死後の世界も生きづらい?

蓮見 七月

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死後の世界

目覚め。Ⅱ

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「あなた名前はなんていうの?」

天使と呼ばれた女性は降ってきた男に尋ねた。女性には降ってきた男はようやくに落ち着きを取り戻していた様に見えた。

「俺の所属は警視庁警備部所属、山口実ヤマグチ ミノル。階級は巡査部長だ」

ミノルに天子と呼ばれた女性はこのミノルとか言う男はまだ状況を理解していないのだと悟った。
彼女は冷静に状況を説明しようとする。

「あなたは空から降ってきたの。前にも同じようにして空から降ってきた男の人がいたわ。あなたも彼ときっと一緒よ」

ミノルは彼女の冷静な説明で幾分か状況を把握しようという心持になった。

「分かった。分かったよ。まずここはどこだ?君の名前は?それに降ってきた人が他にも居るって言うのは・・・」

彼のまくし立てるような言葉は彼が天使と呼んだ女性によって遮られる

「ちょっとおじさん!まず~なんていうから冷静になったのかと思ったけど全然ダメなのね!質問はひとつずつ。ハイ!」

彼女は年上であるはずのミノルを簡単にたしなめる事に成功した。

「分かった本当に分かったよ。じゃあ君が何者なのかを聞かせてくれるかな?」

ミノルはやっと冷静に物事の分別がつくような状態へ戻った。しかし彼は同時に気がついた。

「まて!君は福島奈緒美フクシマ ナオミさんじゃないか!?生きていたのか?いや・・・それとも俺と一緒に死んでしまったのか?」

彼に再び動揺が訪れる。彼はもし、ここが死後の世界であるならば、福島奈緒美フクシマ ナオミを救えなかった事になるという不安があった。

そしてさらに、もし、ここが現実の世界であるならば、自分はまた辛い現実へと戻されてしまったのではないかとまた不安になるのだった。

「もう!しっかりしなさい!見た感じ私より年上そうだし。前に降ってきた人はそんなに驚いていなかったわよ。」

しかし、ミノルには、更なる動揺を抑えることはできなかった。自分自身が生きているのか死んでいるのか、福島奈緒美は生きているのか死んでいるのかこの判別がつかない限りは彼の不安は取り除かれることは無かった。

「そのフクシマナオミというのは分からないけれど私の名前はナオミよ。」

彼女は福島奈緒美フクシマ ナオミではないがナオミと名乗ったことでミノルは目の前の少女をよく観察せざるを得なくなった。
いまだ二十歳に満たないような幼い顔つきと高い声色、それでいて、足はすらりと長く肌は白く、胸は年相応に発達していたし、黒い髪は長かった。

この特徴は彼女が女子高の制服を着ていないことを除けば、ミノルが足立との交渉中に見た福島奈緒美と瓜二つであった。今の彼女はなんとも質素な、大正時代の女給仕のような服を着ていた。

「あ・・・あぁ・・・君が奈緒美さんなのは分かったよ。じゃあ、ここはいったいどこなんだ?」

彼は一応の理解を得た。福島奈緒美と瓜二つの彼女を見て疑惑は晴れなかったがそれについて問いただしたところで彼女に走りえないだろうと思ったからだ。事実、彼女は福島奈緒美は分からないと言い自分自身のことをナオミと名乗った。

この事から彼女は見た目は福島奈緒美ではあるけれども、ナオミという1人の女性だということに納得をせざるを得なくなった。

「どこって言われてもここはここよ?」

ここはここ。そういわれてもミノルにはまるで理解できなかった。通常ならどこの国だとか、県だとか地区だとかをいうはずだと思っていたからだ。彼はまた質問せざるを得なくなった。

「いや、例えば国とか県とか、州でもいい。ここの名前はなんて言うんだい?」

今度はナオミが困惑した。前に降ってきた人はそんなこと聞かずに名前を名乗ってすぐに案内してくれと頼んできたのに。彼女はそう思いながら、懇切丁寧に説明しなければならないと思い知った。

「ここはここ。私はナオミ。それ以外の何物でもないわ。あなた前に降ってきた人と違って物分りが悪いから私が案内してあげる。前に降ってきた人の時みたいにね」

彼女はミノルの手を引いて草原を歩き始めた。
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