異世界ブンドド ~夢とロマンに生きる王女~

あてだよ

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進境編

第38話 魔導鋳造

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 東門での騒動を終え、私達は城へと帰って来た。

 パパン達は昨日から徹夜だったらしく、一旦仮眠とるとの事で、私にベディを預けると、お目付け役としてルインを残し城の中へと帰って行った。

「ルインは寝なくて大丈夫?」

「もうしばらくすれば代わりの者が来ますので、それまでは姫様の監――お世話をいたします」

 ん?
 今、監視って言いかけたか?

「まあ、いいか……。ともかく、問題は場所よね」

 初代様のゴーレムを座らせる巨大な椅子を作るにしても、私が大っぴらに作る訳にはいかない。
 なので、それなりの広さがあり、人目が付かず、隠しながら作業できる所を用意する必要がある。

「ルイン、どこか良い所ってない?」

「さすがに、屋内は難しいかもしれませんね……。近衛の訓練場でも、広さはありますが高さが足りませんし」

「じゃあ、屋外しかないわね。となると、お城の中庭は……ダメね。広さも微妙だし」

 中庭は、お城に居る人達の憩いの場にもなってるし。
 庭園みたいなのもあるから、それを潰さないといけなくなる。

「少々問題もありますが……騎士団の訓練場はいかがでしょう?」

 騎士団の訓練場というと、あのコロシアムみたいな所か。

「たしかに、あそこなら広さも十分だし、周りの壁も高いから外から見られる心配もないけど……使っていいの?」

「一週間程度でしたら、訓練兵達は街の外で行軍訓練でもさせておけばよろしいかと」

「そう。なら、あそこにしようか」

「では、訓練場を一週間ほど閉鎖するよう、騎士団に通達をいたします」

 という訳で、アイゼンクーゲル専用ハンガーの建造場所は騎士団の訓練場に決まった。



 さっそく訓練場へと足を運んだ私は、訓練場の中央付近へと行く。

「ん-……この辺りでいいか。ベディ、光魔法であの台座を実寸大で写して」

「わかった」
 
 周囲を見渡して適当な場所を選ぶと、ベディに台座のワイヤーフレーム映像を映してもらう。

「実物大で見ると、やはり大きいですね……。姫様、本当に大丈夫なのですか?」

 ルインは、光の線で映し出された巨大な椅子を見上げると、不安そうに言葉を漏らす。

「なんとかなるとは思うけど……」

 目測だけど、幅と奥行き共に9m前後。
 座面の高さは4~5m、背部の高さは12m以上はありそうだ。
 支柱の様な脚も、あの巨体を支える物だけあって、かなり太い。

 複雑な作りをしている部分はそう多く無いけど、問題になりそうなのは――

「――材質と作り方を考えないといけないわね」

 プラモの取説みたいな物がある訳でも無し、しかも、この大きさだ。
 どこを、どうやって、どの順で作るべきかが悩ましい。

 脚部を先に作って、その後に座面と背もたれ部分を……だめね。
 脚の生成中に倒れたりしそうで怖いし、座面を乗せる時に生成が一発で済むか不安だわ。

 それに、接合部分もどうしたものか。
 この世界は工業製品なんて物が無いから、ネジやボルトといった固定方式が使えないし。
 私の魔法で疑似的に溶接でもするか……
 
 強度も問題だ。
 材質は鋼鉄で大丈夫だろうか?

「うーん……。ベディ、これを作る時って、どんな風に建造してたの?」

「すまないが、アイゼンクーゲルの外装の製造には立ち会ったが、これに関しては見ていない」

「そう……。ちなみに、外装の方はどうやって作ってたの?」

「外装は、鋳造と呼ばれる方法で製造していた。素材と部位によっては、普通の鋳造と、魔導鋳造とを使い分けていたな」

 鋳造は、高温で溶かした金属を、鋳型と呼ばれる形に流し込んで金属製品を作る方法だ。

 それは分かるけど、魔導鋳造とは何ぞや?

「魔導鋳造の部分を詳しく」

「魔導鋳造は、クーゲルの持つ豊富な魔力を活用した鋳造方法で――」

 ベディの説明によると、基本的な工程は鋳造と同じらしい。
 違うのは、使われる金属と、それを流し込む鋳型の作り方との事だった。

 鉄や金銀と言った金属は普通に熱して溶かすことが出来ても、この世界の不思議金属類は、それが難しかったらしい。
 ミスリルやアダマンタイトなどは、ただ熱しただけでは柔らかくなりにくく、魔力を込めてハンマーなどで叩くという、鍛造に近い方法でしか加工が行えない物なのだったとか。
 また、強引に溶かして鋳型に流し込んだとしても、普通の鋳型では耐えられず壊れてしまい、まともな方法での鋳造が出来なかったそうだ。

 そこで編み出されたのが、魔導鋳造と呼ばれる方法で。
 初代様が鋳型を土魔法で作り、さらに魔力的にも強化して、特殊な金属の加工にも耐えられる様にしたのだとか。

「――そうする事で、アダマンタイトなどの鋳造も可能となったわけだ」

「鋳型を魔法で作るという方法は、今でもドワーフの一部が使用しておりますね」

 と、ルインが補足を入れる。

「ふーん、土魔法で鋳型を作るか……」

 その方法は使えるんじゃないかしら?

 ちょうど目の前に、ベディの投影した詳細な型もあるんだし。
 これを型紙代わりにして、鋳型を先に作っちゃえば、後の作業も楽かも……

 今回の台座づくりには、数日に分けて金属を生成する必要がありそうだし。
 建造途中で倒れたり崩れたりしそうで不安だったけど、鋳型を用意して作れば、それも大丈夫そうな気がする。

 それに、鋳造品の様な一体型の作りなら、接合部などの問題も考えなくても良さそうな点も都合がいい。

「その魔導鋳造みたいに、鋳型を使って台座を作れば、安全かつ着実に作れそうじゃない?」

「ふむ……。たしかに、ティアルの魔法でなら鋳造も一人で行えてしまうか。それに、寸法や形状の正確性も上がるな。鋳型を用意する分、余計な魔力を使うが、その方が確実だろう」

 ベディも、この案に賛成の様だ。

「姫様、鋳型の部分まででしたら私も多少はお手伝いができるかと」

「そうね。それじゃ、ルインにも手伝ってもらおうかな。その前に、展示用途にするなら、少し外見も見栄え重視に弄りましょ」

 ベディに指示をして、映し出している台座の外見に変更を加えていく。

 各所の足場やキャットウォークとクレーンなどは取っ払い、もう少し形状をシンプルにした後、ルインの意見を聞きながら本物の玉座に見える様に各所に飾りを施して形状を調整する。

「それじゃ、この形に添って鋳型を作りましょ。ベディは、そのまま投影を維持してて。私が玉座に接する部分は作っちゃうから、ルインは、それを補強していって」

「わかった」
「かしこまりました」
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