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20. 黒と白の翼
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世良さんと知り合ってからの最初の週末。
バスに乗って再び彼女の家に向かう。
車内では、ひいばあと特に会話は無いので考え事にふける。
アスレア王の事も気になるのだが、もう一つ引っかかる事がある。
世良さんは、この世界を守るのに消極的なように思う。
ひいばあも協力を頼んだあの時に感じたと思うのだが、敢えて触れていなかった。
世界を守る、ひいては家族を守るという事に繋がるのだから、それは世良さんも同じでは無いのだろうか。
そうこう考えているうちに、バスは緑地に着くがひいばあはそこで降りようとする。
このまま乗っていても緑地を突っ切っても時間は同じだと思うのだが、私も慌てて降りる。
「ねぇ、何で降りたの?」
「世良はここに居るわ」
刻印を持つものは共鳴すると言っていたが、居場所が分かるのは便利なような気もする一方、プライベートが無いようで不便だなと思う。
だが、ひいばあの言うとおり世良さんは初めて出会ったあの場所に居た。
「こんにちは、理音さん、羽音さん」
「こんにちは、世良」
「こんにちは、世良さん。 私の事は羽音で良いですよ」
合流しマンションに向かう。
ひいばあと世良さんが並んで歩き、私は一歩後ろを歩く。
「わざわざ出迎えてくれたの? 余り気を使わなくてよいのに」
「出迎えたというか、私はこの場所が好きなんです。 緑が多くて落ち着けるから。 言葉や文字の勉強がてら、ここでよく本を読んだりしてるんです」
聞けば世良さんは通常の学校では無く、特別支援学校に通っているのだという。
だが、こうして話しているのを見る限りでは言葉に関しては何も不自由は無いように感じる。
「話す分には問題無さそうね。 文字はどう?」
ひいばあは随分明るく話し掛けている。
「文字は難しいですね。 まだまだ勉強中です」
「直ぐに慣れるわ。 文法も同じだし、表意文字と表音文字の組み合わせで現すのも似ているでしょう?」
ひいばあや、世良さんの居た世界でもこちらで言う所の漢字や平仮名の組み合わせで文を構成していたのだという。
文体も変わらないので割りと直ぐに覚えられると言っていたが、そんな類似点があるとは知らなかった。
「私も勉強してみようかな?」
少し興味が湧いたのだが、学んだ所で役立つ訳でもないのに何故かそんな事を考えた。
「くつろいでいて下さい」
「手伝うわ」
お茶を入れようとする世良さんにひいばあもくっついて行ってしまった。
すっかり私は放置されているが、ひいばあは世良さんの事を大分気にかけている。
まぁ、あの二人は共に戦う仲間なのだからむしろ私の方が邪魔者なのだ。
今日も何故ついて来たかというと、世良さんが最近の女子の間での流行りや話題になっている事が知りたいというので、そういった話をする為だ。
そうで無ければひいばあは私を連れていくような事は決してしなかっただろう。
言い知れようの無い疎外感に包まれてながらも二人を待っていたが、突如としてけたたましいアラームが鳴り響く。
携帯の緊急速報だが、恐らくは厄災の出現を告げるものだ。
二人はお茶を入れるのを中断し、戻って来る。
「場所は何処?」
「場所は……ここから最寄りの駅だよ」
「行きましょう、理音さん。 こっちです」
世良さんに誘導され、外に出て非常階段を登ると屋上に出る。
なるほど、ここなら戦鳥を召還しても誰にも見られる事は無い。
二人は互いの魔方陣が干渉しないように離れ、意識を集中させる。
やがてそれぞれの頭上に魔方陣が描かれて、戦鳥が出現する。
ひいばあが戦鳥を纏う所は何度か見たが世良さんのは初めてだ。
白い大きな翼を持つ戦鳥。
その名を"破邪の大翼"というそうだ。
白い翼はやはりその形を崩し、世良さんの肢体を覆う。
黒と白の翼は互いに見合い、頷くと翼をはためかせて戦場へと飛び立つ。
一人取り残された私はどうすればよいのだろう……。
答えてくれるものは誰もいない。
バスに乗って再び彼女の家に向かう。
車内では、ひいばあと特に会話は無いので考え事にふける。
アスレア王の事も気になるのだが、もう一つ引っかかる事がある。
世良さんは、この世界を守るのに消極的なように思う。
ひいばあも協力を頼んだあの時に感じたと思うのだが、敢えて触れていなかった。
世界を守る、ひいては家族を守るという事に繋がるのだから、それは世良さんも同じでは無いのだろうか。
そうこう考えているうちに、バスは緑地に着くがひいばあはそこで降りようとする。
このまま乗っていても緑地を突っ切っても時間は同じだと思うのだが、私も慌てて降りる。
「ねぇ、何で降りたの?」
「世良はここに居るわ」
刻印を持つものは共鳴すると言っていたが、居場所が分かるのは便利なような気もする一方、プライベートが無いようで不便だなと思う。
だが、ひいばあの言うとおり世良さんは初めて出会ったあの場所に居た。
「こんにちは、理音さん、羽音さん」
「こんにちは、世良」
「こんにちは、世良さん。 私の事は羽音で良いですよ」
合流しマンションに向かう。
ひいばあと世良さんが並んで歩き、私は一歩後ろを歩く。
「わざわざ出迎えてくれたの? 余り気を使わなくてよいのに」
「出迎えたというか、私はこの場所が好きなんです。 緑が多くて落ち着けるから。 言葉や文字の勉強がてら、ここでよく本を読んだりしてるんです」
聞けば世良さんは通常の学校では無く、特別支援学校に通っているのだという。
だが、こうして話しているのを見る限りでは言葉に関しては何も不自由は無いように感じる。
「話す分には問題無さそうね。 文字はどう?」
ひいばあは随分明るく話し掛けている。
「文字は難しいですね。 まだまだ勉強中です」
「直ぐに慣れるわ。 文法も同じだし、表意文字と表音文字の組み合わせで現すのも似ているでしょう?」
ひいばあや、世良さんの居た世界でもこちらで言う所の漢字や平仮名の組み合わせで文を構成していたのだという。
文体も変わらないので割りと直ぐに覚えられると言っていたが、そんな類似点があるとは知らなかった。
「私も勉強してみようかな?」
少し興味が湧いたのだが、学んだ所で役立つ訳でもないのに何故かそんな事を考えた。
「くつろいでいて下さい」
「手伝うわ」
お茶を入れようとする世良さんにひいばあもくっついて行ってしまった。
すっかり私は放置されているが、ひいばあは世良さんの事を大分気にかけている。
まぁ、あの二人は共に戦う仲間なのだからむしろ私の方が邪魔者なのだ。
今日も何故ついて来たかというと、世良さんが最近の女子の間での流行りや話題になっている事が知りたいというので、そういった話をする為だ。
そうで無ければひいばあは私を連れていくような事は決してしなかっただろう。
言い知れようの無い疎外感に包まれてながらも二人を待っていたが、突如としてけたたましいアラームが鳴り響く。
携帯の緊急速報だが、恐らくは厄災の出現を告げるものだ。
二人はお茶を入れるのを中断し、戻って来る。
「場所は何処?」
「場所は……ここから最寄りの駅だよ」
「行きましょう、理音さん。 こっちです」
世良さんに誘導され、外に出て非常階段を登ると屋上に出る。
なるほど、ここなら戦鳥を召還しても誰にも見られる事は無い。
二人は互いの魔方陣が干渉しないように離れ、意識を集中させる。
やがてそれぞれの頭上に魔方陣が描かれて、戦鳥が出現する。
ひいばあが戦鳥を纏う所は何度か見たが世良さんのは初めてだ。
白い大きな翼を持つ戦鳥。
その名を"破邪の大翼"というそうだ。
白い翼はやはりその形を崩し、世良さんの肢体を覆う。
黒と白の翼は互いに見合い、頷くと翼をはためかせて戦場へと飛び立つ。
一人取り残された私はどうすればよいのだろう……。
答えてくれるものは誰もいない。
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