《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ

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92. 共闘再び(中編)

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 「うおぉぉぉ!!」

 「凄い! フフ、本当に…」

 大翼の渾身の蹴りをシールドで防ぐ…本来対象に放たれる筈であったエネルギーの余波は周囲に拡散し、厄災たちを襲うと次々と爆散して行く…そう、あれはともすれば自信の未来の姿だ。

 『…何という力、持たぬやもしれませぬ』

 「そうね。 フ…そろそろ本当に不味いかも」


 『世良…挨拶だったらこのくらいでいいんじゃ無いか?』

 「…そうね」

 
 「?」

 『諦めたか?』

 ギリギリの所で、大翼は攻撃を中止してやや離れる。 あのまま続けても力を消耗するだけとの判断であれば間違ってはいない。 こちらの盾は二つでは無いのだから…。

 「…不死鳥ならまだしも、貴女までこちらに仕掛けて来るなんて…」

 「……」

 「今の私たちの敵は厄災ただ一つ、それが理解出来いのかしら? どうやら買い被り過ぎたようね」

 「…私は貴女のしたことが許せなかった。 ただそれだけよ」

 「?…ああ、死の翼、出て来れないようね…」

 「貴女の所為よ!!」

 『速い!…』

 大翼の爪による急襲も何とか防ぐが、その後の怒涛のラッシュで押し込まれてしまい、防戦一方になってしまう…しかし、隙が無い訳では無い、後退する速度を速め距離を取って、遠距離から攻撃を行う。

 「くっ!」

 『距離を取られると厄介だな…』


 「フッ、敵の戦力を削ぐのは、兵法としては当たり前の事。 それに…」

 「それに?」

 「私にも軍での立場があるのよ。 あなた達のスカウトに失敗した以上、何かしら手を打っておかねば、危うくなってしまうわ」

 「そんな事の為に!!」

 更なる追撃を仕掛けるが、護りの翼は距離を取る事に専念し、そして…。

 『ミサイル、来るぞ!!』

 「遅い!」

 ミサイルをかいくぐって再び接近するのだが、またしても盾にはばまれ押し合いにいなる。

 「貴女は愚か者よ! 己の身の保身に走り、厄災に対抗しうる手段を一つ失ってしまった!」

 「…それはどうかしら? 真王国に下れば、直ぐにでも戦鳥の力は蘇るわ。 そして、宿命の子の力を発現させる事も…」

 全ては計算済み、とでも言わんばかりだが、そのマスクの下ではきっと不敵な笑みを浮かべているに違いない。 それを肯定するようで気に入らないのだが、これ以上の攻撃もまた意味が無いので、距離を取る。 

 『世良…』

 
 「それに、戦いにおいては卑怯も汚いも無く、結果が全て、では無いかしら? 敗者の弁など誰も聞いてはくれない…。 貴女だってよく知っているでしょう?」

 『言いたい放題言ってくれる…』

 
 「…貴女は一体何者なの? 戦鳥の力を持ち、軍でも特別な権限を持ち、更には魔法にも通じている…」
 
 「アラ、それを言うなら貴女だって…貴族の娘として過ごした歳月は三年ほど…しかし、アスレア王に再会出来たのは十二の歳」

 「……」

 「この空白の歳月に貴女は何をしていたのかしら? そして、再会から戦鳥の力を得るまでもそう…謎が多いのはお互い様のようね」

 『世良…これ以上は時間の無駄だ…』

 「そのようね…」

 敵対しないというのであれば、無視して厄災だけに集中すれば良い…対峙している間にも転移してきた第二波が壁に向かって侵攻しているが、あちらで生み出された三つ目や、蜘蛛まで出現している…。

 「急ぎましょう!」

 新たに出現した厄災を倒そうとしたその時、突如大きな爆発音が鳴り響く。

 「!?何事なの」

 『アレを見ろ!』

 音がしたのは壁の向こう、工業施設が密集しているその一角で黒い煙が上がっているが、それだけでは無い…。

 「なっ! また!!」

 今度は連続して、爆発音が鳴り響き、火柱が吹き上がる…直撃した建物は音を立て崩れ去り、やがて炎に包まれてしまい周囲に火災を発生させてしまうのだが…。

 「何故、建物が攻撃されているの? まさか、壁が破壊された!?」

 『イヤ、壁は健在だ! 結界も弱まってはいない』
 
 「ならば、どうして…」

 『考えられるのは…結界の及ばぬ所からの攻撃…』

 「まさか、結界の効力の及ばないほどの上空からの攻撃!?」

 結界も万能では無く上空の全てをカバーする事は出来ない…だが、厄災は空高く飛ぶことは無かったので、それでも問題は無かった。 しかし、今回の攻撃はこれまでの常識が通用しない、人の生活圏を襲撃し、攫って行くこれまでの厄災の制空権を上回る高度からの爆撃…こんな事は初めてなのだ。

 「ここは私に任せて、王都への爆撃を阻止して頂戴」

 「貴女…」

 「敵は上空に居る…早くしないと、中心地が狙われるかもしれないわ」

 「…分かったわ、そちらも気をつけて」

 この場を護りの翼に任せ、高度を上げなががら王都へと引き返すが、果たして爆撃した存在の正体とは…。
 
 

 「く…皆大丈夫か!? 被害状況は?」

 「報告します。 負傷者が三名! いずれも軽症にて治療後、作戦行動を継続します。 尚、乗竜一体が怪我により、移動不可能となっております」

 「…分かった、乗竜は置いて行くしかあるまい…理音様、怪我人の手当てをお願いします」

 「分かりました」

 厄災の出現したエリアへと移動し、作戦行動を開始しようとした時、突如爆発に巻き込まれてしまったのだが、距離があった為か、被害は大したことは無かった。 しかし、ここは壁の内部であり、結界の中であるにも関わらず厄災の攻撃を受けてしまったのだが…。

 「それにしても、厄災は何処から攻撃を仕掛けたのだ?」

 「…恐らくは」

 そう言うと副長は空を見上げるので、隊長もつられて空を見上げる。 空から何かが降ってきた後、爆発が起きたとは副長の談だが、どうやら正体不明の落下物を目視出来ていたようだ。

 「私もそう思います。 厄災は結界の及ばぬ上空から爆弾を使用して攻撃してきた…そう判断します」

 「爆弾…」

 聞きなれない言葉に他の隊員も動揺したその時、またもビルの向こう側から、爆音が鳴り響く。

 「うお!」

 「近い!」

 近場への爆撃で一気に緊張感が高まる…中には空へ向かって弓を構える隊員もいるのだが、何は無くともまずこの場を離れる事だ。 このままでは、直撃を受けた建物の倒壊に巻き込まれてしまう。

 「建物の背の低い場所に移動しましょう。 このままでは、下敷きになってしまいます!」

 怪我をした隊員を庇いつつこの場を離れるが、問題は厄災の攻撃に対してどのように対処すべきかだ。 世良やキアも戦いの最中この異常事態を把握はしていても、どの程度理解出来ているかが問題だ。 もし、結果外からの攻撃だと分かったとしても、他の厄災のにより足止めされてしまって、対応出来ない可能性もある。

 「何か手はないものか…」
 
 もし、あの二人が真王国の二人と共闘していれば、誰かしらこの攻撃に対処出来るかもしれない。 しかし、それを当てにしているようでは、特殊部隊の隊員は務まらないだろう。 何とかして、作戦を考えるのだが…。

 
 「…出来る、戦鳥に頼らずとも対処出来るかもしれない」

 思いついた作戦の旨を移動の最中に隊長へと報告する。 


 
 『…見えたぞ!』

 「あれは、戦闘機型の厄災!?」

 『拡大してみたが、下面に何かを抱えている。 もしかしたら、あれが爆弾とやらか』

 何と王都を爆撃した犯人は以前戦った事もある、戦闘機型の厄災だった…。 人型へ変形も出来る厄介な相手だが、一刻も早く倒さねば被害が増すばかりだ。

 『落としたぞ!!』

 「やらせはしない!」

 十体ほどで編隊を組んでいたうちの一体が爆弾を切り離すので、加速して追いかけると…。

 「こんなものはいらないわ! 返すわよ!!」

 投下された、ラグビーボール二乗分の大きさの爆弾を蹴り上げると、編隊の中心で盛大に爆発する。 威力は中々のものだが、難を逃れた個体もいるので、各個撃破していくと意外な事実が判明した。

 『こいつら、爆弾が重い所為かえらく緩慢だな…』

 「あれだけの威力だから、相当な量の爆薬を詰め込んでいるのでしょうね」

 残った三体も難なく撃破出来るのは、ロクな反撃も出来ないからなのだが、この高度を飛べるだけでも大したものなのかもしれない。 だが、関心ばかりもしていられない…爆弾を抱えた個体の対処は難しく無いとはいえ、まだ中心地に向かっている個体もいるかもしれないのだ。

 「急ぐわよ!」

 『ああ! …イヤ、待てあれは何だ?』

 「どうしたの?」

 更に上空を見上げると、同型の厄災が飛んでいるのが確認出来る。 だが、あの個体は爆弾を抱えてはいない上に中心地とは真逆、即ち壁の外へと向かって飛行しているのだ。

 『何処へ行こうというんだ? まさか一仕事終えて帰るわけでもあるまいに』

 「そうね、でも一仕事終えて…正しく帰ろうとしているのではないかしら?」

 『?』

 「キアに通信を繋げて頂戴」

 私の考えが正しければ、事態はかなり深刻だ。 今こそ戦鳥の戦士の力を集結せねば、王都は甚大な被害を受けてしまうかもしれない…。

 「取り越し苦労だと良いけど、多分そうはいかないわね…」


 『キア、大翼から通信だ、繋げる』

 「世良殿から? …どうかしたのですか…え? 戦闘機型の厄災が…はい、分かりました」

 「何だ、どうした?」

 蒼い翼との共闘により、周辺の厄災は全て駆逐する事が出来た。 雷撃によって地上の敵は禄な反撃も出来ずに数を減らし、空中の敵は炎で焼けばさほど苦戦する事も無かったのだ。

 「王都を攻撃したのは、戦闘機型の厄災です」

 「…要は新手と言う訳か」

 先ほど聞いた話を蒼い翼にも説明を行うと、意外にもすんなりと受け入れる。 ともすれば、護りの翼と更に引き離す為の罠かも知れず、その為の方便に過ぎないかもしれないからだ。

 「割とすんなり信用するのですね」

 「今更疑って掛かっても仕方が無い、それに話の筋はちゃんと通っていたからな…」

 『来た!』

 予め、上空を見上げていたので、視界に厄災が飛び込んでくるのが確認出来る。 話にあった通り、爆弾を投下した後のようだが、問題はこれからだ。

 「よし、追いかけましょう!」

 あの個体が何処へ向かっているのか…世良殿の予測が正しければ、正に勝負はこれからなのだが、この共闘で今回も勝利を収める事が出来るのだろうか…。
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