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プロローグ
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教室に戻ったら、フランとサリオが肩を抱き合っているところを見てしまった。
それを見た俺は……
ただただ呆然として、立ち尽くした。
「僕がフランのエスコート役……出来ればいいのに……」
その呟きが、やけにはっきりと耳に届く。
そして、その隣に立つ俺の婚約者を見た瞬間、嫌な予感が胸をよぎった。
ガンッ……
「だれだ!?」
サリオが叫び、俺に気づく。
「ちょうどよかった。兄さんは病気にかかって、治る見込みがないだろ?だったら僕がフランの婚約者に変わった方が……」
言いかけた言葉を遮るように、フランが口を開いた。
「サリオ様。あなたとの婚約を、破棄させていただきますわ」
「……婚約破棄……?」
なんで、こんな場所で言うんだ。
ここは教室だ。今は昼休みで誰もいないとはいえ……。
静まり返った空間に、言葉の余韻だけが残る。
だがその沈黙の裏で、学園中に噂が広がっていく気がした。
この出来事が、すぐに知れ渡る……そんな予感だけが、やけに現実味を帯びていた。
突然の出来事に戸惑いながら、俺は言葉を絞り出した。
「えっ……!? な、なんで……?」
「そんなこと、言われなくても分かりますよね?」
フランの冷たい言葉に、ひとつの心当たりが浮かぶ。
「……もしかして、俺が病気にかかって……治る見込みがないから?」
「そうですわ。病気で回復の見込みもないあなたより、健康な弟のサリオ様と婚約した方が、何かと都合がよろしいの」
「それ……両親たちは知ってるの?」
「ええ。あなたの家との関係は、サリオ様との婚約でも構わないと、父と母は言っていましたわ」
「……俺の両親も……?」
「ええ。関係が変わらないなら、それでいい、と」
「……分かった。なら、俺から言うことは何もない」
そう答えて、俺はその場を去った。
……2人とも、いったい何を考えているんだ……。
内心で叫びながら、俺は頭を抱える。
教室を後にして、俺はまるで夢遊病者のように歩いていた。
どこへ向かうでもなく、ただ足の赴くままに。
いつの間にか裏庭にたどり着き、ひとり腰を下ろす。
これからのことを考えようとして、同時に今までのことが頭をよぎった。
……どうして、こんなことに。
フランの言葉が、何度も脳裏で繰り返される。
「治る見込みのない病気」
「健康な弟の方が都合がいい」
たしかに、病気になってから体は思うように動かなくなった。
だが、それを理由にこんな仕打ちを受けるとは思わなかった。
しかも、両親までもが納得していたなんて……。
「……俺、要らないんだな」
ぽつりと零れた声は、夜の空気に溶けるように消えていった。
それを見た俺は……
ただただ呆然として、立ち尽くした。
「僕がフランのエスコート役……出来ればいいのに……」
その呟きが、やけにはっきりと耳に届く。
そして、その隣に立つ俺の婚約者を見た瞬間、嫌な予感が胸をよぎった。
ガンッ……
「だれだ!?」
サリオが叫び、俺に気づく。
「ちょうどよかった。兄さんは病気にかかって、治る見込みがないだろ?だったら僕がフランの婚約者に変わった方が……」
言いかけた言葉を遮るように、フランが口を開いた。
「サリオ様。あなたとの婚約を、破棄させていただきますわ」
「……婚約破棄……?」
なんで、こんな場所で言うんだ。
ここは教室だ。今は昼休みで誰もいないとはいえ……。
静まり返った空間に、言葉の余韻だけが残る。
だがその沈黙の裏で、学園中に噂が広がっていく気がした。
この出来事が、すぐに知れ渡る……そんな予感だけが、やけに現実味を帯びていた。
突然の出来事に戸惑いながら、俺は言葉を絞り出した。
「えっ……!? な、なんで……?」
「そんなこと、言われなくても分かりますよね?」
フランの冷たい言葉に、ひとつの心当たりが浮かぶ。
「……もしかして、俺が病気にかかって……治る見込みがないから?」
「そうですわ。病気で回復の見込みもないあなたより、健康な弟のサリオ様と婚約した方が、何かと都合がよろしいの」
「それ……両親たちは知ってるの?」
「ええ。あなたの家との関係は、サリオ様との婚約でも構わないと、父と母は言っていましたわ」
「……俺の両親も……?」
「ええ。関係が変わらないなら、それでいい、と」
「……分かった。なら、俺から言うことは何もない」
そう答えて、俺はその場を去った。
……2人とも、いったい何を考えているんだ……。
内心で叫びながら、俺は頭を抱える。
教室を後にして、俺はまるで夢遊病者のように歩いていた。
どこへ向かうでもなく、ただ足の赴くままに。
いつの間にか裏庭にたどり着き、ひとり腰を下ろす。
これからのことを考えようとして、同時に今までのことが頭をよぎった。
……どうして、こんなことに。
フランの言葉が、何度も脳裏で繰り返される。
「治る見込みのない病気」
「健康な弟の方が都合がいい」
たしかに、病気になってから体は思うように動かなくなった。
だが、それを理由にこんな仕打ちを受けるとは思わなかった。
しかも、両親までもが納得していたなんて……。
「……俺、要らないんだな」
ぽつりと零れた声は、夜の空気に溶けるように消えていった。
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