アーニャの努力冒険記

かはり かは

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第一話 【アーニャ・ペンタゴン産まれる】

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第一話 【アーニャ・ペンタゴン産まれる】
とある春の暖かな日が山裾より顔を出そうとしていた時。アーニャ・ペンタゴンはこの世界に生を受けた。
アーニャの産声は4軒先の家にまで響き渡り元気な子が産まれた等と村中で喜ばしい噂になるほどであった。然し、アーニャが3歳の時村に来た神官から辛い言葉を浴びせられた。
「神からの祝福ギフトが無い。」
世界の殆どの者が神からの祝福ギフトと呼ばれる能力を授かり産まれてくる。その能力が発現するとされているのは主に3歳頃、正に今のアーニャの歳であった。
アーニャの村には赤子が3歳になる年に村に定期的に訪れる神官に神からの祝福ギフトがどんなものか見てもらうという風習があった。村人や両親に期待の目を向けられつつ神官の前へ立ったアーニャへと告げられたのは酷く辛い言葉。
然し、3歳と言う幼子であるアーニャは自身が祝福ギフトを持っていないと言う事の悲惨さを理解出来るはずがない。だが、事の重さや悲惨さを理解出来る両親や村の人々は泣き崩れてしまった。
その理由は神からの祝福ギフトを持たぬ者達の行く末を知っているからである。特殊な能力を努力せずとも授かれる祝福ギフト持ちとは違い祝福ギフトを持たぬ者は得ることが出来るかも分からない能力の為に血の滲むような凄まじい努力を数十年は続けなければなら無かった。然し、それでも多くの者は能力を手に入れることは出来ない。
その為に祝福ギフトを持たぬものは農業等の貧しくはあるが生きる道を選ぶか奴隷へと落ちるか祝福ギフトを持っている者の様な能力を得る為に死ぬまで努力をするか。と言う選択を迫られる事となるのだ。
大人達は
「嗚呼、なんて事...」
              「悲惨な事だ...」
等と声を漏らす。然し、アーニャの目は深く理解せずとも必ず能力を手に入れて見せる。両親や村の人々を喜ばせてみせる。と言う幼くも強い信念が宿っていた。
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