《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ

文字の大きさ
27 / 202

18. 蘇りし王朝

しおりを挟む
    「ラウの国が滅んだのは五百年前?」

    世良さんの放った言葉に私もひいばあも衝撃を受ける。

    「驚くのも無理はないわね。    私もそうよ、なにせ五百年前の人物と話をしているのだから」

 そう言いつつも世良さんは神妙な面持ちのままだ。
 しかし、ひいばあからしてみれば、世良さんは五百年後の未来の異世界にいた事になるが、何故二人の間にはこのような年月の開きがあるのだろうか。

    「……ねぇ、世良さん」

    「世良で良いですよ、理音さん」

    「世良、貴女が五百年後のあちらにいたとして、当時幼かったのにどうやって生き延びたの?」

 言葉も習慣も違う世界に齢三歳の少女が一人投げ出されて生き延びられる道理は無い。
 あちらに転移した直後、世良さんは早々にとある人物に保護される事になる。

 「アスレア?」

 「そう、異世界に転移した直後気を失っていた私が目覚めた時、彼が居たの。 彼は旅をしていたのだけれど、私を保護してそれ以降二人で旅を続けたのよ」

 世良さんはアスレアという人物に助けられ、異世界でも何とか生き延びる事が出来た。
 話は更に続く。

 「そして、理音さん。 アスレアは貴女にとって縁のある人物なの」

 「私に?」

 「彼は普段、土木屋の息子又は流浪の旅人と名乗っていたわ。 でもこれは本当の名前では無いの」

 名前というのはこの場合苗字を含むものを指すのだが、偽名だということだろうか。

 「彼の本当の名は、亡国の王子アルスの末裔にしてラウ王朝の正当なる後継者アスレア……ラウ王朝の血統を継ぐ者よ」

 「アルスの末裔」

 「ラウ王朝の後継者」

 「そうよ、アスレアは理音さんの弟の子孫なの。 彼の旅の目的は、一つは王朝の復活、そしてもう一つは帝国の打倒よ」

 王朝の復活とは、帝国の打倒とは何か、私達は世良さんの話に真剣に聞き入る。
 ラウの国が滅びた後、いくつかの王朝が立ち、そして倒れ他国の影響下にあった時代もあったという。
 そして、世良さんがいた時代は帝国が国を支配し、人々を圧政で苦しめていた。
 帝国の圧政に苦しむ人々は、かつて賢王の元に繁栄を極めた王国の復活を望むようになる。
 やがて神託は下され、帝国打倒のために一人の少年が使わされる。
    それが、王家の血を引く者アスレア

    「それで、どうなったの?」

    「十二年に及ぶ戦いの末に帝国は倒され、アスレアは王に即位したわ。ラウの国は甦ったのよ」

    世良さんは幼い頃こそ非力な少々だったが、成長に伴い力をつけて、アスレアと共に帝国打倒の戦いに身を投じた。
    戦鳥の力もその過程で授かったという。
    だが、ここで疑問が湧く、これは人同士の争いなのだ。
    何故戦鳥の力が必要だったのか世良さんは疑問に答える。

    「帝国が隆盛を誇っていたのは一重に、強大な軍事力があったからこそなの。    そしてその戦力の要になっていたのが、厄災だったのよ」

    「そんな!    厄災が人間に力を貸したというの?」

  「力を貸したというか、帝国は単に利用されていただけだと思うわ。 最後の戦いの時、皇帝は厄災の力で怪物と成り果てて私達の前に立ちはだかったの」

 最終決戦の地は皇帝の築いた城の最深部、攫ってきた人々を厄災に作り変える施設があったそうだが、皇帝の死と共に最期の爆発で炎に包まれ城も何もかも全て焼失しまったという。
 そして帝国の崩壊と共に厄災は姿を消した。

 帝国が倒された後、アスレアが王に即位するのを見届け、五百年後も健在だった転移の間を利用して世良さんはこちらに帰って来た。

 「私が転移した後、五百年後の世界でそんな事があったのね」

 「そうよ、そしてラウの国は蘇ったの。 きっと今でもアスレアは良き王として国を治めているはずだわ」

 世良さんの瞳は遠くを見つめている、何か遠い記憶を思い出しているかのようなそんな表情だ。
 それにしてもラウの国は滅んでしまったが、遠い未来に蘇った。
 そしてそれは、王朝の血を引く者の手によって成されたのだから、ひいばあの思いも一入ひとしおだろう。
 しかし、未だ話しは終わりでは無い。
 これからの事を考えなければならないのだから……。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...