【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

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はじめてのイベント。

【03-04】合流まで

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 イベントが始まると僕は森の中にいた。
 僕は周囲の確認をする。
 
 鬱蒼とした森の中、木の背は高く草が生い茂っている。森よりも樹海といった方がいいかもしれない。
 集合場所は拓郎が飛んでいるところになっているけどこれでは空も見えない。
 僕はディスプレイを開きチャットを確認する。
 既にチャットには智也からの書き込みがあった。
 智也のキャラネームは『LORD』だ。
 
=======
 
 LORD「転移完了。森の中にいる。現在位置を教えてくれ」
 
 tail「森の中。空見えない」
 
 守君「おれも森の中みたい」
 
 ducrow「俺も森の中だ」
 
 LORD「拓郎、上空から地形の確認はできそうか?」
 
 ducrow「やってみる」
 
=======
 
 全員森の中のようだ。
 拓郎からの書き込みを待つ間、僕は近くにある大きめな木に近づき、登れそうか確認する。
 僕は、木のくぼみに尻尾でひっかけたり、丈夫そうな枝に尻尾を絡ませたりして登っていく。尻尾一本では支えきれないけど二、三本使えば安定して上ることができそうだ。
 僕は安全第一で木に上っていく。幸か不幸か、木の幹も枝も太いためスラスラと上るっていくことができた。僕は木の半分ぐらいを登ったところでチャットを確認する。空に敵がいる可能性も考えて体を縮めて、天地両方から敵に見つからないようにする。〔気配察知〕と〔気配遮断〕は常時使うようにしているので今も使っているが、今のところ周囲に反応はない。
 
=======
 
 ducrow「見てきたが、見渡す限りの森になっている事しかわからなかった。」
 
 LORD「森か。空にモンスターはいたか?」
 
 ducrow「いや、小物はいたが、大型のモンスターはいなかった。」
 
 LORD「よし。じゃあ、予定通りだ。拓郎は鳥に紛れて周囲の確認をしてくれ。他は集合だ」
 
 tail「おけ」
 
 守君「了解」
 
 ducrow「八の字を書きながら飛ぶようにするから気づいてくれ」
 
=======
 
 僕はチャットを読み終え、ディスプレイを閉じた後、木登りを再開した。まずは拓郎の飛んでいる場所を見つける必要がある。
 僕は、だんだんと開く地面との距離を見ないようにしながら木に登っていく。ある程度上ると枝が多くなり上りやすくなっていく。木の頂点まで登り終えた僕は葉に隠れながら空を見渡す。
 
 空は青空で、鳥が飛んでいる。拓郎から大型モンスターはいないといわれているが、一応の注意をしながら空を見て、拓郎を探す。
 空に飛んでいる鳥の動きを見ていると八の字を書いている鳥が見えた。あれが拓郎だろう。僕が拓郎のいる方向を覚えながら木を下りていく。
 地面に足を付けた僕は拓郎の飛んでいた方へ歩き続ける。
 
 〔忍び足〕のスキルを使いながら歩く。気を張り詰めながら歩くことでいつも以上に疲労感を感じる。僕の〔気配遮断〕もまだまだ完璧とは言えないレベルなため僕は細心の注意を払って歩く。歩いていると大きな気配がいくつか感じられる。僕はそれに気づかれないように歩く。
 
 森の中は、思いのほか静かな気がする。風の音と風に揺れる葉の音。僕にはそれぐらいしか聞こえない。
 僕はどんどんと歩いていく。全く変わらない景色に気が参りそうになっていると空腹感を感じた。坊はディスプレイで時間を確認すると十二時になっている。すでに開始から二時間立っている。早いところは拠点を作り終えて借りを始めているかもしれない。僕は手ごろな木を見つけ登っていく。二回目だったため、最初より楽に登れたと思う。
 僕はバックから干し肉を出し齧る。一気に食べ見ずで押し込む。空腹感は解消されたようだ。
 僕はチャットを見て新着がないことを確認してから、木に登っていく。もう一度拓郎のいる方向を確認するためだ。僕が木を登り終え、空を確認すると僕の右斜め前の方向を飛んでいた。やはり枇榔にずれていたようだ。方位磁針がないため常に方角を確認できないためどうもずれてしまったようだ。僕はまた地面に下り、また歩き出した。
 
 昼食後の森はさっきよりもどこか騒がしい気がする。僕はさっき以上の注意をしながら歩いた。草木をかき分け、周囲の警戒もしつつ、音を出さないように歩く。
 疲れる。ずっと集中し続けなければいけないからとても疲れる。
 僕はまた木に登ることにする。木に登って休憩しようと考えたのだ。木に近づき木に登り始めたその時、草をかき分ける音が民に入った。次の瞬間、僕の背後から何かが迫ってきた。
 僕は死角からの急な攻撃に反応できない。それでも、僕には自動防御《オートガード》がある。僕の思考とは別に思考する僕の尻尾たちが何者かの攻撃を防ぐ。キーが何者かに噛みつかれるがたいしたことはない。
 僕はキーに噛みついて動きの止まった襲撃者を見る。襲撃者は一匹の狐だった。見てる分にはかわいい。
 僕はドーとラーとルーを噛みつかせて狐を逃がさないようにする。
 狐は逃げようともがくが三匹の尻尾たちを振り解くことはできない。ついにキーを津和得られるのをやめた。僕は解放されたキーで狐を噛みつかせる。あとは狐のHPが切れるのを待つだけだ。それにしても、この狐はなんていう名前だろう。調べた情報の中にはなかったと思う。
 狐と遭遇して数分、ようやく体力が尽きたようだ。狐の体から力が抜けた後、狐の体が光り出し狐がいた場所には一つの箱が置いてあった。僕はその箱をバッグに詰めてから木に登ることにした。また狐に攻撃されるのも面倒だからね。
 木に登った僕は拓郎を確認する。木の上からは相変わらず空を飛んでいる拓郎が見える。僕は再び方向を確認した後、安定した場所を探してさっきの箱を見ることにした。
 僕はうまく座れる場所を探して座る。バッグに入れた箱を取り出し中を確認してみる。
 
 箱の中には食料が入っていた。テレビやコンビニで見たことのあるような袋に入った携帯食だ。一本で多くのカロリーが取れるとかいうやつだ。確かこのイベントのスポンサーの中にこの商品を出しているメーカーがあったはずだ。
 敵を狩ると物資が貰えるということはこういうことなのか。僕は携帯食をバッグに入れ、拓郎の飛んでいる方を目指す。
 さっきの狐の襲撃のことも考え、今まで以上に慎重に行動した。さっきの狐も〔気配察知〕に反応しなかった。僕はより気配を感じようとする。
 
 定期的に拓郎の位置を確認しながら移動する。
 気配を察知することをより意識していたためか、モンスターの気配もさっきよりも感じられるようになった気がする。僕は気配を避けるように進んでいると、どこからか大きな音が聞こえてくる。人の声のようなものも聞こえるような気がする。誰かが戦っているのだろうか。
 
 僕は、音の発生源から急いで離れる。戦闘巻き込まれるのは困る。合流が最優先だ。
 
 僕の行軍は進み、ようやく拓郎を木の上からでも見上げる距離まで来ることができた。
 僕はチャットを確認するが誰も書いていない。一応書き込んでおく。
 
=======
 
 tail「近くまで来たけどみんなどう?」
 
 ducrow「どこらへんだ?」
 
=======
 
 僕の書き込みに返信が来た。
 僕は返信してから拓郎の手を振ってみるが気づかないようだ。拓郎に方向を教えていく。
 
=======
 
 tail「木の上」
 
 ducrow「どこらへんだ?」
 
 tail「止まってみて」
 
 ducrow「ん?分かった」
 
 tail「今の拓郎の左斜め後ろの方の木の上」
 
=======
 
 拓郎が僕の方に飛んできて、僕に気づいた。
 拓郎は僕を見て、高度を下げ、僕の近くにある枝にとまる。
 
 「ようやくだな。待ってたぞ、瑠太」
 「お待たせ。他に誰かきた?」
 「いや、今のところまだだ」
 「どこかよさそうな場所ない?先に準備しておくけど」
 「うーん、見てないな」
 「分かった。僕はここで他の人を待つよ」
 「おっけー。俺はここらへんを飛んでるからチャットの方に書き込んどいてくれ」
 
 拓郎が飛び上がる。
 僕は、チャットを開き、書き込んだ。
 
=======
 
 tail「拓郎と合流した。木の上にいる。今どこにいる?」
 
=======
 
 書き込み終えた僕は、バッグから干し肉と水筒を出して補給を開始した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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