勘当された少年と不思議な少女

レイシール

文字の大きさ
60 / 159
 第4章 馬車

第58話 過去4

しおりを挟む
 マックの声は、どこか安堵したような……それでいて、少しだけ照れくさそうだった。

 そんなマックを見ながら、ディーンはふっと小さくため息を吐いた。

 そのとき、乗り合い馬車の下で『ガコン』と車輪が跳ねる音がして、俺たちは顔を上げた。どうやら……町に着いたらしい。

「……話の続きは、また後でね」

 ディーンが静かに言うと、町の入り口から何人かの町人が乗り込んできた。乗り合い馬車はそのまま、ゆっくりと村の中央に向かって進み始める。

 そして、マックが言っていた『3つ目の町』に、俺たちはとうとう到着したのだった。

 町に着いたばかりの俺たちに、マックが振り返って尋ねた。

「おい、お前たちはどうするんだ? ……まあ、今日はここで泊まることになるけどな」

「ん? なんでですか?」

 俺が聞き返すと、マックは肩をすくめて言った。

「ああ、俺たちはまだ動けるが……馬たちはさすがに疲れてる。これ以上の移動は厳しい」

 なるほど、と俺は思った。俺たちよりはるかに重い荷車を引いて、何日もかけて移動してきたんだ。限界がきて当然だ。

「あぁ……そうですよね。わかりました」

「じゃあ、今日は一緒に泊まるか」

「そうですね」

 俺とアリーは顔を見合わせて、頷き合った。

 夕暮れがじわじわと町を染めていく。町の空気は少し埃っぽくて、けれどどこか安心するような温もりがあった。

 俺たちは乗り合い馬車を降り、ディーンたちの後ろに続いて宿へと向かった。

 ディーンがいつも使っているという宿に着くと、入口から出てきた中年の女性と目が合った。

「あら、ディーン。また泊まるの?」

「はい、今日もお願いしたいんですが……」

 にこやかに応じる彼女だったが、俺たちの存在に気づいて少し目を丸くした。

「あら? 今日はいつもと違うんだね。そちらのお2人は?」

「あぁ、そうなんだ。今日はいろいろあってな……。5人で泊まれる部屋はあるか?」

 あれ、なんだか俺たちの意思を聞く間もなく、話がどんどん進んでる……。

「ごめんなさいね、この宿は3人部屋までしかないのよ」

「そっか……。なら、3人部屋を一つと、2人部屋を一つ。空いてるか?」

「ええ、大丈夫よ。準備しておくわね」

「助かる」

 マックがにこりともせず頷くと、俺たちは荷物を抱えて宿の中へと入っていった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

処理中です...