異世界ブンドド ~夢とロマンに生きる王女~

あてだよ

文字の大きさ
15 / 38
胎動編

第15話 一家団欒

しおりを挟む
「とりあえず、そろそろ夕方になるし、ルインが来ちゃうかもだから、あなたを何処かに隠さないと」

「ふむ? 私が見られては困る事情があるのか?」

「あんたの事を宝物庫から黙って持ち出してるのよ。バレたら困る――って程でもないのかしら?」

 考えてみれば、あんな風に檻の中に保管されていたのは、ベディの能力が不明だった所為らしいし。

 こうして、魔道具としての性能が判明したのだから、逆に褒めてもらえるんじゃない?

「……そうよね。うん、きっと大丈夫よ!」

「そうか、問題が無いのであればよかったが。ところで、ルインと言うのは、君の後ろに立ってる人の事か?」

「え?」

 私は振り返ると、そこにはルインが立っていて――――


 ――――めっちゃ怒られました。

 頭をガシッと捕まれてギリギリと締め付けられた後、正座をさせられ、理詰めで、こんこんと説教が続く。

 生まれてこの方、ほぼ良い子として振舞っていたので、1度も叱られた事など無かったけど。

 ルインが怒ると、ここまで怖いとは……

「ごめんなさい……」

「効果の分からない魔道具とは、危険な代物なのです。中には周囲を巻き込み被害を及ぶ物もあり、よほど周到に調べなければ、魔力を込めた瞬間危険に陥る事もあり――」

「失礼します。ボリス王がおいでです」

 窓の外の景色が茜色から群青へとうつろい。
 私の足が、そろそろ限界に達しようとした頃、ようやく救いの手が現れた。

 部屋の戸口から声がかけられ、ボリスパパンが来たのだ。

「これは……どういう状況だ?」

「姫様が吸魔の首飾りも勝手に持ち出しておりまして、それをお叱りさせていただいている最中です」

「初代様の首飾りをか!? ティアルは無事――のようだな……?」

 無事じゃ無いよパパン!?
 正座させられてて、足の痺れがMAXだよ!

 と、私は必死に目で訴える。

「しかし、吸魔の首飾りの収めてあった籠の鍵はどうしたのだ?」

「どうやら、姫様が魔法で籠自体を変形させて取り出したそうでして」

「あれはアダマンタイト製だったはずだが……ともかく、ティアルも反省してる様子であるし、夕食にしてはどうか? 今日はリカルドも城におるので、そろそろ家族全員で食事でもと考えておってな。それで足を運んだのだ」

「さようでございましたか。セレイナ様やリカルド王子をお待たせするわけにもいきませんし。今日の所は、ここまでにいたしましょう」

 私のキラキラなお目めで必死にアイコンタクトをしたおかげか、私の願いは通じた様で、ようやく長かった説教が終わった。

 ん? 今日の所はって言ったか……?

 ……それはともかく、やっと足を崩せる。

「あ、足ぃぃ……」

「ああ、うむ。では、ティアルは私が運ぼう」

「では、首飾りの方は私が。夕食の席にて、此度のご説明も致します」

 パパンはそう言うと、私を片腕で優しく抱っこし、ルインがベディを回収して食堂へと向かう事となった。

「いだだだ……」

「あまり、ルインを怒らせる出ないぞ? あれは怒らせると怖いからなぁ」

 それはもう知ってるよパパン……

「私も子供の頃は、悪戯をするたびに酷い目にあったものだ……」

 と、遠い目で語るパパン。

「父上も?」

「あれは、先代の頃から、近衛と王家の教育係を務めておったからな」

「ボリス王、私がなにか?」

「い、いや。なんでもないぞ?」

「さようですか」

 そんな事を話しながら数分も歩くと、私達王族だけで使うらしい食堂へと到着した。

 扉を開けた先は、広すぎず狭すぎず、内装も落ち着いた感じで、くつろいで食事ができる雰囲気のある所だった。

「あ、ティアルも来たね」

「いらっしゃいティアル。こうして皆で食事をとれるのは初めてねぇ」

 既に中には、リカルド兄さんとセレイナママンが待っていて。
 そして、深緑の髪の眼鏡をかけたイケメン風の執事さんが、給仕みたいな事をしていた。

「ティアルはここに座ると良い」

「はーい」

 パパンは、リカルド兄さんの隣にあった子供用の椅子に私を下ろすと、正面の席にママンと並んで座る。

 こうして見ると、全員の服装はあれだけど、なんか普通の家族みたいで、ほっとするわ。

「では、王と姫様もいらっしゃったので、お食事の用意をいたします」

「オスカー、私も手伝います」

 眼鏡の執事、オスカーさんが一礼して食事の準備を始めると、ルインも私の座る席の近くのテーブルにベディを置いて手伝いに行った。

 このお城って、対外的に見せる場所は煌びやかに作ってあるけど。
 王族専用とかの場所は、思ったよりも質素というか、変に飾り付ける事をしないし、近くに侍る人達も必要最小限にしてるのよね。

 私としても、キラキラな場所で大人数に世話されながら生活するより、こういう感じの方が緊張しなくて助かる。

「父上。この首飾りって、武器庫の奥にあった初代様の首飾りですよね? なぜこちらに?」

「ああ、うむ。ティアルが今日、持ち出していたそうでな。先ほどルインから叱られておった」

 リカルド兄さんは、ルインが置いていった首飾りに気が付くと、不思議そうに尋ね、それにパパンが答える。

「あー……ティアル、ルインを怒らせたのか」

「うん……」

「それは、災難――ではないね! 反省したほうがいいよ!」

 リカルド兄さんは、ルインが食事の乗ったワゴンを押して戻って来たのに気が付くと、あわてて方針転換をして私を慰めるのを止めた。
 どうやら、父子揃って同じ様な目に会って来たらしい。

「それで、ティアルは何ともないのよね?」

「え? あ、うん、大丈夫。魔力は結構吸われたけど」

 並べられていく料理を眺めて、どれから食べようかと思案をしてると、今度はセレイナママンが話しかけてきた。

「そう。魔力枯渇で気を失ってたとかでなくてよかったわ。あまり皆に心配をかけてはダメよ?」

「はーい」

 たしかに、そうなってたら収納魔法の中身とかもどうなってたか……

 まあ、もう中身の大半はアレだけど、これからは気を付けよう。

「して。ルインよ、吸魔の首飾りを持ち出した後、ティアルの様子はどうだったのだ?」

「宝物庫から部屋に戻った後、姫様が自身の属性魔法の練習を一人で行いたいとの事で、私は雑務を済ませるため、しばし離れておりました。その後、部屋の前に戻りますと、中から姫様が誰かと会話している気配を感じ、部屋の前で待機していた者達に何者かを中に入れたのかを確認したところ、誰も居れていないとの言を聞き、即座に第一近衛を招集し突入準備を行いました。先行して私が部屋の中へと忍び入りますと、姫様が、こちらの初代様の首飾りと会話しているのを発見した次第でございます」

 え?
 突入準備?

 そんな大事になってたの……?

「首飾りと会話をしていた……?」

「はい。詳しい事は、本人と本体に語っていただいた方がよろしいかと存じます」

「君が現国王か。お初にお目にかかる、と言っていいかは悩むところだが、よろしくたのむ」

 ルインが説明を終えると、さっきまで黙っていたベディが喋り始める。

「こ、これは喋る魔道具か!?」

「ベディという名をティアルから貰った。差し支えなければ、君等もそう呼んでくれ」

 ベディが言葉を発して喋り始めると、ルイン以外の全員が騒然となってしまった。

 お腹空いたから、早くごはん食べたいんだけど……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...