異世界ブンドド ~夢とロマンに生きる王女~

あてだよ

文字の大きさ
23 / 38
胎動編

第23話 教会

 分厚い城壁に挟まれた城門をくぐると、視界が開け、ようやく街の様子が見えて来た。

 街と城壁の間には奇麗な水を湛えた深い堀があり、それを渡る様に跳ね橋が掛かっている。
 その先には、片側二車線の道路よりも広いメイン通りが真っ直ぐに伸び、そこを大勢の人々と馬車が行き交い。
 それらを挟む様に、様々な建物が両サイドに立ち並び、雑多ながらも整然とした雰囲気を感じた。

「はえー……なかなかに壮観ねぇ」

「おい、お前、その格好で街に行くのか?」

「え?」

 街の景色に見とれて少し立ち止まっていたら、突然、門番らしき人に声を掛けられてしまった。

「あ、えっと。不味いですかね?」

「武器を携行してなければかまわんが、そんな目立つ格好で酒場とか、あまり変な所へは行くなよ? お前らが何かして最初に苦情を聞く事になるのは俺達なんだからな」

「ああ、はい。買い物に行くだけなんで、その辺は大丈夫だと思います」

 ちょっとヒヤッとしたけど 咄嗟にベディが声を変えてくれたので事なきを得た。

 ついでだから、不明なままだった塗料を売ってる所でも聞いておこう。

「ちなみに、絵具とか塗料みたいな物を売っている店って分かります?」

「絵具……? いや、すまんが分からん。俺等に聞くより、通りにある商店で聞いた方が分かるんじゃないか?」

 うーん、やっぱり知らない感じか。

「そうですね、そうしてみます。ありがとうございました。それじゃ」

「暗くなる前には帰って来いよー」

「はーい」

 お礼を言って別れると、門番さんは軽く手を振り見送ってくれた。


 跳ね橋を渡り、大通りへと足を踏み入れる。
 すると、一気に空気が変わった感じがした。

 城壁の中は、草花も多く人通りもまばらだったので、少し牧歌的な雰囲気が漂っていたけど。
 街の空気は、音も匂いも景色も、そのどれもが違う。

 通りを行き交う人々の雑踏はランダムノイズなBGMを奏で、屋台やレストランから漂ってくる料理の臭いは空腹を刺激し落ち着きを無くさせる。
 立ち並ぶ店々はショーウィンドウに目立つ様に商品を並べて購買意欲を掻き立て、それに目を奪われた人は立ち止まり品物を眺めている。

 なんだか、この感じ、久しぶりね。

 東京とか都市部の繁華街とは景色が全然違うけど、漂ってくる雰囲気は似た物を感じた。

「この空気に飲まれると、いつの間にか時間を無駄にしてる事が多いのよねぇ……アキバとか」

「ふむ? それで、どうするのだ? 城門は出てしまったし、既にミア殿が探しに向かって来ているかもしれんぞ?」

「そうね、急がなきゃ。とりあえず、場所が分かってる教会に行きましょ。それで、教会のある方ってどっち?」

「もう見えている。前方の右側、巨大な木を象ったレリーフが飾ってある建物がそうだ」

 ベディの言った方角を見てみると、確かにそれらしき建物があった。

 ちょっと、イメージしてた教会とは違った雰囲気の建物ね……

 外見は広く大きい石造りの3階建ての建物で、宗教系を思わせる装飾などは一切なく、どちらかと言うと、市役所や学校などを連想させる作りをしている。

「……本当にここなの?」

「そのはずだが……どうやらここは学校としての役割もある教会らしいな」

 まんま学校じゃん……

 近くに行き、建物を囲っている柵と垣根越しに見上げてみると、窓から子供の姿がちらほら見えるし、子供達が集団で居る時特有の騒ぎ声みたいな物も聞こえる。

「えーっと……ここって部外者が入って良いのかしら?」

「大丈夫ではないか? 一応は礼拝堂もあると、周囲のマナ情報にはある」

 ほんとぉ……?
 日本だったら、こんな大柄の鎧姿の人物が敷地内に入った時点で即通報されそうなもんだけど……

 ベディに別の所を探してもらった方がいいかな……?

「うーん……」

「どうかなさいましたか?」

 建物を見上げて思案していたら、垣根の向こうで花壇の手入れをしていた初老の男性に声を掛けられてしまった。

「え? あー……ちょっと、こちらの教会というか、礼拝堂に用事がありまして。ここって教会で合ってます?」

「ええ、間違いございません。よろしければ、私が案内いたしましょうか?」

 白髪で濃緑のローブに身を包んだ男性は、作業の手を休めて立ち上がると、案内すると申し出てくれた。

「えっと、それじゃあ、お願いします」

「はい。では、こちら側へどうぞ」

 そう言うと、彼は私を柵の向こう側へと招き入れた。

 どうやら、礼拝堂は校舎の中ではなく脇の方に併設されていて、少し奥まった所にあるらしい。

 物腰の柔らかい用務員さんらしき男性は、そこへの道を丁寧に先導してくれた。

 校舎を迂回する道中では、時折、窓の向こうから子供達がこっちを見て手を振ってきて。
 こっちも振り返すと、また全力でブンブンと振り返してくる様子が可愛らしかった。

 ふふん、どうだ子供達よ。
 私の作ったロボは格好よかろう?
 
 世界は違えど、子供の純真無垢な心は、やはり強くてカッコイイ物に惹かれるらしい。

「子供達も、あなたが来て喜んでいる様ですね」

「騒がせに来てしまったみたいで、すみません。教会だとは聞いていたのですが、まさか学校の敷地内にあるとは」

「いえいえ。王都の中には教会がいくつかありますが、こちらは子供達に遠慮してか、一般の方が礼拝に訪れる事が少ないですから。久々の信徒の訪問に神もおよろこびでしょう」

「それなら良かったです」

 やっぱ、教会はここだけじゃないのか。
 
「それで、礼拝堂にご用向きがおありという事は、祈願か懺悔ですか?」

「そんなところです」

 神様にクレームを入れに行こうと思ってます、なんて言えない。

「そういえば、まだ名前を伺っておりませんでしたね。私は、この王都の神殿長を務めるドゥマルテと申します」

 は……?

 神殿長!?

 それって、お偉いさんじゃないの!?

 なんで、こんな所で草弄りとか人の案内なんかしちゃってるのよ!?

「俺、あー、いや、私はルークスと言い、あ、違う、申します。近衛騎士の見習いです」

 偽名なんかも考えていなかったから、いきなりの事でテンパってしまった。
 咄嗟にルークスと、騎士風の外見をしたロボット作品の機体名で答えちゃった……

「はは、そんなに、かしこまらずとも構いませんよ。それにしても、近衛の見習いの方でしたか。通りで、その様な格好をしていらっしゃるわけだ」

「あー……やはり、こんな姿で来たのは不味かったですか?」

「いえいえ、その様な事はございません。神殿の騎士団にも、見習いの内は、ルークス殿と同じ様に1日を鎧姿で生活させる訓練もございます」

 今まで話した人とか街中の人達が、そんなに不審がらずにいたのは、その訓練だと思われてた所為なの?

 人によっては、若干生暖かい目で見てきた気がしてたけど。
 新卒の新入社員が行う慣例行事みたいな物に思われていたからだったのか……

「神殿の騎士団も大変なんですね……あの、少し伺ってもいいですか? ドゥマルテさんは神殿長なんですよね? なぜ、こんな所に?」

「普段は孤児院のある教会に居を構えていますので、そこの子供達を朝こちらへ送り届けて、彼らの授業が終わるのを待っている間は、先程の様な事をさせていただいております」

 この人、肩書はあれだけど、暇なんだろうか?

「神殿長という事は、教会とは別に神殿があるんですよね? そちらに居なくても大丈夫なのですか?」

「神殿は、主のご神体をお預かりしている場所ではありますが。あちらは、言ってしまえば、我々聖職者達の集会所の様な所です。神殿での毎日の礼拝は欠かしておりませんが、私は、人々の助けとなり、教え導く事を志とした教会の働きを手助けしたく思い、この様な事をしてます。まあ、たまに神殿の者達からは怒られますが」

 やっぱ怒られるんだ。
 そりゃそうよね。

「神殿と教会は、目的が違うんですね。勉強になります」

「我々からすれば役割が違う場所ですが、信者以外の方からすれば、どちらも同じ様な物かもしれませんね。さあ、着きましたよ。こちらが礼拝堂です」

 ちょうど話に区切りがつくと、今度は宗教らしい厳かな装飾の施された、ちゃんとした建物が目の前にあった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました! ※完結後、三人称一元視点に変えて全話改稿する予定です。規約を確認してから決めますが、こちらも残したいと思っています。