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Anniversary 1st Season
『体育祭権謀術数模様 -Happy Days!-』【4.ハーフタイム】 [3]
しおりを挟む「ところで……なんで生徒会が“優勝候補”で、ウチが“対抗馬”なの? 運動部でも無いのに……」
やはり、そうコッソリ三樹本に投げ掛けられた小泉のソボクな疑問を聞き止めて、『おーっと、それはいい質問だあっ!!』と、即座に食い付いた放送部員。
『ナゼに生徒会が、並み居る運動部の面々を差し置いてまで“優勝候補”と言われているのか! ――ご説明いたしましょう、それはダントツに生徒会のバトンが“軽い”からでございます!!』
その言葉を聞いた途端、むむっと小泉の眉が軽く寄る。自分も同じバトン役、しかも“小さい”と言われることで過剰なまでに怒りを表す彼女のことだ、そうバトンの軽い重いで“優勝候補”とまで決められてしまうということに軽く抵抗を感じたのかもしれない。
『モチロン、生徒会チームのバトンは、皆様ご存知、いつもながら小柄で愛くるしい吉原生徒会長! 今日も相変わらずキュートです! アタマのお団子が何とも可愛らしい! そんな彼女より軽い人間は、全校生徒を見渡したところで、まず他には居ないでしょうっ!! しかも、そこまで軽い彼女を運ぶ走者には、前年度生徒会の立役者、コチラにいらっしゃいます屈強な《三連山》のお三方が揃い踏み!! 全校一の軽さを誇るバトンに、ココまでガタイの良い選手が三名!! そんなメンバーを揃えた生徒会チームこそ、“優勝候補”と言わずして何と言う!!』
そこで再び、うおおおおおっ! と盛り上がりを見せる応援席および一般客席。そして観客サービスに余念の無い、手を振って声援に応えるヨユーなど見せる《三連山》の面々。…このお調子モンどもめ。
『そして対抗馬! そんな生徒会チームに匹敵するのが、吉原部長率いる天文部チーム! やはり運動部を差し置いて、優勝候補に対する“対抗馬”として目されている理由は……まず君だ!! 一年C組、小泉桃花!!』
「ほえっ……!?」
振り返った放送部員により突然ビシッと鼻先に指を突きつけられ、目を丸くして小泉が三樹本の影に隠れたままパッタリと硬直する。
しかし、そんな小泉の様子など何のその、相変わらずの調子で中継レポの榎本はエキサイトしたままのテンションで言葉を繋ぐ。
『さきほど行われました“午前の部”最後の競技《WANTED! ~ミッション・イズ・『ウォーリーを探せ!』トライアル☆》にて、大活躍を見せてくれましたことは皆様の記憶にもまだ新しいと思われますが、その小泉選手、今度は《部活動対抗障害物リレー》において、天文部チームのバトン役を務めます! しかも小泉選手は、ご覧の通り、なんと吉原会長に負けるとも劣らない小柄な体格の持ち主です! ワタクシどもの調査によると、身長も体重も、ほぼ互角!』
やはり案の定、そこでムカッ腹が立ったか小泉が声を上げようとするも。――即行、「余計なこと言わんと」と、またもや三樹本にやんわりと口を塞がれる。…サスガ三樹本、ナイス判断。
『しかも走者には、まず第一に、生徒会チームの《三連山》の面々に勝るとも劣らない屈強なガタイの持ち主であり、しかも校内一の戦闘集団でもあります空手部をその配下に置いていらっしゃるという、校内随一の武闘派との誉れも高い、コチラ吉原部長がおられます!』
「――って、人聞きの悪いこと言うな!」
という俺のササヤカなツッコミは、しかしアッサリと黙殺される。――今まで一度だって『空手部を配下に置いた』よーな覚えなんて無いっつの! 部長をはじめ部員をことごとく叩きのめした記憶ならば、何度かはあるものの。
『それに加えて、おまけに禁じ手、よりにもよって顧問の碓氷先生まで走者に担ぎ出してくるという、これはあからさまに勝ちに討って出てますねー天文部チーム! …やはり先ほどの《WANTED! ~ミッション・イズ・『ウォーリーを探せ!』トライアル☆》にて、初体験の告白などしてくれちゃいました姿がまだ記憶に新しい、コチラ碓氷先生でございますが』
即座にヒクッと、先生の頬が小さく引き攣ったのを……そんなん、見逃す俺ではない。――あぁあ、こりゃ相当キテるよなあ……てゆーか、今ので寝た子を起こしたよーな感があるぞ? なんてことしてくれやがるソコのウッカリ放送部員。
『ご覧の通り、やはり先生も並ぶ吉原部長と同等の体格! よーするに、これで天文部チームも、生徒会チームに負けるとも劣らないバトンと走者の揃えっぷりとなったワケですね! ――てゆーか、そもそもソボクに疑問です! 顧問とはいえ教師を使ってもいいのでしょうか、この競技!? どうなんですか、そこのところは!? 主催者および解説の梨田さん!?』
『そうですね……確かに、そこは皆様、疑問に思うべきところだとは思いますが……しかしルールにも「教師の参加は不可」という項目は見当たりませんし、また、この競技における過去の記録を辿りましたところ、“部員数が走者の数に満たない”という理由で顧問教諭の参加を許可している前例もありましたので、よって、このたびの天文部からの申し出につきましても、…まあ所謂“抜け道”と言える手段ではあるのかもしれませんが、許可を致しました次第です』
「別に、そんな『許可』なんぞくれなくても全くモンダイは無かったんだ…」という至極ご尤もな碓氷センセーのウンザリしたようなボヤきは、心を鬼にし聞かなかったことにする。――てゆーか、この期に及んでまだ言ってるかねそんなこと。いい加減ハラ括ってくれないと。
『サスガ梨田女史、どこまでも公平かつ正当な理由での裁定でございます! そこに一縷の不正もございません!』
『当然です! この競技に関しては生徒会の威信にかけて、「一縷の不正」も入り込むスキ無きよう、万全の体制で取り計らっておりますから』
『素晴らしい! やはり生徒の上に立つ生徒会は、こうでなければなりません! ――と、こうして碓氷先生の参加理由がスッキリ飲み込めましたところで、中継のツヨシくん! 続きをどうぞー?』
『ハイ、ツヨシです! そんな“抜け道”を使ってでも、あくなきまでに“勝ち”への意欲を燃やす天文部チーム! 臨時賞与の威力たるや、なんて絶大! …そして皆さん、見えますでしょうか? 天文部チーム走者五人のうち先生を除いた四人全員が、なんと先の応援合戦で活躍しましたC組応援団員でございます!! しかもC組応援団幹部格闘家三人、団長・副団長が揃い踏みです!! この黒い学ラン姿が、なんだかミョーに強そうだーーーっっ!!』
――学ランなんて……暑いわ苦しいわ窮屈だわ動きにくいわで、『強そう』以前のモンダイであることが……ハタから見てる人間には、所詮、伝わってくれやしない。見た目で軽くモノを言うなコンチクショウ。
『そんな天文部チームを率いてらっしゃいます吉原部長が、校内一の戦闘集団であります空手部をその手の中に押さえていらっしゃることに加え、現生徒会会長の兄君ということもあり、また、前年度生徒会役員として現生徒会組織内においても多大な影響力を揮っていらっしゃいますコチラ《三連山》の方々のご友人、ということもあり。――ココだけの話、武力・政治力の両刀を握った、実はナニゲに校内で最も権力を持っている人物なのではないかと、専らのウワサでございます!』
「――根も葉もない誤解だ」
てゆーか、全校規模で『ココだけの話』とかすんなよ、そこのお気楽放送部員!!
『その話については……そういえばワタクシども、少々気になるウワサを仕入れておりまして……』
俺がヤツのマイクを引っ掴んで弁明をしようとした、その先を奪われて……何を言う前に今度は放送席の方から、スピーカーを通して、そんな言葉が届いてくる。
『天文部の吉原部長と、コチラにいらっしゃいます生徒会会計の梨田さん、――実はお二人、過去お付き合いされていたことがあったとか?』
それを聞くなり沸き起こった会場のどよめきと、即座に「えええええっっ!?」と俺の目の前でウチ部の一年生三人も、声を揃えて絶叫する。
同時に、やはり穏やかで心地よいアルトの声で、しかしトコトン不機嫌そうに、スピーカーから降ってきたのは件の梨田女史のピシャリとしたセリフ。
『…ウルサイわよ、そこの《浅草キッド》!』
『おおっとー、すぐ隣のご当人により、ワタクシ玉袋筋太郎にされてしまいました! ――もうお一方のご当人は如何でしょう、中継の水道橋博士?』
『はい、水道橋博士です! アトムは制作しておりません! …というワケで、どうなんでしょう吉原部長? そこのところの真相は?』
梨田サンの冷たい言葉にも全くメゲない、おそらく最初からコレを狙っていたのだろう、そんなスチャラカ放送部員にマイクをシッカリ突きつけられて。目の前では一年生の三人がキョーミしんしんの表情で覗き込んでくれてやがるし、周囲に集まってる競技参加選手どもの視線は集めまくりだし、また放送を通して全校生徒の注目まで集めてしまっている、こんな状態で……俺に逃げ場なんて、ありゃしねーし。
(――ごめんよセンセー……さっきの競技での碓氷センセーの気持ち、今はじめて理解できたよ……!)
例の競技で吊るし上げを食らったセンセーを哀れに思いつつ心配しつつ、でも面白がっていたバチがココで自分に返ってきやがったか、と。
そうして一つタメ息を吐くと、そこで俺はハラを決め、短くヒトコト、応えてやった。
「……まあ、あくまでも“元”ですけど」
『なんと、吉原部長当人から肯定のお返事をいただいてしまいました!! やはりお二人の関係は、“モトカレ”と“モトカノ”!! …どうなんですか梨田さん、ソコのところは!?』
そして全校生徒の喚声やら嬌声やら鳴り物やらに紛れて届いてきたのは、やっぱり不機嫌そうな、ピシャリと返される不機嫌そうな声。
『…だからウルサイわよ、《東京キッド》!』
『ぅをっと、今度は往年の名曲が飛び出しました、昭和の歌姫が偲ばれます! そうまでして答えたくないか梨田女史ーっっ!! ――ところでいー加減、いくら通称とはいえ、正しいワタクシたちの名称を呼んで頂きたいものでございます! 改めてもう一度、申し上げておきましょう! ワタクシども、誰が呼んだが「放送部の《Kinki Kids》」は、決して間違っても《浅草キッド》でも《東京キッド》でも、御座いませんっ!』
『――ああーらゴメンナサイ、《“変態”Kids》さん?』
『うぉっとう!! 今度は“Kinki”を和訳されてしまいましたー!! あくまでもワタクシどもを《Kinki Kids》と認めてくれたくはない模様!! それとも、あくまでもコメントしたくない照れ隠しなのか!? もーこの際、《関西ボーヤ》あたりで妥協しまして、諦めて次いってみましょうかツヨシくーん!?』
『じゃあ、そおんな梨田女史に代わって、吉原部長にズバリお伺いいたしましょう! ――お二人は、どうして別れちゃったんですか?』
「…どっかの誰かに、ことごとく付き合いをジャマされたので」
何を隠そう……その『どっかの誰か』ども張本人は、今この場所で何食わぬカオですぐ隣に立っている、――つまり例によって《三連山》の面々、なのである。
おかげで、“モトカレ”“モトカノ”とは言いつつ、ホトンド付き合いらしい付き合いをしないままで終わってしまうことになったのだ俺たちは。
まあ…そうだな、面倒くさいし、詳しいことについてはココでは語らないでおくけれども……よって俺は、白い目を向けつつ「詳しくはそこの三人に聞いてください」と、そう話をヤツらに振って、ここいらで返答を放棄することにした。
そしたら即座にマイクが三人を追いかけて俺のもとから去っていってくれたが……その場から即三人が逃げ出しやがったことにまで、俺が責任を問われる必要も無い。
「うし、じゃあ周りも静かになったことだし、時間のあるうちに打ち合わせ……」
それを言いかけながら、ようやく改めて、ウチチームの面々に向き直ってみたところ……、
「つまりなー? あの放送係のにーちゃんずが、このことから何を言いたかったのか、っつーと……ウチの吉原部長こそ実は、武力&政治力に加え、ああやって校内の財政力まで握り込んでる、その気になれば何も出来ないコトは無い、いわば“ウチの学校で最も権力を握ってるコワいヒト”、だったりするんやでー? ってコトやな! そこらへん、よーく憶えとき?」
――おいコラ三樹本……可愛い後輩たちに、なーに根も葉もないことを尤もらしく説明口調で吹き込んでやがるんだキサマ……!? てゆーかそもそも、もしやその黒いウワサの出所はキサマかコノヤロウっ……!!?
速攻、無言でヤツの背後に回った俺のチョークスリーパーが炸裂したことは、もはや言うまでも無い。
「ちなみにー……こーやって、ヘタに情報屋サンなミキモトパールくん、ガッチリ絞めて押さえて支配下に置いちゃってることでー、校内の武力・政治力・財政関係にコネを持っているのみならず、さらに情報網に関してまでも、抜け目なくシッカリばっちり、その手に握っちゃってるワケなのよねー平ちゃんはーっ! …ねっ、どこまでも黒いでしょおっ?」
――由良……キサマまでそーニッコリ笑って、おまけにマイクまで通しやがって、全校生徒に事実無根な説明を発信すなッッ……!!
これにより……それからしばらくの間、俺が誰彼からとなく『裏番長!』とアカラサマに囁かれては後ろ指を差されるようなハメとなってしまったことについても、――モチロン、不本意ながら当然、言うまでもなくなってしまったのだった。…ちくしょうめ。
【[5.後半戦]へ続く】
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