びそうな勢いなので、駿太郎は思わず笑う。無意識に手を伸ばし、彼の頭を撫でると、友嗣はまた驚いたように目を見開いた。
駿太郎はそれに気付き、パッと手を離す。
「あ、いや、悪い……」
「シュンー! 好きー!」
「ぅわ……っ!」
抱きつかれてベッドに引き倒される。自分より体格がいい友嗣には、やはり力ではかなわない。
(ほんと、図体がでかいだけの子供って感じだな……!)
ちゅうちゅうと顔に吸い付いてくる友嗣を放置し、彼の愛情表現が終わるまで、駿太郎は遠い目をしながら待っていた。
あなたにおすすめの小説
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
最悪の婚姻から始まるただ一つの愛
統子
BL
最悪の婚姻だった。
皇太子の正室として迎えられながら、
与えられたのは祝福ではなく、冷たい部屋と拒絶だけ。
触れられることすら恐ろしく、
ただ静かに時間が過ぎるのを待つしかなかった。
けれど——
差し出された手は、思っていたものとは違っていた。
無理に触れない。
急がない。
ただ、こちらの様子を確かめるように、少しずつ距離を縮めてくる。
気づけば、隣に座ることが当たり前になり、
言葉を交わす時間が、夜の習慣になっていた。
触れられるたびに怖さは消え、
代わりに残るのは、離れがたい温もり。
これは、最悪の婚姻から始まった関係が、
やがて“ただ一人”へと変わっていく物語。
望まれなかったはずのはじまりが、
いつしか、何よりも大切なものになるまでの——
静かで、優しい、溺れるような愛の記録。
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。