《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ

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158. 謁見

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 『さあ、行こう』

 「はい」

 『ふえ~凄いなあ』

 そう言うとバムは二又のかぎ爪状の手で私の肩を叩くので、カンカンと乾いた金属音が暗闇に鳴り響く。

 「ハハ…珍しいよね」

 『うん、トリの神様が出て来たと思ったら、バラバラになってこうなるんだもんね~』

 (戦鳥はトリの神様か…)

 『でも良かった』
 
 「良かった?」

 『うん、キミも良きヒトだからさ…やっぱりヒトはそんなに悪い存在じゃ無いんだよ』
 
 (…キミも?)

 バムは私以外の人と接触した事があるような言いっぷりだが、どういう事なのか聞こうとすると二人とも羽を震わせて崖から飛び立つので、慌てて後へと続く。
 
 「真っ暗…」

 『モニターを赤外線に切り替える』

 切り替わったモニターには暗闇では無く、ごつごつとした切り立った岩肌や先行く二人が映し出される。 中心部は暗闇に包まれてはいるものの、下降して行けばその外観は映し出されるので先ほどとは安心感が大分違う。
 
 「あの二人も見えてないと思うのだけれど、良く飛べるな…」

 『あの触覚がセンサーになっているのかもしれない』

 いずれにしても、このような状況ではゆっくりと下降するしかないので、程なくして追いつく事が出来た。 先導はビムさんに任せるとして、バムは更に速度を落とし私と並んで話しかけて来る。

 『ねえキミってさ…カワイイになるんだよね?』

 「へ!? 何いきなり」

 『以前ここに来たヒトが言ってた、自分の娘をそう呼んでいたけど…』

 「……娘」

 『ヒトの女型めがたを褒める時に使うと思ったんだけど、違ったかなぁ?』

 「まさか!? アシャのお父さん!!」

 『あ~確かそんな名前だったなぁ…』

 そうだった…すっかり忘れていたが、アシャの父親はここ北極に探検に出て行方不明になったのだ。 しかし、これは朗報では無いだろうか。
 
 「その人は今何処に居るの?」

 『奈落に向かったんだ』

 「じゃあ、もしかしたら会えるかも!」

 『それは分からないな…』

 「バムさん?」

 『徒歩で奈落に辿り着くのは極めて困難だ…加えて、彼の食料は底を付きかけていた』

 「そんな!!」
 
 確かにこのような暗闇の中、道なき道を下って行くのは自殺行為以外の何物でも無いだろう。 それに加えて食料不足…聞けば奈落へ行く道中も危険であり、万が一辿り着いたとしても命の保証は無いと忠告し引き留めたそうだが聞き入れずに、命を掛けて出発したのだという。
 
 因みに仲間もいたそうだが、北極圏までの過酷な道程の途中で次々と命を落とし、クレーター内部に到達した時点で生き残りは彼一人だけだったそうだ。

 「生存は絶望的、なのかな…」

 『行って確かめてみよう、私の知る限りでは彼の死体なりを発見した事は無い』

 『僕がさなぎから孵ったばかりで、父さんは付いていけなかったんだよねぇ…』

 「そうなんだ」

 蛹から孵ったばかりのバムの面倒を見る必要があった為、父親であるビムは動くことが出来なかった。 因みに母親は落石の事故で亡くなってしまい、他の兄妹も蛹になれたのはバムだけであったという。

 「何かゴメン、辛い事をおもいださせちゃったね」 

 『ここは食料に乏しいから仕方無いよ』

 過酷な環境での暮らし…祖先がこのような所に追いやられなければ、彼らの人生はもっと変わった物になっていたのだろう。 
 今更言っても仕方のないことではあるが…。



 「見えて来たわね」

 『希望の翼が交戦している』
 
 「ヒナ行けるわね?」

 「ええ、いつまでも病み上がりでいる訳にはいかない」

 戦闘を肉眼で確認した後、戦鳥をまとい戦闘状態に入るとそれに呼応するかのように、厄災が出現するのだが見た事の無い個体だ。

 「大きいわね…にしてもこれは?」
 
 鮮やかな青色をしてはいるものの、で甲殻類の巨大なハサミと太い管のような口を持ち、ヤスデのような長い胴体をくねらせて飛翔しているのだが、その見た目は奇怪そのもだ。 
 
 「油断ならないわね…来る!」

 こちらに接近してくると同時に、少し開いたハサミと管の先端の先端から一条の光が放たれる。

 「任せて!」
 
 バインダーとシールドで矢を防御すると、ハサミを振り上げて突進してくるので回避ざまにこちらも砲撃を浴びせる。
 
 「胴ががら空きよ!」

 サイドに回り込んで長い胴に仕掛けると、矢は表体を焼くだけで効果的なダメージを与えられない。

 「何!?」

 『恐らくだが…光の魔法を相殺するコーティングが施してあるのだろう』

 「ならば私が!」
 
 「待って! ここは私に任せて理音さんの援護を」

 「…大丈夫なの?」

 「ええ…」

 遠目からではあるが、あの個体は機動力を生かして戦っているように見受けられるので、大翼が相手をした方が効率的だろう。
 何より特徴が北極に現れた個体とよく似ているのだ…。

 「分かったわ、無理をしないで」
 
 大翼が離脱するのを見送る暇も無く、光の矢がとんでくるのだがこの程度ではこちらの防御は貫けない。 戻って来るまで守りに専念して凌いでも良いのだろうが、出来れば仕留めたい所だ。

 「接近戦を仕掛ける!」

 胴を分断すべく横からバインダーから刃を展開して接近すると、相手は体を捻って正面をこちらに持って来て、ハサミでもって刃を受け止めた。

 「くっ!」

 『あちらも刃を展開出来たか…』

 その出力は拮抗しており、貫く事は出来ない…ここから一旦下がるかそれともこの距離でミサイルを叩き込むか迷っていると、相手にとある変化がある。

 「何、尻尾が!?」
 
 『ハサミを形成した? それに…』
 
 何とこれまで尻尾に当たるであろう部分にもハサミと管が形成されたのだが、これはまるで頭が二つになったようだ。 
 新たに生まれた頭部は体をくねらせてこちらに向かって来るので、一旦下がって距離を取る。

 『来る!』

 「防御を!」

 矢を放ってくるので防御を行うのだが、攻撃力は二倍となっており何とかギリギリで防ぐ事が出来た。 まさかこのような変体を行う個体があったとは…。 

 「くっ、厄介な」
 
 『このまま守りに徹するのも厳しいかと…』

 「ええ、時には攻めも必要ね」

 今回も勝たねばならない、転移装置を守る為に…。



 
 「…ちょこまかと良く動くわね」

 『攻撃を当てるのは至難の業だな』

 機動力を活かした高速のヒットアンドウェイ戦法は大翼の得意とする所の筈だが、この個体も同様の動きをしている。 
 北極にて羽音が交戦し、行方不明になるきっかけとなった厄災と同じ個体だと思われるとして、傘からは新な個体が出現する訳でも無く、この一体だけで転移装置を破壊しに来たというのだろうか…。
 確かに本体はあちらの世界に渡ったので、残存勢力しかいないというのは分かるのだが。

 『通信だ』

 「世良かしら?」


 「理音さん、遅れてすいません…その厄災は任せて貰えますか?」

 「そうね、貴女の方が適任だと思う」

 「代わりにヒナの応援に回って下さい、新手が現れたんです」

 新手が現れた…敵はあれだけでは無かったのだが、傘も気になるとして先ずはそちらに対処せねばならないだろう。

 『来る!』

 「ならば!」
 
 ブレードを展開して攻撃を仕掛けると、大きく上昇して空へと消えて行く。 それを大翼が追っているのが確認出来たので、この戦線を離脱してヒナの応援へと向かう。
 果たして、世良は高速戦闘に勝利出来るのだろうか…。

 

 『見えて来たな』

 『もう直ぐだね~』

 (ここが奈落か…)

 映し出される岩肌は、このクレーターの底である事を告げている。 やがて地面に降り立つと何かが動いているのが分かるのだが、それらの姿形がはっきりするとここが終着点である事が改めて証明された。

 『なにようだ』

 『ビムとそのせがれか…いや待て、それは何だ!?』

 二人のインセクトがこちらに向かって来たが、恐らくは門番のような存在なのだろう。 訪れた同胞の事を知っているのは当たり前だとしても、私の今の姿は門番にとっては異形そのものなので早急に手を打たねばならない。

 「あの私は…」
 
 『女王に謁見したい』

 『何故だ』

 『そこにいるヒトが、会いたいと言っている』

 『何と! ヒトが会いたいと?』

 そう言うと彼は無言で深く頷く、果たして無事に謁見出来るのだろうか…。
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