《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ

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16. 邂逅そして共鳴

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    ひいばあが見つけた新聞の小さな記事。
    見出しは"行方不明の少女、十二年ぶりに発見される"

    (えーと、詳細は……)

 十二年前に行方不明になっていた少女が発見、保護された場所の住所は、私の家からそれ程離れていない。

 「やっぱり、私がかつて転移してきた場所と同じだわ……」

 「そうなの?」

 ひいばあの言うことも気になるが、とりあえずは記事を読み進める。

 行方不明となった経緯は、都会に住む人々の避暑地として有名な某所にある親戚の別荘に両親と共に訪れ、皆が夕飯の準備を行っている間、わずかに目を離した隙に姿が見えなくなり、それに気づいた両親が探したが何処にも見当たらなかった。
 警察を呼び、別荘周辺をくまなく探したがそれでも見つからず、地元の消防隊員を含めた大規模な山狩りを行ったがそれでも全く行方が掴めず、生存は絶望的としてやがて一月もせずに捜査は打ち切られてしまった。

 「発見された少女の名前は……如月世良(きさらぎせら)ちゃん 当時三歳か」

 この記事が二年前のものだから、発見された当時は十五歳、今現在は十七歳か。
 それにしてもひいばあは良く覚えていたものだと思うが、自分が転移して来た場所というのが印象強かったのだろう。
 それにしてもこの記事は何故こんなに扱いが小さいのだろう。
 本来なら大事件で一面トップでも良いくらいではないかと思い、他の記事を確認する。
 この時世間を騒がせていたのは、凶悪な連続殺人事件。
 ネットで共犯者を募り、殺人を繰り返していた犯罪者集団が捕まった事件が一面のトップだ。
 他にもこの時期は大物政治家の汚職や、将来を有望視されていた若手俳優の覚醒剤所持等々センセーショナルな事件が重なった。
 そんな中、事件性も乏しいとされた少女の事件は扱いも小さく、人々の記憶から早々に忘れ去られる事となった。
 最も当事者の家族からすれば、世間の好奇の目に晒されるよりはその方が良かったのかもしれない。

 「ねえ、ひいばあ。 この人もしかしたらひいばあの世界にいたかもしれないんだよね?」

 「そうね……戦鳥の力を持っているのだから間違い無いとして、一体どうやってあちらに転移したのかしら? それに十二年もの間どうやって過ごしていたのか……」

 戦鳥の少女の正体が分かったとしてまだまだ謎は多い。
    発見直後の少女は日本語が通じず、世間的には何処にいたのか何をしていたのかも分からずじまいで終わっている。
 何にせよ、名前が分かったとしても何処に住んでいるかまでは分からない。
 ここで調べられる事はもう無いので、私達は図書館を後にし家に帰る。

    「ただいま」

    「お帰り、収穫はあったかな?」

    家に帰るとじぃじが出迎えてくれる。
    じぃじの相手はひいばあに任せて私は部屋に戻る。
    あの一件以降、挨拶くらいはするがそれ以外は口を訊かない。

    部屋に戻ったもののネット上では、行方不明の事件がどのように扱われているか気になり調べる為にリビングに向かう。
    ソファーでじぃじが雑誌を見ているのを尻目に、私はテーブルについてタブレットを見る。

    (やっぱり、大した情報は載ってないか……)

    タブレットをしまうと、まだ雑誌を見ているじぃじが目にはいる。

    「ねえ、じぃじ。    あの女の人は誰?」

    「うん?    ああ、カフェで連れていた女性ひとか、中学の時の同級生だ。    婆さんの葬式にも来てたんだが、覚えてないか」

    ばぁばの葬式には沢山の人が来たから一々覚えていない。
    それより何より、悲しくてずっと泣いていたから葬儀自体の事も……。

    「あの女性ひとと何処に行ってたの?」

    「狂言を見に行った。    彼女から声を掛けてくれたんだ。    やもめ同士良い機会だった。    楽しめたよ」

   「 ……そうなんだ」

    「今度、お礼にミュージカルにでも誘おうと思ってる」

    「……」

    私は何も言わずその場を立ち去り、部屋に戻る。
    ベッドに寝転び先程の事を考える。

    じぃじの中にはもうばぁばは居ないのだろうか、愛し合い結婚してもどちらかが死んでしまえばそれまでで、直ぐに忘れ去られでしまう。
    それならば、結婚なんて意味がない、私はそんな事しない。
    そうこう考えている内に、私はいつの間にか眠りについていた。

    ここは何時もの夢?
    いや、何か様子が違う。
    風景それとも景色だろうか、具体的に写し出されている。
    そして、この場所は知っている。
    やがてこの景色の中に一羽の鳥が飛び込んで来る。

 「あれは、白い鳥!」

 はっと目が覚める。
 時計を見るが、小一時間眠っていたようだ。
 この夢はもしかし、てあの白い鳥があの景色の場所に現れるとい事を予言しているのだろうか。


 「聞いたわよ。 羽音にデートを見られたそうね」

 「母さん? うん、あの子は随分動揺していたようだったね。 もう少し大人だと思っていたんだが……」

 「あの子はまだ子供よ。 それより浩平、人探しをしているの。 あなたの力が必要だわ」

 「俺のつての出番かな? 分かったよ母さん。 でも、母さんも無理しないで」

 「分かっているわ。 お願いね」



 週明けの学校は、度重なる厄災の襲撃に生徒全員が浮き足立っているように感じた。
 そして、その週の比較的放課後に余裕のある日に私は夢に見た場所に向かう。
 あれは隣の区にある緑地だ。
 学校の近くのバス停から緑地行きのバスに乗り、入り口で降りる。
 しかし、ここからが問題だ、かなりの広さがあるから何処から探せばよいのか迷ってしまうが、とりあえず私は中央の広場に向かった。
 平日の午後だがそれなりに人はいる。
 新聞で見た写真の顔を思い浮かべながら、若い女性の顔を重点的に確認しながら歩く。
 そう簡単に見つかるものでは無いと思いつつ歩いていると、中央の噴水でまたもやあの人物に出くわす。

 「あの、お願いです。 話を聞いてください」

 「すいません。 急いでいるんです」
 
 例の上級生が若い女性と話をしているが、女性の方はいかにも迷惑そうな顔をしている。
 しかし、この女性はあの行方不明になっていた少女の写真と良く似ている。
 いや、間違いない、この女性があの戦鳥の少女。
 視力の良い上級生は階段を上ったあの時顔が見えたのだろうが、それにしても良くこの人に辿りつけたと関心してしまう。
 だが、関心ばかりしてもいられない。
 用事があるのは私もそうだし、何より重要度が違う。
 それに、女性に嫌がられているのにしつこく迫るなんて、直ぐにやめさせなければならない。

 「あの! 何してるんですか。 嫌がっているじゃないですか!」

 「ああ、君か。 今この人と大事な話をしているんだ邪魔しないでくれるかな」

 「なっ!」

 相手が迷惑そうにしているから、止めるように言っているのだ。
 しかも大事だなんて自分の好奇心を満たしたいだけだろうに、私の中にはふつふつと怒りの感情が湧き上がってくる。

 「少しだけでいいんです。 話をさせて下さい!」

 言うが早いか、上級生は女性の腕をつかんだ。
 はい、これは完全にアウト。
 最早躊躇していられない、これはもう女性からしてみれば暴漢も同じだ。
 多少のよしみはあるが、それでも酌量の余地は無い。
 暴漢と成り果てた上級生を排除する為に私は、呼吸と整え構える。
 そしてーー

 「セエーーイッ」

 腰を捻り、片足を思い切り振り上げる。
 上段回し蹴り、狙うのは顔面だ。
 蹴りが顔面にヒットしようとした瞬間、「パシッ」と音が響く。
 私の放った回し蹴りは顔面に届く前に女性に止められてしまった。

 「えっ、うそ」

 私は渾身の力を込めて蹴りを放った筈だ、それなのにこの女性は何の衝撃も感じさせる事なく止めてしまった。

 「あなた、闘技の経験があるのね? それなのに素人に技を使用して……怪我でもさせたらどうするつもり」

 「ご、ごめんなさい」

 確かにこの人の言うとおりだ。
 まともに当たっていたら男性といえども大怪我になっていたかもしれない。
 この人を助ける為とはいえ、私も頭に血が上っていた。
 しかして、命拾いした当人は、ある一点を集中して見ている。
 それは何処か。
 答えは片足を上げ、大またになった私のスカートの中。

 「こらーっ! 見るなーっ」

 「うーん意外と大人っぽい」

 「んがーっ」

 以前ひいばあと服の買出しに行った際に、ちょっと大人っぽいと思いつつもお小遣いをはたいて買ったパンツだが、まさかこんな形で男性に見せることになるとは思いもよらなかった。
 いやいや、見せる為に買った訳では決して無い。

 「あの、ちょっと」

 私の足は女性にがっちり掴まれていてびくともしない。

 「あら、ごめんなさい」

 女性はぱっと手を離すがいきなり離されるとバランスを崩してしまう。
 片足でケンケンしてしまい、後ろに倒れそうになる所を女性が受け止める。

 「大丈夫だった」

 受け止めてくれた女性を見上げる。
 私よりかなり背が高い。
  
  「貴方もいい加減にして下さい。 でないと警察を呼びますよ」

 警察と言われて流石に怯んでしまい、上級生は一言謝ると退散した。

 「それじゃ、失礼」

 女性もこの場を離れようとするが、私は呼び止める。

    「待って下さい。    貴女は白い戦鳥の人ですよね?」

    その言葉に女性は立ち止まり振り向く。

    「あの……私のひいばあに会って下さい。    黒い戦鳥、黒き死の翼の人です」

    「ひいばあ?」

    「私の曾祖母です」

    「それほど高齢な人が戦鳥を?    貴女の話は要領を得ないわ」

    「会って貰えれば分かります。    今連絡しますから」

    「その必要は無いわ」

    声のする方を向くと意外な人物が立っていた。

    「ひいばあ!    どうしてここに?」

    「私なりに彼女の家を調べたの。    それで向かう途中にね……刻印が鳴いたの」

    「刻印が?」

    「そう、貴女も感じなかった?    どうやら刻印を持つ者同士、共鳴するみたいなのよ」
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